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障害者差別解消法の改正:ビジネスに新たな機会をもたらすウェブアクセシビリティ 

2024年4月1日から障害者差別解消法が改正され、事業者による合理的配慮の対応が義務化されることになりました。
ウェブの世界ではウェブアクセシビリティの対応がこれにあたり、ウェブサイトやアプリケーションがよりアクセシブルであることを義務付け、情報のアクセス権がすべての人に平等に保証されることを目指しています。

今回の義務化を機に、サービス開発とアクセシビリティの関係を海外の動向からまとめてみました。


各国のウェブアクセシビリティ対応状況

以下は海外のウェブアクセシビリティに関する法整備状況の一例です。
アメリカ
 
Americans with Disabilities Act(ADA)1990年
EU
 
EU Web Accessibility Directive 2016年
 European Accessibility Act(EAA)2025年施行予定
オーストラリア
 
Disability Discrimination Act(DDA)1992年
韓国
 
障害者差別禁止法 2007年

このように国によっては90年代から存在しており、それに比例してウェブアクセシビリティに関する訴訟は年々増えています。アメリカでは2008年にTarget社が集団訴訟で600万ドル支払ったケースもあり、ADAに基づくウェブアクセシビリティに関する2022年の訴訟件数はいまや4,011件に達しています。2018年は2,314件でしたので、4年でほぼ倍増です。["]["]

世界の Web アクセシビリティ実務者を対象とした 2021 年の調査では、5 社に 1 社が ウェブアクセシビリティに関する法的問題に直面していることが明らかになっており、訴訟コストも無視できないものだということが伝わるかと思います。["]

グローバル企業が進めるアクセシビリティ基準への対応

ところで皆さんは企業HPに掲載されているアクセシビリティのページは見たことがあるでしょうか?AppleGoogleMicrosoftのHPを見てみると、アクセシビリティステートメントが確認できるかと思います。
グローバル企業は各国のアクセシビリティ基準に対応する必要があるので、さまざまな取り組みが行われています。余談ですが、中にはCAO(Chief Accessibility Officer)を設置している企業もあったります。["]["]

例えば、MicrosoftではAI 技術を活用して障害のある人々を支援する様々なイニシアチブを推進しています。今年開催されたAbility Summit 2024では、Windows Copilot の導入や、M365 でのアクセシブルなコンテンツ作成ツールの提供、Azure AI を使用したアクセシビリティ向上など、AIを用いてアクセシビリティを促進し、障害を持つ人々の潜在力を解き放つ方法に焦点を当てた活動が紹介されています。
こういった取り組みは日本でも行われており、SONYANAなどグローバルな企業ほど対応が進んでいます。

ビジネス機会として捉えるアクセシビリティ

ウェブアクセシビリティの対応は一見コストでしかないように思えますが、DEIを重視する企業としてのブランドイメージ向上や、アクセシビリティ対策を施すことでより多くのユーザー層へ市場拡大できることなど、ビジネス上のメリットももたらしてくれます。
前述した企業もアクセシビリティ対応をポジティブに捉えて積極的に取り組んでいるように伺えます。

現在、世界では推定13億人が重度の障害を経験しており、これは世界人口の16%にあたります。また世界全体では、障害者とその家族が年間13兆ドル以上の可処分所得を有しているとの試算もあり、潜在的な市場規模はとても大きいということが言えます。["]["]
今後、高齢化人口も増加していくことを踏まえると、可処分所得はさらに増えていくことでしょう。

一方で障害者を含むサービスに注力している企業はわずか4%しかないとの報告もあり、まだまだ道半ばという状況にあります。["] これは見方を変えると、ほとんどの企業が手を付けられていない領域と捉えることができます。

サービス開発に欠かせないアクセシビリティ対応

すっかり「ウェブ」の範囲を逸脱してアクセシビリティの内容がメインになってしまいましたが、こうしてビジネス機会としてアクセシビリティを捉えてみると、AppleやGoogleなどが積極的に取り組んでいることが分かるかと思います。

アクセシビリティ対応は障害を抱えるユーザーが対象のようなイメージがありますが、基本的には全てのユーザーが対象となります。
例えばですが
・太陽が明るく降り注ぐ眩しい中でスマホの地図画面を見る。
  →コントラストを上げて地図を見やすくする。
・周囲の騒音が響く中でリモート会議を行う
  →外音をノイズキャンセリングする。指向性マイクで発言を拾う。
・音を出せない状況で動画を見る
  →字幕を表示する
など、状況によって一時的な障害が起きるときにもアクセシビリティ対応は活用できます。

このように、アクセシビリティ対応は結果的にサービスのユーザビリティを高めることにつながります。
一般的にユーザビリティの低いサービスは淘汰されていきます。障害を抱えるユーザーが今後も増えていくことを踏まえると、アクセシビリティが配慮されていないサービスは「使いづらい」サービスとなり、これからはどんどん淘汰されていくでしょう。

CSUNなど、アクセシビリティのソリューションに関する活動は積極的に行われていますので興味がある方はぜひご覧くださいませ。
CSUNは「アクセシビリティ」をキーワードとした最新の製品・サービスや取り組みについて紹介する国際会議で、毎年、障がいのある多くのユーザーはじめ、業界をリードするさまざまな企業や政府・有識者が集まっています。

ウェブアクセシビリティの具体的なデザインへの適用方法については、弊社の Masato Yamaguchi が投稿していますので、よければご覧くださいませ。


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