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マグロと僕の物語 #7 〜チェックメイト〜


ついに話がここまできた。

23年10月23日
KL経由でバンコクに戻り、セイルを釣行を友人にメッセージをしたところ、友人は明日から青森に行くという。狙いはもちろんクロマグロ。

友人の名は木下真さん、正直いうと友人というのもおこがましい、マグロ釣りの大先輩、スーパーアングラーだ。
なんだかんだで10年以上の付き合いになる。
そういえば、九州で大きなマグロを初めてかけて、変わってほしいと泣き言を言った時にも、木下さんは同船していた。

縁を感じる。

2023年10月24日、25日
仕事をしながらも僕は木下さんからのメッセージにヤキモキしていた。

「めちゃくちゃ跳ねてる」

「ほぼ100kgオーバー」

「釣ってはリリースの連続」


目を疑った。。。
いくら聖地といえど、マグロ釣り。
そんな事があるのだろうか。

しまいには

「こんな時はないぞ、だいすけおいでよ」

と。

いやいやいやいや、めちゃくちゃ行きたいけど!
私バンコクに居ますから。

やむなし、これもまた縁。
いつかその海域にチャレンジしたいという想いを大きくしていた。



2023年10月26日
その日の朝から事態は急展開を見せる。
木下さんと共通の知人、ザキさんが金土で同じ船を取っているという事が発覚。

ただ、僕はザキさんと連絡を取り合ってはいるが、釣りはおろか、実際会った事もない。

そんな僕にザキさんは言った。
「今4人なんで、だいすけさん来れるなら乗れますよ?」

ドクンッ!と心音が聞こえた。

時間は木曜の11時前、日本はもうお昼すぎ。
明日青森にいるのは不可能、

(とはいえ、明後日なら。。。今晩から動けば!)

いや、そうはいっても明日は普通に出勤。
しかしまぁ、有給を都合すれば。。。

いやいや、そもそも竿を友人に預けているので今家にない。
木下さん「大丈夫だ、プロトの竿、船に置いてきたから、それ使え。」

いやいやいや、明日は一件アポがある。
後輩「あ、僕対応するから大丈夫ですよ。行ってください」

皆が背中を押す。
条件が揃い始める。


カミさんの反応



そして、別の友人も。



そうはいっても、迷う。
当日発券の国際線は、高い。
そこを、カミさんがまた押す。

皆の後押しに心が震える。
こうして縁がつながりに繋がって、したか、されたか、チェックメイトだ。

そしてついに。

とってしまった。。。

26日深夜便で関空in
27日AMに実家で荷物まとめてPMには伊丹経由で三沢。ここでザキさんに拾ってもらう。
28日は釣り
29日は朝イチから移動。三沢から羽田経由で伊丹。
実家で道具洗って、その日の夜の関空便でタイ戻り。
30日早朝着で、家帰って準備して出社。

こんな行程を出発の6時間前に取ってしまった!!
狂ってる!!!



ありがたいことに
荷物は仕事の間にカミさんがまとめてくれた。
仕事を終えた僕はサンダルで関空行のフライトに乗り込んだのだった。

2023年10月27日
関空についた足で実家に寄り、持っていくルアーを選ぶ。
大きくて細身でしっかりと浮く、アピールが強いものがいいらしい。

大型のルアーを詰め込む



そそくさと準備を終え空港に向かうところで、ふとあるルアーが頭をよぎった。フライトの時間を気にしながらもまた部屋に上がり、ストックの箱をゴソゴソ。

あった。

ダラペン230高強度SPモデル
師匠が昔作っていたルアーだ。
ヒラマサキャスティング、マグロキャスティングが流行り始めた頃、欲しいルアーが手に入らない釣り人の為、師匠がハンドメイドしたものだ。これももう10年ほど前のものになる。

使うかどうかは別として、御守りみたいなもんだ。
全てのつながりを連れて挑む。

そして僕は伊丹発三沢行に乗り、
三沢空港温泉にてザキさんの迎えを待ったのであった。

18時、ザキさんが迎えにきてくれた。

正直、ネット上で知り合っただけの見ず知らずの人間を、宿から1時間半以上かかる空港まで、しかも釣りの後に迎えにきてくれるなんて、本当にありがたい。

感謝を伝え、車に乗り込んだ僕はその日の状況を聞いた。

「1本取れましたよ、180くらいのやつ」

おおおぉぉぉ!!!!!キタ!キタコレ!!!
魚はいる!




「まぁ、でもナブラは2回だけでした」

あぁ、いつものやつだ。やっぱり。
状況は悪くなってる。
魚釣り、良い日は続いて3日、聞いてから行ったんじゃ,もう遅い。
明日はもう魚いないかも。。。

それでも、縁を繋ぎに繋いでここまで来たんだ。

あとは信じるしかない。
今まで積み重ねてきた努力を。
そして、何より願うしかない。
明日もマグロが飛び交う状況を。


僕はビールを煽り、民宿の畳に敷かれた布団に横になったのだった。

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