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ワーカホリックとは違う「ワーク・エンゲージメント」の考え方とは

働くこと、仕事に関する本を探してみると、
ちらほらと見かけることが増えている
「ワーク・エンゲージメント」という言葉。
2019年10月10日売のダイヤモンド社ビジネス誌
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』11月号でも
「従業員エンゲージメント」に関する特集が組まれています。

企業が目指すゴールやビジョンを理解し、
社員がやらされ仕事でなく「自発的に仕事に臨む」
意欲や働きがいを持ってもらうために、
食品・飲料・製薬メーカー企業がエンゲージメント経営の
取り組みを進めていることがまとめられています。

人手不足がどの業界でも進み、企業が優秀な働き手に
「わが社を選んでもらう」ために、従業員との
密接かつ長期的に維持することが求められているとのことです。

〇ワーカホリックとは違うのか?

少し穿った見方をすれば「ワーク・エンゲージメント」は
いかに企業が自社の方針を理解し、前向きに仕事をしてくれる
志願兵を作り出すか、という経営手法とも考えられます。

既に世の中の職場で自然発生している(はず)の
自ら進んで前のめりに仕事に没頭する働き方の
ワーカホリック(仕事中毒)とは何が違うのか。
前出の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載されている
ウイリス・タワーズワトソン社の特集記事を読むと、
働く人が会社の戦略を理解し、貢献意欲も高い状態で
かつ「心身の健康を維持しながら働ける」環境が
重要であると考えられているのが、単なる
ワーカホリック肯定とは違う点といえます。

現場のマネージャーやスタッフが十分な休息を取れない、
プライベートの時間を犠牲にしてまで仕事に打ち込んでしまうことで
社員が「長く働き続けられない」中長期的な目線で見れば
大きな機会損失につながりかねないトラブルを未然に防ぎたい、
という企業の気持ちが垣間見えるようです。

現場でのワーカホリックといえば、
「いかに目の前の死線をくぐり抜けるか!」
「今月しのいだら、休みを取ってどこか行くんだ…」
という短期的な目線で仕事をしがちです。(大抵裏切られる)
瞬間風速でパフォーマンスを発揮できても、やはりどこかで
無理をしている分、長く仕事をしていると心身のどこかに
いつかガタが来ます。その事故をなくそうとする
「人生100年時代」だからこその働き方づくりが、
ワーク・エンゲージメント経営に求められています。

〇ワーカホリックはやがて「燃え尽きる」

ワーク・エンゲージメントを知ろうとして手に取った
もう一つの書籍がこちら。ウィルマー・B・シャウフェリ、
ピーターナル・ダイクストラ著 島津明人、佐藤美奈子訳
『ワーク・エンゲイジメント入門』(星和書店)です。

2012年に出版された時点で「ワーク・エンゲージメント」に
着目していた本著。この中では、仕事の負担が慢性的に多く、
従業員のストレスが増せば仕事中毒を超えて「バーンアウト」に向かう、
つまり働く人の有能感低下怠慢のトリガーとなることが記されています。
気持ちに関するものだけでなく、疲労や睡眠時間、病気など
働く人の身体的健康に関わるストレスも少ない方が、バーンアウトではなく
「エンゲージできている」仕事に情熱を注げる状態とされています。

私も前職で上司に「馬車馬の様に働け!」とリアルに言われたことが
ありますが、馬にもきちんとした休養や食事を与えなければ、
長い距離を走ることはできません。鞭を叩くばかりでは、
乗り手との関係性も良いものにはならないでしょう。

いずれの書籍も、働く人が
「良いパフォーマンスをできるだけ長く発揮できる環境」
いかにつくっていくか、が重要と述べられています。


ワーカホリックになる、という考え方は働く一個人にとっては
目の前の仕事をやり切る、逃げずに克服するための術には
なるかもしれませんが、ある意味これは、目的達成のために
自分の安否は問わない薩摩の戦国大名・島津氏の
「捨てがまり」と同じです。心身を崩して働けないリスクを
背負ってまで、目の前の仕事は没頭する価値があるか?
ないとは言わないですが、その都度見極めたいものです。


10年ほど企画・マーケティング関連の会社にいました。 その時の激務で出会った仕事やすごい人々のお陰で今の自分がいるので、本noteでもよりよい仕事や働き方について模索していければと思います。