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これからにつなげる最高のプロローグ 星街すいせい1stソロライブ「STELLAR into the GALAXY」レポート

2021年10月21日、豊洲PITにて星街すいせい1stソロライブ「STELLAR into the GALAXY」が開催された。その模様はSPWNでも配信され、アーカイブは2021年11月21日まで視聴可能となっている。

2021年9月29日にリリースした1stアルバム「Still Still Stellar」からオリジナル楽曲に加え、ゲストのにじさんじ所属の戌亥とこ、ホロライブ・イノナカミュージック所属のAZKiとのコラボ曲、アンコールを含め18曲を熱唱した。

「STELLAR into the GALAXY」のレポートに入る前に、改めて星街すいせいについて簡単に振り返っておこう。2018年3月に個人VTuberとしてデビューした彼女は、2019年5月にホロライブ内の音楽レーベル・イノナカミュージックに加入。そして同年12月にグループとしてのホロライブに転籍した。

日々のYouTubeの配信だけでなく、ホロライブ1stフェス「ノンストップ・ストーリー」や戌亥とこ1stソロライブ「who i am」をはじめとした数々のライブイベント出演や、超A&GでのラジオMC、「プロジェクトV」などのテレビ出演など、アイドルVTuberとしていつか武道館でライブをすることを夢見て精力的に活動している。

そんな特異な経歴を持つ彼女の記念すべき1stソロライブが開催ということで、大勢の星詠み(星街すいせいのファンの愛称)が全世界から豊洲PITとオンライン配信に集った。

サイバーな雰囲気のアタックムービーからライブは始まった。夜の街から宇宙へと彗星が駆け抜け弾け、壮大な銀河を背景に「STELLAR into the GALAXY」のタイトルが表示される。

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誰しもがこの街で孤独だった―――

街並みの雑踏の映像と、何者にもなれないでいる「僕」のナレーションからこのライブの物語は始まる。「僕」の心境を表現するように最初の曲「GHOST」が披露された。格好いいストリングスの音色を背に、全世界に「星街すいせい」の存在を証明するように歌い最高のライブのスタートを切る。

「豊洲PITいくぞー!」と客席を煽り次の曲は「駆けろ」。疾走感のあるドラムに乗せて「もっともっと!」と観客と一体になり盛り上げていく。全力の歌声とダンスパフォーマンスから、このライブに注いだ彼女の情熱を感じた。

続く「バイバイレイニー」は一転してムーディで洒落た空気へ。星街すいせいの歌もダンスも妖艶にしなやかに変化する。間奏に軽やかにステップを踏む姿が印象的だった。

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冒頭3曲を歌い終わり、お約束の挨拶の時間。「彗星のごとく現れたスターの原石!アイドルVTuberの星街すいせいでーす。すいちゃんは~?」の後に会場ではペンライトを上下させる。その動きだけで「今日もかわいい!」という星詠みたちの声が届いたようだった。念願の1stソロライブ開催の喜びを噛みしめつつ、会場の星読みをうれしそうに見回す星街すいせいの姿が微笑ましかった。

そして「Bluerose」「Je t'aime。」「自分勝手Dazzling」と立て続けに3曲を披露。この3曲の曲同士の息つく暇もないつなぎ方は見事としか言いようがない。

「Bluerose」の甘い歌詞と手でハートを作ったりウインクをする可愛い動きで心臓を撃ち抜かれた。Bluerose、青いバラの「不可能」から「夢叶える」へと変わった花言葉は、星街すいせいの夢を叶え続ける姿を象徴するようだ。(※青いバラは存在しないとされていたが、長年の研究の結果青いバラが誕生したため花言葉が変化した)

「Bluerose」から「Je t'aime。」への曲のつなぎで衣装がアイドル衣装へ変化する。一瞬の衣装早着替えはバーチャルならではだろう。「Je t'aime。」では「Bluerose」よりも一回り大人の可愛い歌声を披露。可愛いよりも美人や綺麗と表現した方が良いだろうか。衣装はアイドルらしい可愛さで歌とのギャップにクラクラした。

「自分勝手Dazzling」で"もっとキミを夢中にさせたい"、"ずっと見逃さないで"、"よそ見なんて許さない"と歌うステージ上の彼女の姿は光り輝いていて目を逸らすことができなかった。間奏のギターソロに呼応するようなダンスにも星詠みたちの視線は釘付けだっただろう。

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ソロパートが終わりゲストパートへ突入。最初のゲストはにじさんじ所属の戌亥とこ。歌う曲はとこまち(星街すいせいと戌亥とこのユニット名)が大好きな「あんさんぶるスターズ!!」より「Galaxy Destiny」をカバー。タイトルと歌詞に銀河が入っており、今回のライブタイトルともかかった選曲だろう。自分たちの大好きなコンテンツの歌を歌う二人の顔の楽しそうなこと。シンクロしながら踊る二人に合わせるように会場のペンライトも青と赤が混ざり合っていく。

ゲストの戌亥とこの自己紹介を漫談風にしながら、戌亥とこの靴ひもがほどけるというハプニングもあり、ワチャワチャしながら進行していく二人。「Galaxy Destiny」を選曲した理由は、この曲を星街すいせいがカラオケで歌った時に戌亥とこが気に入ったからとのこと。そして二人のサプライズの茶番を挟みつつ、とこまちのオリジナル曲「OUT OF FRAME」が初披露された。しかも本ライブの後0時にリリース予定。

「OUT OF FRAME」の攻撃的なロックなメロディと境界線や次元のはざまを超えていこうとする歌詞は、ホロライブとにじさんじという枠組みを超えて繋がっている二人にこそふさわしい。異なる事務所に身を置きつつも、同じ時代のVtuberシーンで表現活動をしている二人の固い絆が、この歌に確かに刻み込まれていた。

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続いてのゲストは同じホロライブからAZKi。披露するのはAZKiのオリジナル曲「ひかりのまち」。「OUT OF FRAME」に負けず劣らないゴリゴリのロックな曲を二人のホロライブの歌姫が高らかに歌い上げる。奇しくも今回の2人のゲストのイメージカラーは共に赤で、星街すいせいのイメージカラーの青と好対照でステージに映えている。「心で叫べー!」というステージからの声に、客席のサイリウムが激しく揺れた。

「こんあずきー!」と挨拶をしたAZKiは早速「すいちゃん1stソロワンマンライブおめでとう!」というお祝いを送り、続けて「すいちゃんは今日もかわいいー!」という星詠みたちの心の声を代弁した。

そして星街すいせいとAZKiが初めて同じステージに立った約2年半くらい前の日のことを振り返る。星街すいせいにとって初めてのステージで、緊張して何をしたらいいか分からず人見知りしていた頃の話を掘り返されて、恥ずかしさのあまりステージ上でジタバタする姿が可愛らしい。

「ひかりのまち」の選曲理由は、ほし「まち」とひかりの「まち」という「まち」繋がりと、この曲のイントロを聴いた時にビジョンが浮かんだからとのこと。

次に2人で歌う曲はAZKiが作詞作曲した「The Last Frontier」であること、ずっと2人一緒に歌いたかったこと、時間はかかったけど今日この曲を歌えることがうれしいという素直な気持ちがAZKiの口から語られる。そしてAZKiから星街すいせいへ捧げる曲が始まった。

「The Last Frontier」の歌詞は2年半前の2人の出会いから今までを追想させる。"最前線の地へ/君なら行ける"という歌詞はAZKiから星街すいせいへのエールに他ならない。また完璧なほどに綺麗なハモリや、背景の赤と青の映像、それと対照的な2人の立ち位置など、ライブ演出が計算されつくされているのを感じた。

2019年7月27日に秋葉原エンタスで行われた「INNK EXHiBiTiON」で星街すいせいとAZKiが初めて一緒に歌った「トライアングラー」を聴いてから、筆者は2人のオリジナル曲を待っていた。一度は袂を分かった2人がこうして同じステージでオリジナル曲を歌う姿を見られて、2人が今まで歌い続けてくれた奇跡に感謝しかない。

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再びソロパートに戻り「Starry jet」「comet -Midnight Jazz Arrenge-」「3時12分」を披露。

「Starry jet」のダンサブルなメロディに乗り、ライブ後半戦にも関わらず軽やかにステージで歌いながら舞い踊る。星詠みと楽しさを共有するように拍手を煽り、ステージと客席の一体感が高まっていく。"トクベツなParty Party Jet/まだ終われない"という歌詞から、まだまだ楽しいライブの時間が続く予感が伝わってくる。

「comet -Midnight Jazz Arrenge-」のムーディなアレンジに聴き入りながら、ステージの背景モニタに映る過去のライブ映像に見入っていると、星街すいせいの足元から花弁が沸き上がり、アイドル衣装から星の王子様を彷彿とさせる新衣装へと変化する。姫のような可愛さと王子のような格好良さが融合した新衣装に息を飲むばかりだ。新衣装で"今夜は眠れないほどに胸を躍らせて/私のこと見ていてね"と歌う姿から視線を外せる星詠みがいただろうか。

星街すいせいが三日月に腰掛け「3時12分」を歌い始めた時、まさかと思い時計を確認すると19時12分だった。もちろん曲名から着想を得て狙った時間だったのだろうが、予期せぬことが起こりがちなライブでここまで完璧なタイムキープは見たことがない。にくい演出に感動しながら"こないでこないで次の朝よ"という歌に、この夜がずっと続けば良いのにと思わせられてしまう。

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街明かりが息をひそめる。星はまだ見えない―――

「僕」のナレーションとともに、夜はまだ続いていく。「Andromeda」の壮大なメロディと銀河を背に星街すいせいは歌う。名前に星を冠する彼女は星をテーマにした曲をよく歌っている。この歌は星を通じて人と人とのつながりを歌っているようにも、星街すいせいと星詠みの繋がりを歌っているようにも聴こえた。

「天球、彗星は夜を跨いで」が始まり、ライブもラストスパートに近づいたことを感じる。「この楽曲を出して人気が出なかったら、自身の環境が変わらなかったら引退しよう。」という想いで作られたこの曲には、確かに会場の空気を支配する力を感じた。2020年1月24日に本公演と同じ豊洲PITで行われたホロライブ1stフェス「ノンストップ・ストーリー」でも「天球、彗星は夜を跨いで」を聴いたが、今日この日聴いた歌はあの時よりもさらに成長し胸に迫ってきた。

雲間からうっすらとキラメキが見える。
太陽に、雲に隠されても、星は変わらずそこにいて、瞬き続けているんだと知った。
本当に大切なものは目には見えないみたいだ。
きっと答えは見つからない。だから僕はずっとプロローグを描き続ける。
誰しもが特別なこの街で。
だって僕は―――

「僕」の声を引き継ぐように"だって僕は星だから"と最後の曲「Stellar Stellar」が始まる。1stアルバムの表題曲となるこの曲ほど、このライブのストーリーを締めくくるのにふさわしい曲はないだろう。"そうだ僕がずっとなりたかったのは/待ってるシンデレラじゃないさ/迎えに行く王子様だ"という歌詞は、このライブを見ている星詠みすべてをエスコートして引っ張って行くという宣言にも聴こえた。「みんなありがとう!」という声とともにステージは幕を下ろした。

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そして始まるアンコール。声を出せない代わりに万感の想いを込めた拍手が豊洲PITを満たす。アンコール1曲目は「キラメキライダー☆」。王道アイドルソングのこの曲は、誰が歌ってもその人の軌跡が脳裏をよぎってしまう。”覚えてるかな?最初の歌/私声が震えていた”と、この日豊洲PITの大きなステージで歌う星街すいせいの姿からは、2年半前に秋葉原エンタスで初めてステージに立って緊張していた姿は想像できない。またホロライブ1stフェス「ノンストップ・ストーリー」で出演者全員で「キラメキライダー☆」を歌った時、銀テープが発射されキラキラと会場全体が輝いていた光景も思い出された。

アンコールのお礼を言い、星詠みたちに「ライブ楽しかったですか?」と質問する星街すいせい。帰ってきたのは割れんばかりの拍手。新衣装がいかに可愛いかを力説しつつスクショタイムを挟み、ライブのために新調したヘッドセットも嬉しそうに紹介した。このライブが観客を入れて開催できて会場の人たちの反応を見て歌えたことを喜び、ここが終わりじゃない2nd、3rd、4thライブと続けていきたいアルバムもたくさん作りたいと将来の展望を語る。「今日限りじゃなくて、これからにつなげるライブにしたい」という願いを込めて、本当に最後の曲「NEXT COLOR PLANET」を披露した。

「NEXT COLOR PLANET」のイントロでいつか見た日のように銀テープが発射される。輝くステージの上で、軽やかにステップを踏みながらライブの最後の曲を噛みしめるように歌う。”La-la-la-la-la-la”を星街すいせいが「心の中で歌ってください!」と叫ぶと、その声に応えるように会場を埋め尽くす青い光が波打った。

これからも星街すいせいをよろしくお願いします。
ずっとずっとついてきてください。
ありがとう!星街すいせいでした、またねー!

という言葉とともに公演は終了した。ステージ上から今日世界一輝いていたスターの姿が消えた後も、会場の拍手はしばらく鳴り続けていた。

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今も有観客ライブには感染症対策として色々物理的な制限が設けられており、これまでのライブのようにはいかない。しかしだからと言って「ベストのライブができない」という後ろ向きな空気は、このライブでは微塵も感じなかった。一期一会のライブで、ステージ上のアイドルとオーディエンスが、共に最高の体験を共有しようと願っていた。

「だから僕はずっとプロローグを描き続ける」という言葉の通り、このライブは星街すいせいにとって始まりに過ぎない。これからも最高のプロローグを更新し続けてみせるという熱量を感じるライブだった。もう立派なスターの彼女が「スターの原石」を名乗り続けるのは、初心を忘れないためか、これからますます自身を磨き上げ輝きを増していくという宣誓か。

いつか武道館ライブをするという夢に向かって、彼女はこれからも止まらずに進み続けるだろう。そんな夢に向かってひたむきに、まだ見たことのない世界へ進み続ける星街すいせいの、1stソロライブの目撃者となれたことが光栄だ。

<セットリスト>
1.GHOST
2.駆けろ
3.バイバイレイニー
4.Bluerose
5.Je t'aime。
6.自分勝手Dazzling
7.Galaxy Destiny(星街すいせい・戌亥とこ)
8.OUT OF FRAME(星街すいせい・戌亥とこ)
9.ひかりのまち(星街すいせい・AZKi)
10.The Last Frontier(星街すいせい・AZKi)
11.Starry jet
12.comet -Midnight Jazz Arrenge-
13.3時12分
14.Andromeda
15.天球、彗星は夜を跨いで
16.Stellar Stellar
EN1.キラメキライダー☆
EN2.NEXT COLOR PLANET

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