引越し
最近引越しをした。あなたは引っ越しをしたことがあるだろうか。
「無い」と答えたあなた。この記事を通じていかに引越しというイベントが煩わしいかを知ってもらえれば幸いだ。願わくば、ご自身が引越しする時の参考になったのならば、私のこの引っ越しで疲弊した気持ちも幾らかは報われる。その際は、「いやー、参考にさせてもらったよ」と一声お掛けいただきたい。そう言われた私はきっと「あ、こいつまだ実家に住んでたんや」という顔をすると思う。先に謝っておきます。
引越ししたことある勢のあなたは、あの引越しというイベントのめちゃくちゃな煩わしさを、本日は共有したいと思う。心の中で「わかるわ〜」と言っといてください。
とにかく引っ越しというやつはめんどくさい。それはそれは本当にめんどくさい。どのくらいめんどくさいかというと、『私ブスやからさ〜』という枕詞をちょこちょこ挟んでくる、そこそこかわいい女くらいめんどくさい。あの肯定しても否定してもダルい感じなる巧妙な一手。要するに、めんどくさいのだ。
私にとって今回が人生で通算4回目の引っ越しとなった。何の根拠もないが日本人の平均よりは引越しをしてる部類に入るのでは無いだろうか。25歳で4回の引越し。すなわち、25÷4=6.25 つまり6年と3ヶ月に一回は引っ越しをしていることになる。いや、ならない。なんだその割り算。こわ。
ヒトは引っ越しの回数が増えると物が少なくなるという。理由は二つあって、
①引越しのたびに「なくてもええなこれ」ときづかされ、意図せぬ断捨離が行われる。
②「次引っ越しする時だるいな」というマインドが買い物の際に働くので、余計なものを衝動的に買うことがなくなる。
この二つだ。別にミニマリストだとか言いたいわけではないが、最小限のアイテムだけで自分を満足させようというマインドが少なからず働くのである。人間は、持ち物と住居環境がリセットされると、不思議と心も軽くなるもので、この「身軽な生き方」の実現に幾ばくか寄与してくれるのが引っ越しのメリットだ。ちなみに、めんどくさいことの方が圧倒的に多すぎてこんな些細なメリットは一瞬で吹き飛ぶから、もうこの段落はほぼ読まなくていいし、読まなくていい。
一応、導入部分は少しくらい読むに堪えるようなことを書こうと思い、「いまから引越しする新社会人とかおるし、めんどいめんどい言わんと最初にちょっとくらいポジティブなこと言うとくか」という打算的な都合で差し込まれた一節であるので、全然心もこもってないし、なんなら鼻ほじりながらタイピングしているし、もう自分でもいまあんまり何を言っているかわからない。
で、何がそんなにめんどくさいかというと、
サラリーマンの生活リズムに全然合わない公共インフラ・役所のノリ
これである。誤解を招かないように述べると、水道・電気事業者も市役所の皆さんも非難する意図は全くない。あなたたちのおかげで私の引っ越し、ひいては生活が成立している。ありがとうございますである。言いたいのは、そうはいっても民間企業のノリと公共事業者のノリがちがいすぎて双方がしんどいしんどいってなってることは改善の余地ありますやんか、という話だ。どのくらいしんどいかと言うと、「ほら、私サバサバしてるからさあ」という出だしで女同士のイザコザを紹介してくる女くらいしんどい。女同士のイザコザを話題にしたい時点でお前は決してサバサバしていないので気をつけよう。
日本人が引越しする時期はほとんど決まっている。決まっているから、集中する。この時期は不動産屋さんも引っ越し屋さんも公共事業の皆さんもひどく忙しそうにしている。入居前の内装チェックを管理会社のおじさんと立ち合いの下、実施する必要があった。日程を調整するよう不動産屋に頼まれたが、
管理会社おじさん「土日はもうあきまへんねやわ。平日いけますかな?」
“あきまへんねやわ”という嘘みたいな関西弁を使うおじさんと都合が合わず、引っ越し当日の早朝に行うことになった。管理会社おじさんはひどく忙しそうに慌てていた。なんでも、その日は分刻みのスケジュールであちこちの家の内装をチェックしまくってるらしいのだ。
「もう〜ここんとこは毎日こんな感じですわ」
という管理会社おじさんに対し
「ほんまですか〜。えらい人気モンですねえ」
という変な返しをしてしまって少し後悔した。
おじさんも「そうでんねん」的なこと言って流してくれたらよかったのに、
「人気とかっていうのはちょっとまたちがうとおもいますけど」
と真正面から強烈なボレーショットをくらってしまった。
入居したらしたでまた大変で、水道と電気の止栓&開通作業はネットで申請したら片付くものの、ガスの開栓は立ち合いが必要なのだ。これがまた土日は受け付けないというから具合が悪い。なんとか平日の仕事の合間をこじ開けて立ち会った。
ガス開栓担当のおじさんは「1時間後には奈良にいてなあきまへんねん」というこれまた「あきまへんねん」というコテコテの関西弁を自在に使いこなす愛嬌あるおじさんだった。俺が
「お忙しいんですね」
というと
「ミルクボーイほどではないけどねえ。へへ」
という120点の返しをくれたりした。心の余裕とは、かくも大事である。こう言っては失礼だが、このおじさんは太っているのに動きは機敏だった。よく見たら冬場なのに汗もかいている。なるほど、献身的なサービス精神がその作業の素早さに表れている。非常に好感がもてた。
「お茶かなんか飲みます?」
思わず言ってしまった。
「はは、ありがとうございます。お気持ちだけ頂いときますわ。はは」
断り方もバッチリだよおじさん。さすが、サービス業も極まればプロだ。
「わたしほら、太ってるでしょう?普通に生きてるだけで人一倍がんばってるみたいに思ってもらえるんですよね。この突き出たお腹が役に立つんですわ〜」
とのことだった。ほぼ何を言ってるかわからなかったが、ニュアンス的には
「暗い夜道はピカピカの、お前の鼻が役に立つのさ」みたいなことを言ってたのだと思う。
そんなこんなで今回は引越しがいかに煩わしいか共有させて頂いたが、こうやって冷静に文字に起こしてみると、自分がすごく些細なこともいちいち気にしてしまう人間なのだなと書いていて思った。ここまで書き進めておいて「引越し」と「引っ越し」の綴りが混在してることに気付いてしまってゲンナリしている。そんな自分の姑のような細かさをすこし反省したりもする。いつもの自分に新たな気づきを与える、それもまた引越しの醍醐味なのかもしれない。
とにかく新居での生活が無事滑り出した。おかげさまで、快適な生活が遅れている。コタツ、鍋、たこ焼き機、firestickTV、ホームプロジェクターなどなど、アミューズメントを取り揃えているのでみなさんぜひ遊びに来ていただきたいと思う。
「引越し」とかけまして
「“引越し”と“引っ越し”の混在に気付く」とときます
その心は、どちらも
『うちかえる(家変える・打ち換える)のめんどくさい』でしょう。
お後がよろしいようで。
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