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これは新たな開拓の第一歩 AZKi 8th LiVE「Rewind & Reunion」レポート

2021年9月12日、Z-aNにてAZKi 8th LiVE「Rewind & Reunion」が開催された。本公演は本来であれば2021年6月13日に池袋harevutaiで開催されるはずだったものが、世界情勢を鑑み開催延期と配信のみ現地開催なしという形でこの日開催されたものだ。そんな逆境に負けずAZKiとAZKiチームが今できる全力を注いだライブ、そのレポートを今回はお届けする。

AZKi 7th LiVEから導入されたオープニングアクトを、今回はVSingerプロダクション「ライブユニオン」所属のHACHIが務めた。

HACHIが最初に披露したのは「アイソレイション」。そして1フレーズ目から一気に引き込まれるHACHIの歌唱力に息を飲んだ。その歌声とクラップしたくなる軽快なメロディーに酔いしれ体を揺らす。最初の曲で視聴者の心をしっかりと掴む歌唱力と、自己紹介のMCで緊張しながら両手を振り「HACHIこんな感じでーす!」とおどけた時のギャップで、こちらの口角も上がってしまった。

そこから続くのは「Rainy proof」と「八月の蛍」の2曲。どちらも悲恋を歌ったバラードでこちらの心を揺らしてくる。「Rainy proof」はメロディーに混じる雨の音が心地よく、HACHIの歌声も切なく湿度を感じた。彼女の伸びやかな歌声は、成就しなかった恋の古傷を撫でてくれているかのよう。

対する「八月の蛍」も悲恋の歌だが、こちらはまだ綺麗な思い出になり切れていないカサブタに触れるような痛痒感を思い出させる。彼女の歌声は聴く者の心に触れ、様々な感情を想起させる。そのたしかな表現力は間違いなく本物だと感じた。

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いよいよAZKiの8th LiVEが始まる。「Ordinary」という文字が「ExtraOrdinary」に変わり、非日常が始まる。冒頭は2019年12月29日に池袋harevutaiで行われた4th LiVE AZ輪廻の映像。アタックムービーの中で、AZ輪廻の日から時が止まり思い描いていた世界がもしもの世界になってしまったこと、しかしその世界の中でたくさんの変化と出会いを通じて、この時間が無駄ではなかったことに気付いたこと、そしてAZKiたちのやり方で時計の針をもう一度進めるという決意表明が、「行くよ、開拓者」という言葉とともに開拓者に示された。

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いつもと違う新しいOvertureが流れ「ちいさな心が決めたこと」「without U」「in this world」とメッセージ性の強い曲が、立て続けに開拓者に向けて浴びせられた。

「ちいさな心が決めたこと」はAZKiの決意の歌。「この先には叶えたいことや夢があるから/目を逸らさないように」や「それでもここで生きていくと/決めたんだ」という歌詞に込められた想いが、先の映像とあいまってより強く胸に響いた。最初の曲を聴いた時点で、今回のセットリストも今AZKiがおかれた状況により曲の文脈や解釈が変わるのだと察した。

「without U」はAZKiという存在そのものの歌。「開拓者がいなければAZKiはAZKiでいられない」というダイレクトなメッセージは、AZKiの歌を通じてこのライブを見た開拓者全員に届いたことだろう。「キミといるこの瞬間/大切なものにするために」という歌詞はAZKiの想いでもあり、AZKiのライブをいつも心待ちにしている開拓者の想いでもある。

「in this world」は今とその先のための歌。「世界の再構築」をテーマにしたこの曲は、本来あるはずだった「もしもの世界」が壊れたからこそ生まれた曲だと思う。そして「ここからもう一度君と私で始めよう」というポエトリーは、冒頭の時計の針を進めることにもつながる。「別の未来を選ぶことが出来たなら/君のいない世界を創造する?/そんな世界は想像出来ない」と力強く歌うAZKiからは、新たな変化と出会いを帳消しにして「もしもの世界」を望む、後ろ向きな気持ちは微塵も感じられなかった。

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ここでAZKiからYouTubeでの冒頭無料配信終了の連絡とともに、「新曲があるかも?」という匂わせがあった。そして今回初の試みである「Pioneer Viewing」の説明がされた。このライブでは、ビデオ通話でライブを観覧している開拓者の映像のみが、AZKiから見られるようになっていたのだ。筆者も参加していたのだが、ビデオ通話とは言え同じライブを見る者同士で一緒にサイリウムを振る一体感は、久しく味わえなかったもので最高に楽しかった。

ここからは可愛い曲のターン。「のんびりと、」「猫ならばいける」「リアルメランコリー」と可愛いの暴力が開拓者を襲う。「のんびりと、」でAZKiが「今日は何曜日?」「今日何しよっか?」と歌えばコメントは一斉に「日曜日!」「ReReAZ!」とレスポンスを返す。ゆる~い歌詞を歌いながらパパン!パン!と手を叩くAZKiの姿からは、彼女の年齢18歳(永遠)よりも何歳か幼い可愛さを感じた。

「猫ならばいける」でにゃーにゃー!と猫のようにステージを駆けるAZKi。その元気で可愛くて、気まぐれでわがままな姿は猫そのもの。普段のAZKiのイメージにはない無償の愛をねだる姿に、彼女のわがままに思いっきり振り回されてみたい思ってしまう。この曲はAZKiの既存イメージをぶっ壊した唯一無二な曲だろう。

「リアルメランコリー」では、アニメMVでAZKiの衣装が変わるタイミングに合わせるように、ステージ上のAZKiの衣装も3rd衣装から2nd衣装へと変わった。この衣装チェンジのタイミングの巧みさもAZKiのライブの見所だ。この曲のポップな可愛さも見事に歌で表現して見せたAZKi。曲ごとに違う「可愛い」を表現できる、歌声の表現力のきめ細やかさには舌を巻くばかりだ。

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水分補給をしながら新たに追加された新衣装のスタンプや「天井」のスタンプについて触れる。今回もAZKiが水を飲むたびにデジタルツラニ水のスタンプが乱舞していた。コメントやPioneer Viewingのおかげでテンションが上がったというAZKiの言葉に、こちらのテンションも上がってしまう。

そして待ちに待った新曲「最強×最弱ガール」を披露。初見でこの歌はVtuberであるAZKiの歌のように感じた。「あたし最強で最弱なガール/弱気なココロをスーツで隠して」の歌詞は、ステージの上で歌うアイドル然としたAZKiの姿と、時折SNSや配信で垣間見せるAZKiの自己肯定感の低さを指しているようだ。そんな最強と最弱の間で揺れ動く歌詞を、ジャジーなメロディーと颯爽としたサックスとともに格好良く歌い上げるAZKi。最後の「フォゥ!」は完全に不意打ちでソングライターに一本取られた気持ちになった。

新曲の次は新しくアニメMVが公開されたばかりの「フェリシア」。アニメMVを背景にスカートを揺らしながら歌うAZKiは可愛さに満ち溢れていた。ポップで可愛い曲調とは裏腹に実らなかった恋を歌う歌詞の切なさを、AZKiの優しい歌声が包んでくれる。可愛いだけではない、甘酸っぱさに遠い青春の思い出が脳裏をよぎる曲だ。

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新曲の「最強×最弱ガール」がsumeshiii氏からの楽曲提供であること、しまだ氏が制作した「フェリシア」のアニメMVのシマエナガがAZKiのお気に入りであることがAZKiから語られ、AZKiの活動は多くの関係者とクリエイターのおかげで成り立っていると感謝が述べられる。そして今回機材協力してくれた株式会社エルザジャパン様、ビューソニックジャパン株式会社様、株式会社アウリン様への感謝を、AZKiとコメントの開拓者全員で一緒に伝えた。

「ここから一気に盛り上がっていきましょう!」という言葉とともにAZKiのロックナンバー「自己アレルギー」「嘘嘘嘘嘘」「Fake.Fake.Fake」の3曲が披露される。「自己アレルギー」の一種暴力的なロックの音を聴き、可愛いから格好いいへ一気に振り切る、この温度差こそAZKiライブの真骨頂だと感じた。コメントもPioneer Viewingのボルテージも一気に加速する。

続く「嘘嘘嘘嘘」はロックの中にどこか雅さを感じ、AZKiも艶のある歌声で歌い上げる。ノリの良い格好いいメロディーなのに、愛憎渦巻く歌詞というアンバランスさには不思議な中毒性を感じた。

「Fake.Fake.Fake」はAZKiのライブで幾度となく歌われてきたもはや定番曲と言ってもいいだろう。聴き慣れた疾走感のあるロックに、Pioneer Viewingの開拓者たちも激しく腕を突き上げていた。手が届くのであれば、きっと開拓者同士で肩を組んでジャンプしていたことだろう。

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みんな一緒に盛り上がり「楽しいねライブって」とご満悦のAZKi。そのまま続けて「Reflection」「Midnight Song」「タイムカプセル」のクラブミュージック3曲へとなだれ込む。

「Reflection」の気持ちいい音が鳴った途端、ステージの空気が変わった。AZKiの静かに誘うような歌声が響けば、そこはもうダンスフロア。ステージの上でノッているAZKiの姿を目に焼き付けながら、気が付けばこちらも頭と肩を揺らしていた。

「Midnight Song」のAZKiの愛撫するような優しい歌声が、ライブで火照った体に心地よく染み込んでくる。深夜2時のダンスフロアの情景が浮かぶような疲労感と浮遊感に襲われながら音に身を任せた。

「タイムカプセル」のチルい音を聴きながら、このライブの楽しかった思い出をタイムカプセルに入れて、ずっと覚えていたいと思わずにいられなかった。いつか今日の思い出がセピア色になって、楽しい時間を共有した開拓者たちの顔や名前が思い出せなくなると思うと、どうしようもなく切なかった。

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ここでAZKiから、この日のライブのテーマ「Rewind & Reunion」つまり「巻き戻しと再集合」について語られる。本来であれば池袋harevutaiで久しぶりの現地ライブをする予定だったはずが、配信ライブのみになってしまったことに悔しさをにじませるAZKi。それでも今できる繋がり方を、今できる最大限の楽しみ方を続けて前に進んでいきたいという決意を表明する。AZKiの「みんなと生きるこの時代をこれからも大切にしていきたい」という気持ちと、この時の開拓者たちの気持ちは、きっと同じだったはずだ。

ここからは「いのち Acoustic ver.」「青い夢 Acoustic ver.」と開拓者にとって全滅不可避の危険な曲が続く。そしてさらに新曲の2曲目「ナナワリエネミー」も披露された。

「いのち Acoustic ver.」は通常ver.よりもAZKiの歌声に乗った感情が控え目な分、いつもより静かに優しく心に染み入ってきた。控え目にも関わらずサビの部分で感情を確実に揺さぶってくる。AZKiのこの歌唱は、静かな絶唱と呼ぶ他ない。

「青い夢 Acoustic ver.」も通常ver.より楽器の種類が少ない分、AZKiの感情がダイレクトに届くようで破壊力を増していた。「何も守り切れないよ」の悲鳴のようなロングトーンが胸に刺さり、えぐってくる。この「いのち」「青い夢」の2曲の歌唱は、新曲2曲の披露にも劣らない、今回のライブハイライトのひとつで間違いないだろう。

そして新曲の「ナナワリエネミー」。まずこの明らかに難しい曲を、ライブで自分らしく歌いきったAZKiの歌唱力と表現力を称賛したい。AZKiの歌とコーラスの対話や「頑張るあの子が/必死な私を殺した」というセンセーショナルな歌詞が印象的で、「私はここで歌うの/私のすべてを守るため」という歌詞は、今までもこれからもずっと歌い続けるAZKiの生き様にピッタリだと思った。

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新曲の「ナナワリエネミー」はVSingerのアザミからの楽曲提供ということが明かされ、この難しい曲をAZKiが自分らしく歌うために1週間悩んだことが語られる。そしてライブもいよいよ終盤、残り2曲となった。

最後はAZKiと開拓者の歌とも言える「from A to Z」と「Creating world」の2曲。「from A to Z」はAZKiと開拓者が一緒に歌う曲だ。しかし配信ライブで視聴者はシンガロングもモッシュもできない。それでもコメントでは全員が歌で繋がろうとしていたし、Pioneer Viewingに参加している開拓者たちは声を出して歌っているだろうなという確信があった。AZKiの「ここがスタート」という歌声で、AZ輪廻で止まっていた時計の針がまた進み始めた、そんな気がした。

「Creating world」はAZKiの大切な始まりの曲。その曲を最高に楽しそうに歌っているAZKiの姿を、息をするのも忘れてただ見入っていた。AZKiと開拓者たちなら、何度だって世界を創り直していけると思わせるだけの力を、彼女の歌声から感じた。「ありがとうございました!AZKiでした!」と言って一旦はライブが締められる。

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もちろんこれで終わるはずがない。コメントには「アンコール!アンコール!」という文字があふれ、Pioneer Viewingではホワイトボードに「アンコール」と書いてカメラに写す者や手拍子でアンコールの意思を伝える者がいた。

再びステージに上がったAZKiが歌うのは「Intersection」。まだまだライブは終わらない!とばかりにアップテンポな曲で視聴者のテンションをアゲてくる。コメントを煽るAZKiと、「はい!はい!」という開拓者のコメント、Pioneer Viewingからのサイリウムでの応援。場所が離れていても、間違いなくこのライブの参加者は体験を共有していた。

AZKiからコメントとPioneer Viewingにアンコールのお礼が述べられ、「みんなが一緒に今日この時間を盛り上げてくれて幸せ」と嬉しい言葉が添えられる。

アンコール2曲目は「発光体ソーラーサイクル」。作詞作曲を手掛けたMOSAIC.WAVからAZKiへと継承として贈られたこの曲は、AZKiからこの曲を聴く者への継承として、力強く背中を押してくれる。今もこの世界中のどこかで頑張っている開拓者みんなを応援してくれる素敵な電波ソングだ。間奏の「みんなと一緒の時間が一番一番楽しいです」というAZKiの言葉に、こちらこそAZKiのライブが一番楽しいと言葉を返したくなる。

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最後の曲の前にお知らせ。本日初披露された「最強×最弱ガール」が9月25日0時からリリースされ、そこから11月末までだいたい2週間に1回のペースで新曲がリリースされるというお知らせに喜ばない開拓者がいるだろうか?さらに8th LiVEのキービジュアルアクリルパネルの受注生産が発表された。

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そしてAZKiからの「今日の開拓者みんなの応援がAZKiの元気になりました」という言葉で、今日一日の応援すべてが報われた気がした。「一緒にこれからも開拓していってくれますか?」というAZKiの問いに、YES以外の答えは考えられない。

本公演本当に最後の曲は「フロンティアローカス」。別れを惜しむようにコメントとPioneer ViewingでAZKiに向かって手を振る。この曲は過去のAZKiと未来のAZKiの対話のような曲だが、今日はAZKiが開拓者に語り掛けているようにも聴こえた。すべての歌を歌い終わり、去り際にAZKiから開拓者へ「また会おうね」と次の約束が結ばれた。

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そしてエンドロールの最後で「ExtraOrdinary」は「Ordinary」に変わり、人々は日常へ帰っていく。

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最後に本公演ではAZKiの歌だけでなく、AZKiチームのチームワークにも目を見張るものがあったことも、触れないわけにはいかない。いつもながらの美麗なVJ演出は、さらに立体的に感じられるようになっていた。歌に合わせた衣装チェンジのタイミングや、AZKiを魅力的に映すカメラのスイッチングもお見事。AZKiのライブは洗練された歌や楽曲に加えて、チーム全員のクリエイティブを十重二十重に築き上げて完成させた総合芸術と言えるだろう。

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本公演を見終えた後には、始まる前に抱えていた色々な不安は、つき物が落ちたようにスッキリと消えていた。今回現地ライブができなかったとしても、この先世界がどうなるか不透明だとしても、きっとこれからもAZKiは歌を歌い続けるし、AZKiチームは幾度もライブをするだろう。それならばAZKiと開拓者は、いつか必ず現地ライブで同じ空間と時間を共有することができるはずだ。今回がダメなら次の機会に、次がダメなら次の次の機会に望みをつないでいけばいい。そんな安心感を与えてくれる前向きなライブだった。

今回のPioneer Viewingのように、AZKiチームはその時できる範囲でAZKiと開拓者が繋がれる方法を、今後も模索していくだろう。いち開拓者として、その姿勢が何よりも嬉しく、だからこそAZKiとの「また会おうね」という約束が果たされる日を、いつまでも待てるのだ。その日を心待ちにしながら、これからもAZKiの元気となれるよう、ライブや楽曲の感想を彼女に届け続けていこうと思う。

・オープニングアクト(HACHI)
1.アイソレイション
2.Rainy proof
3.八月の蛍

・AZKi 8th LiVE「Rewind & Reunion」セットリスト
0.Overture 2nd
1.ちいさな心が決めたこと
2.without U
3.in this world
4.のんびりと、
5.猫ならばいける
6.リアルメランコリー
7.最強×最弱ガール
8.フェリシア
9.自己アレルギー
10.嘘嘘噓嘘
11.Fake.Fake.Fake
12.Reflection
13.Midnight Song
14.タイムカプセル
15.いのち Acoustic ver.
16.青い夢 Acoustic ver.
17.ナナワリエネミー
18.from A to Z
19.Creating world
EN1.Intersection
EN2.発光体ソーラーサイクル
EN3.フロンティアローカス
ED.オーバーライト

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