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This is startup - 「ONE PIECE(モンキー・D・ルフィ)」~「海賊王になる」ということ~


はじめに

都内某私立中学校の受験説明会に参加した。
その学校の教育理念は「リーダ教育」(リーダを育てること)である。

何人かの生徒(中学生)から話を聞いた。
全員に熱量があった。

あどけない顔、言葉足らずの説明。
中学生の顔をしていた。

しかし目力は変わらない。
とても中学生とは思えなかった。

その後、中学2年生の女子生徒に学校内を案内してもらい、そこで彼女の夢を聞いた。

彼女の答えから、生徒の熱量の根源が、リーダ教育によって植え付けられたマインドセットであることに気づいた。

それは、「海賊王になる」ということだった。

ONE PIECE

世は大海賊時代ー
歴史上でただ一人〝偉大なる航路(グランドライン)〟を制覇した、
〝海賊王〟ゴール・D・ロジャー。
富、名声、力の全てを手に入れたという彼が、処刑直前に放った一言が、世界をゆるがせた。
『おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる
探せ! この世の全てをそこに置いてきた』
その言葉は大きなうねりを生み、多くの猛者たちを海へと駆り立てた。
〝海賊王〟が残した〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟をめぐり、
ある者は野望、ある者はロマンを求めて、海賊たちは信念の旗の下に戦い、名を上げていく。
波乱と冒険に満ちたそんな時代に、
1人の少年が〝海賊王〟をめざして、大海原へ乗り出したーー!!

ONE PIECE.com>作品概要

「ONE PIECE」。

主人公(モンキー・D・ルフィ)が、海賊王を目指して、仲間と共に海を巡る冒険浪漫を描いた作品である。

ルフィは、冒険を繰り返しながら、様々な人々を巻き込んでいく。
出会った人、戦った人、そして仲間を変えていく。

ルフィにかけられた懸賞金は、まるで彼の社会への影響力を表すバロメータのように描かれている。

「海賊王」の定義には諸説あるだろうが、本記事では、上記の「多くの猛者たちを海へと駆り立てた」という表現に着目し、「他者の行動に影響を与える存在」(言い換えれば、後に続く者から追われる存在)としたい。

海賊王=リーダ

リーダとは何なのだろうか。

① 先頭に立ってみんなを引っぱっていく人。先導者。指導者。統率者。〔外来語辞典(1914)〕

コトバンク

先頭に立ってみんなを引っぱっていく人。
先導者。
指導者。
統率者。

これらの定義には、引っ張られる人、先導される人、指導される人、統率される人が見て取れる。

つまり、どの定義も他者の存在を前提としている。

リーダとは、他者の行動に影響を与える存在、と言える。

であるならば、海賊王とリーダは同義と捉えることができるのではないだろうか。

中学生に見た「海賊王」の顔

リーダ教育

「リーダ教育」を掲げる都内某私立中学校。

この学校のリーダ教育には幾つかの特徴がある。

学校説明会は、理事長(某有名経営者)からのビデオレターで始まった。
最初のフレーズはこうだ。

「組織の99%は、リーダで決まります。」

教師からは、リーダ教育の例として、次のような話を聞いた。

「例えば、教師になりたい子がいたとして、我々は、文科省に入って日本の教育を変えよう、と教えています。」

では、この学校の「リーダ」の定義は何なのだろうか。
そんなことを考えながら、スクールツアーに参加した。

中学生の夢

この学校の生徒は、毎年4月、自分の机に「夢」を書くそうだ。
僕をガイドしてくれた生徒(中学2年生の女の子)の机には2行の夢が書かれていた。

中1「解剖医」
中2「解剖医」

「医者ではなく、解剖医とはまた珍しい」と思いながら、「どうして解剖医なの?」と聞いてみた。

彼女は迷ったそぶりも見せずに返してくれた。

「児童虐待を減らしたいんです。」

「ドラマで見た解剖医がかっこよかった」とか、「先生に進められて興味を持った」とか、そんな回答を想像していた僕は、申し訳ない気持ちすら覚えた。

「児童虐待を減らしたい。」

児童虐待を減らすためには、子供の傷の発生原因を特定し、適切な対応をする必要があると考えたんです。
その発生原因を特定する能力を身につけるためには、解剖医が一番だと思ったんです。

彼女が自身の夢を「解剖医になること」と表現した理由はこうだった。

彼女が解剖医になった未来を想像してみよう。
彼女は、子供にも、その親にも、メディアにも、そしておそらく社会全体にも、自動虐待を減らすバイアスをかけることになるだろう。
彼女の存在によって、児童虐待は減っていくに違いない。

彼女が解剖医になるということは、そんな社会的意味や社会的意義を持っているのだ。

夢を叶えた彼女は、他者の行動に影響を与える存在になる。

彼女との会話でそのイメージが自然と湧いた。

もしかしたら、彼女はこう言いたかったのではないだろうか。

「児童虐待を減らす人に、私はなる!!!」と。

むすび

今回の学校説明会で、「リーダ」という存在を見つめ直すことができた。

「リーダ」とは、人のために何かをする人ではなく、何かのために人を変える人なのだ。

これまで、本ブログでは、スタートアップの中で働く人間が持つべきマインドセットを、マルチプレイヤ、兼務、ジェネラリストといった言葉で表現してきた。

しかし、実はこれらの上位概念に置くべき言葉が「リーダ」になるのではないかと直感している。

僕はこれまで、「人を変える」という旗印で行動していたであろうか?

正直、リーダになりたいと思ったことはない。
しかし、リーダと呼ばれるようになって初めて社会的意味や社会的意義を持った存在と言えるのであれば、リーダになろうとするのではなく、人を変えようとしなければいけないのではないだろうか。

現時点の彼女は、少なくとも一人の大人にとっての海賊王になっている。

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