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ヴァンフォーレ甲府選手紹介#2 〜労を惜しまぬスプリンター〜

2020年7月29日 J2第8節水戸ホーリーホック戦。
スターティングメンバーの中に聞き慣れない選手の名前があった。彼の名は関口正大。
当時、法政大学の4年でチームで主将を務めていた。
森スカウトの慧眼に全幅の信頼を置いている筆者はスタメンに名を連ねた背番号36のプレーに期待していた。
試合が始まると3-4-2-1の右ウイングに入った22歳の若武者が躍動する。
鋭い出足でプレスを掛けたかと思うと、攻撃時にはスプリントと思い切りのいい仕掛けを見せ堂々たるプレーを見せる。上背こそないものの、機を見た攻撃参加やクロスで相手の脅威となり、後半42分に退くまでチームのためにアップダウンを繰り返した。かく言う筆者もチームのために走れる選手が大好きなので、その試合で心を掴まれた(ちょろい)。
誰がどう見ても上々のJデビューだっただろう。
しかし彼は試合後の取材で

「スピードに乗ったドリブルはできたが、そこからのクロスとか、決定的なパスを出すとか、チームの勝利に貢献できるようなプレーができなかった。守備面では、相手のヘディングの失点シーンもそうですが、自分の立ち位置が甘かった。プロの世界で活躍していくためには、自分の今の感覚では足りない。」
と自分の課題を分析し、謙虚な姿勢でこう語った。

彼の謙虚な姿勢は次の出場機会で見事に結実する。
迎えた第11節FC琉球戦。大学の同期長谷川と共にスタメンに抜擢され、右ウイングバックで出場する。
前半から上下動を繰り返し、労を惜しまずハードワークを行う。クロス職人のSB沼田圭悟や技巧派のMF富所にも臆さず勝負に挑み、琉球の攻撃を粘り強く抑える。
関口の守備対応に琉球攻撃陣はあからさまに苦しめらていた。
そして後半11分関口が大仕事をやってのける。
今津からの対角線のパスをワンタッチで折り返し、太田修介のゴールをお膳立て。この試合でCKからアシストを決めていた長谷川に負けじと結果を残した。試合は元甲府の阿部拓馬にPKでゴールを許すも、2-1でタイムアップ。
試合中は頼もしかった関口の顔に柔らかい笑顔が灯った。
しかし特別指定でプレーしたこのシーズンに彼の見せたプレーは彼のポテンシャルのほんの一部に過ぎなかった。
開幕戦こそ左サイドで起用されたものの、第2節からは本職の右サイドでプレー。豊富な運動量でチームのために走り続け、第15節水戸戦では右サイドから切り込み、嬉しいJ初ゴールを挙げる。
シーズンを通して2021シーズンは主力として活躍し、充実のルーキーイヤーとなった。
しかし当の本人は昇格を逃した悔しさを語り、もっともっとできると強い決意を口にした。

躍進を誓った2022シーズンは苦しいシーズンが続き、チームは18位に低迷する。そんな苦しいシーズンにおいても、変わらずスプリントするNo.23。

漢の中の漢なら何も言わず闘え
そうさ死ぬまで青赤何も恐れず闘え

という甲府のチャント(最近歌わないから歌って欲しい)をまさに体現する選手なのではないだろうか
(マサだけにとかマジでつまらないからやめて)

悲願の天皇杯優勝は彼の活躍があってこそというのは恐らく甲府サポなら誰しも分かっているだろう。
優勝決定の瞬間にサポーター目掛けて駆け出し、ゴール裏のサポと抱き合うシーンは何度見ても号泣ものである。for theチームの彼の人柄が詰まったワンシーンであり、苦労が多かったシーズンの彼の努力が報われた瞬間でもあった。
子煩悩な父親としての一面も持つ背番号23の今シーズンは厳しい船出となっている。
スタメン出場は未だになく、途中交代でピッチに入ることが現状では多い。今季のサイドバックは抜群の読みとカバーリング、対人にも長けるキャプテン須貝や、高い攻撃センスと魅力的な攻撃参加が武器の大卒三浦、精度の高いクロスを搭載している荒木、小林と非常にライバルが多い。
さらには新加入の神谷もサイドでプレー可能だ。
関口が今季出場機会を得るためには、クロスの精度やファイナルサードに顔を出すプレーを増やすなど、攻撃面での貢献がさらに求められる。

労を惜しまぬスプリンターは今シーズンも小瀬を風の如く駆け抜ける。

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