象の置物
数年前、古い骨董店の前を通りがかったときのこと。うず高く積まれた骨董品の山の上に小さな象の置物をみつけた。
黒い身体にくすんだ金属をまとい、小さな目がこちらを見ている。手にとってみると見た目より重く、貫禄がある。
得体の知れない物ながらも何故か気になって恐る恐る店主に値段を聞くと、意外にも手持で買える値段だったので持ち帰った。
くすんだ象を丁寧に拭くと細かな模様のついた金色の金具に様々な色の宝石が埋め込まれていることがわかって魅せられた。
それから長らく町家の床の間に「守り神」として飾っていたが、先日ふと気になって調べてみると、スリランカで行われるペラヘラ祭りで行進する象を模したものらしいことがわかった。
ペラヘラとは行列を意味する言葉で、ペラヘラ祭りではかつてインドからスリランカへ釈迦の「仏歯」が持ち込まれた故事にちなみ、装飾を施した100頭もの象や踊り子が首都キャンディを練り歩き仏歯を崇め豊穣を願うそうだ。
床の間に置かれたちいさな象が知らない世界を見せてくれた。
(「宙の音」より)
展覧会のご案内
「宙の音」(そらのおと)
2024/1/23(火)-1/28(日)
11:00-18:00 入場無料
京都写真美術館2階
ギャラリー・ジャパネスク
(京都市営地下鉄東山駅下車徒歩5分)
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