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マグロと僕の物語 #8 〜.ょ〜


2023年10月28日
少し冷えるが、思っていた程は寒くない。
天気は曇天。今にも降り出しそうだ。

宿から港までも約1時間。
ここ数日の出来事に思いを馳せる。
自分でも信じられない。今、自分が本州の北端にいることを。

5時半、
港に到着、道具を積み込みいざ出船。
昨日までのポイントに船を走らせる。

岬を回ると、大粒の雨が降り出した。
足元が寒い。サンダルだし。


ポイントについてあたりを見回すが、気配はない。
しばらくして、ザキさんが「遠くの鳥の下で1匹はねた」と姿を確認したが、それ以降続かない。

少し動く。

待つ。

少し動く。

待つ。

動く、、、待つ、待つ。待つ。。。。。待つ。

気配がない!!

やはり、外してしまったか。。。くそぉ。

まぁ仕方ない。待つ。心の逡巡を繰り返す。


1時間ほど経ち、雨が上がり、虹が出た。
僕は、気分転換にルアーを変えた。
お守りとして持ってきたダラペンに。
もはや、神頼み、師匠頼み、縁頼み。なんでも良い。
マグロはねろ!はねろよ!!!

見上げるとくっきりと虹が出ていた。ご利益を期待する


ひたすら待つ、
魚は出ない。明らかに昨日迄とは状況が変わっている様だ。
海鳥もまばら。

時間が経つ。

これぞマグロ釣り。これぞ自然。
遠くから来ようが、準備万端であろうが、関係ない。
海はうねりを伴ってゆっくりと揺れ、曇天の下、魚の気配はない。
そう、自然には僕の想いなど関係ないのだ。
まぁそれでもいい、と自分に言い聞かせる。
今までの10数年に新しいページが刻まれるだけ。
人生は長い、そう考えると、ほんの少しのことだし、、、


と目を瞑る。


色んな人の顔が浮かぶ。カミさん、息子、師匠、木下さん、しげる、ハマちゃん、鳥取の釣り仲間、会社の同僚、、、


いや、ないわ、この展開!
ないだろ!ここまできたんだぞ!
跳ねろや!せっかくバトン繋いでここまできたんだよ!
勝負させろや!!!

、、、、出船して3時間以上が経過した。


船長も大きく移動すべきかいなかと頭を悩ませていたところに、知人からの一報が入った。


「こっちで跳ねてるよー」

船をそちらに向けた。
さぁ、いざ。


30分ほどかけて、別のエリアに来た。
鳥が海の上を旋回している。
しかし魚は見えない。
気配は、ある。

僕たちはここで投げる事にした。
水深は500mを超える。そこの水深0m、海面にルアーを投げては引くというのを繰り返す。

何度か投げ直し、
潮がぶつかってヨレているところに差し掛かり、雰囲気あるなぁ、と思ったポイントをルアーが通り過ぎたところで、

海面が盛り上がった。

マグロが口を開けてゆっくりとルアーの波紋に飛び出した。

目が合った。

そして、潜って行った。

ルアーには触らなかった。。。

けど!


いるぅ!!!!!

しかもデカかった!

とてつもない水深に疑心暗鬼だった僕の心は晴れた。

あとは信じて投げる、その時を待つだけ。

暫くして、投げたルアーにくった!
程なく魚体は上がってきた。目測90kg程度。デカい。

しかし、


僕ではなかった。
とはいえ、素直に祝福し、次は僕だと想いを新たにする。

だんだんと気配がなくなってきた。
鳥も若干、少なくなってきた。

「だいすけさん、前でずっと投げてくれていいですよー」
と声をかけてくれる皆さん。ほんとありがたい。。。


皆が休み始める。
ミヨシ(船の舳先)に立つ僕は投げ続ける。


「あー船の後ろ、遠くの方で1匹はねた〜」
ザキさんがそういったその時、僕はルアーを投げたタイミングだった。
船の後ろではなく、右前の方60mくらいにボチャンと着水する。

着水したルアーの波紋が消えるのを待ってルアーを引く、


止める。

焦らず動かさない様、心の中でゆっくりと数える。

15

14

13

12

11

10


9

8


7


6


5

.ょ "ドゥバァァァァァァxーーーーーーーーーン!!"

きたぁああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!

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最初に力みすぎたか、腰が思っているより早く痛み出す。きつい。。。暑い。。。顎が上がる。

ここまできたのは1人じゃないけど、
この魚は絶対に1人であげたい!!!

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