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スペイン巡礼5日目

今日も太陽が上がる前に目が覚めた。

仲良くなった韓国人のジェシカ、グレース、サニーさんと今日は一緒に歩くことに。

グレースもジェシカも僕より2回りぐらい人生の先輩だけれども元気で愉快だ。

今日は20キロほど先のlos arcosを目指す。

……………

歩き始め、少し勾配のある道だった。

左足がもう痛くて歩けないぐらいだ。

これは20キロなんて歩けない、まして5キロですら無理なのではないか。

……………

巡礼者の鉄の掟

巡礼者は歩き続けなければならない。

……………

ジェシカがトレッキングポールを一本持て余していたのでダメ元で借りてみることに。

左足が痛かったからその足の代わりに使うイメージで力を入れて漕ぐように歩き出した。

足の痛みは思った以上にない。

これなら歩ける。

よかった。

掟も破らずにみんなと進むことができる。

使わざるおえない状況になった時に道具本来の使い方や効力を発揮するのか、とこれほどに実感したのは始めてだった。

ピレネーを超える時に、巡礼者の多くがポールを持っていたけど、みんな手に持っているだけで使っていなかった。

手がふさがるのは不便だし、そもそも使い方がよくわからないのだ。

みんながみんな普段から山登りやトレッキングをするわけではない。

何か思いたって巡礼を始めている。

……………

あるドイツ人彼女に振られてその日から川を船で漕いで家から歩きはじめた。

またあるブラジル人は一言、"my religion"と首のネックレスを握りしめて答えてくれた。

またあるフランス人の老夫婦は老後のささやかだけど壮大なデートだよ、と。

理由なんてなんだっていいんだ。

巡礼は自由なものだ。

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ジェシカからポールを借りたおかげで歩けている。

本当にポールが足代わりになっているかのような歩きやすさとスピードだ。

左腕が左足の代わりをしてくれてるのかな。

こういう時、丈夫に産んでくれた母には感謝しかない。

音楽流しながら、よくわからない韓国語の会話をサニーさんに日本語に略してもらいながら歩く。

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昨日の夜にワイン好きのジェシカに教えてもらったんだけれど、

大輔、明日はワイン飲み放題よ。

コップは持ってる?水筒はある?

と言われ、何のことかよくわからないまま歩いているとそこは突然現れたのだ。

赤ワインが無限に出てきます。

みんな水筒の水を捨ててワイン汲んでます。

和歌山の有田の方ではみかんジュースが出る蛇口が設置されています。

それはみかんがそれだけその地で取れるということです。

ここイラーチェという地域ではそれだけブドウが収穫できるんだろうな。

グラスワインが一杯1.2ユーロと水よりも安い世界です。

巡礼路にワインが出る蛇口があってもおかしくないです。

そのあとは酔っ払いながら歩きました。

飲酒巡礼です。

歩いていると汗かくのですぐ出ちゃいますが。

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シエスタの時間になる前に夜の食糧を町の売店で調達。
アルベルゲに荷物を置いてシャワーと洗濯。

だいぶこの習慣も慣れてきた。

ジェシカはワイン担当、歩いているときに汲んだワインは飲み干してしまったのでさらにワインを買ってきてくれた。

グレースとサニーさんが料理担当。

子供は座っていろと言わんばかりだ。

韓国人はとにかくたくさん作る。
久々に炊きたてのご飯を食べた。
トマトやらなにやらスパイスも入っていて色は黄色。
パエリヤ?いや、パエージャらしい。

歩いた後に自分たちで作ったご飯とワインで夜遅くまで語り合った。

今日も涙が出るくらい美味しいご飯だった。
そして初めての何人かでのささやかな宴だった。

明日もまた歩ける。


今日も歩けた。

estella - los arcos



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