夏の町を歩いていると、何処からともなく素敵な音色が聴こえて来る。チリンチリンという素敵な音。
風鈴である。
この音が聴こえると、熱い空気の中に風が吹いたことを当たり前のことだが知らされる。
空気は熱いままだが、一瞬、少し涼しくなったような気がするのだから不思議である。
風鈴は、本来魔除けの役割であると物の本で読んだことがあるが、それ以上に夏を感じさせるのが風鈴である。
昔はこういった素敵な音、庶民の暮らしに深く根付いた『音楽』がたくさんあったように思う。
古くは金魚売りの声やチンドン屋さんの賑やかな演奏など、どれをとっても懐かしき哉、昭和である。
風鈴は時代を超えて生き残った、数少ない日本の音のような気がするが、これまた絶滅危惧種の分類に属しているが、今年もまた風鈴が風に吹かれて『チリン』と鳴った。
もうすぐ夏も終わりである。
2008年8月某日・未発表原稿。
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