ヴァンフォーレ甲府選手紹介#4 〜サイドの支配者SHIZURA〜
「上手い。」
筆者が彼のプレーを初めて目にした時に思わず口にした言葉である。細かいタッチから局面を打開するテクニック、小気味いいドリブルと巧みなボールタッチ、鋭いターンと抜群のボディバランス。
2021年甲府にやって来た彼はファンサポーターに特大のインパクトを与えた。
彼の名は鳥海芳樹。
桐蔭横浜大学から加入した165cmと小柄な選手だ。
「また森さん面白そうな選手連れて来たよ。」
筆者は加入時のプレスリリースを見てワクワクしたのを覚えている。
どんな選手か知りたかった筆者はこのプレー集を見て鳥肌が止まらなかった。あの時の高揚感は今でも思い出せるほどである。
「やばい。すごい。マジか。」
筆者はすっかり語彙力を失っているが、素晴らしい選手のプレーを見た時のことを考えてほしい。
メッシのドリブルを見て
「今の持ち出し方はうまくレーン取りをして相手をブロックしながら細かいタッチでかわしている。わざとボールタッチを長くして…」なんてことを抜かす奴は変態かレオザくらいである(怒られろ)
そんな選手が甲府にやってくるのだ。胸の高鳴りを抑えながら今か今かと開幕を待ちわびていた。
迎えた2021シーズンのオープニングゲーム、ジェフユナイテッド千葉戦。早速メンバー入りした鳥海にチャンスが与えられる。後半22分に有田との交代でピッチに立った若武者は初出場とは思えないプレーで躍動。見事に伊藤監督の信頼を勝ち得た。
彼の良さが爆発したのは5月9日に行われたホーム東京ヴェルディ戦。後半からリラに代わってピッチに立った18番が魅せる。まずは後半2分。
メンデスが頭ですらしたボールをハーフボレー。
三平が頭でコースを変え先制点をゲット。彼のシュートへの意識と積極性が生んだゴールだった。
圧巻だったのは後半14分。バイタルエリアでボールを受けるとシュートモーションから泉澤にパスを預ける。持ち出した泉澤がタメを作って鳥海に絶妙なパスを送ると、見事に流し込んでゴールを奪った。
1点目の起点となったシュートで完全にヴェルディDF陣はシュートコースを消す守備の仕方をしていた。鳥海はそこを逃さず、パス&ゴーでペナルティエリアに侵入。リターンパスを受けてからも冷静にキーパーのタイミングを外す強かさはルーキーとは思えなかった。
ちなみに余談だが、筆者はこの試合あたりからさんぺーさんの沼にハマった🫠🫠
決定的な仕事ができてチームの士気を上げることができるプレイヤーは多くない。今年も頼むねさんぺーちゃん🙏
結局このシーズン鳥海は4ゴール2アシストを挙げ、30試合に出場。充実のルーキーイヤーとなった。
2年目となった昨シーズンはスタメンで出場する機会を増やし、得意のヌルヌルドリブルでチームの攻撃に厚みをもたらしたり、鋭いターンや前を向くタッチで攻撃陣を牽引し続けた。
しかし、前年シーズンの活躍を見ると得点数、アシスト数共にやや物足りない印象で、スペースを消してくる相手には持ち味を出しきれたとは言い難い。チームの成績も伸び悩み、彼自身も悔しいシーズンだったに違いない。
そして今シーズンのこけら落としとなったFUJIFILMスーパーカップでスターティングメンバーに名を連ねたNo.18は早速結果を残す。マンシャがインターセプトから持ち上がると絶妙なスルーパスを供給。
これに反応した鳥海が冷静に折り返し、ウタカがプッシュ。VARでゴールが認められると拳を天高く突き上げ喜びを爆発させた。試合には敗れたものの、彼の良さが存分に発揮された試合だった。
今シーズンの鳥海は守備面で献身性が素人目にも伝わるくらい向上し、浅い位置で組み立てに加わることも多い。オープンな展開が少ないということもあるが、彼のドリブルに期待するサポからすると、やや物足りなく感じるかもしれない。
しかし、4-2-3-1の右SHとして忠実に仕事をこなす彼の役割はチームにとって欠かせない。
先日の清水戦での高い位置でのボール奪取は今年の鳥海の守備意識が凝縮されたシーンだった。
本日4月2日時点で先発は3試合。2列目のポジション争いは熾烈である。同期入団の長谷川や新加入の武富、土肥、さらには中山陸や飯島、見事にSHに適性を見せている三平やジェトゥリオらとポジションを争わなければならない。
勿論、ここまでのプレーぶりも十分な活躍を見せているし、ひたむきに守備を行い、機を見てゴールを狙う意識は非常に伝わる。
まだ焦る段階ではないかもしれないが、ノーゴールなのは少し寂しい。ゴールに直結するプレーが全てではないが、ゴールという目に見える結果が求められるポジションなのは彼自身が十二分に理解しているだろう。
勝負の3年目のシーズン。サイドで躍動し相手DFを無力化するプレーは幾つ見られるだろうか。
信じる者は救われる。
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