あるサクラナイツファンはどのように2020シーズンを楽しんだか
どこにでもいるサクラナイツのファンである。ファン歴はそんなに長くない。ファンになったキッカケは、去年にも似たようなことを書いたのでお時間に余裕があれば見て頂きたい。
内川選手、岡田選手、沢崎選手、堀選手、森井監督らについて知っていることはほとんどない。彼ら彼女らの考え方を深く理解しているわけでもない。薄くも理解できていない。
そんな単なるファンであるが、やっぱりサクラナイツを応援した2020年シーズンも楽しかった。
サクラナイツの選手たちが必死に闘牌する姿を見たかった。
そして何よりファイナル優勝を見たかった。
ファイナル優勝。
いったいどれだけの覚悟を持って、選手たちはその言葉を言うのか。2019シーズン、ファイナルで1勝すらできなかったサクラナイツのチームにとって「ファイナル優勝」は重い。
その重いところに向かっていく姿を見たかった。
勝負は時の運とはいえ、麻雀に真摯に向き合うところを見たかった。
チームメイトがチームメイトを鼓舞し、一つのチームとして強くなっていく姿が好きで、「スター」が「スーパースター」になっていくのをリアルタイムで見たかった。
というわけで、どこにでもいるサクラナイツのファンである。
2020シーズンはそれを堪能できて嬉しかった。この感情を時間が経過した後でも思い出せるようにnoteに記録することにした。
堀慎吾選手と、ぽりぽよ
堀選手が加入したとき、真っ先に考えたことは、「現在最強と思われている選手がサクラナイツに加入してくださった!」であった。まぁ昨年、サクラナイツのPVなど様々な形で応援してくださったこともあり名前を知っていた。
今思えば内川さんは天才であった。
その堀慎吾選手は、とあるサクラナイツファン(私ではない)の疑問に答える形で、ニックネームを岡田紗佳選手に命名されていた。
今思えば岡田さんも天才であった。が、その当時はとっさに堀選手や堀ガールズの方々の顔色を見た。流石に「ぽりぽよ」って呼ぶのは微妙かも?とは思った。
まぁ、それでも、どんどん普及していった。
私もおそるおそる「ぽりぽよ王」と呼ぶようになり、最終的には「ぽりぽよ~🌸」と気軽に呼べるようになった。あの沢崎さんが「まむたん🌸」と呼ばれるチームだから仕方がない。今から思えばさすがの岡田選手だった。
その堀さんの1戦目は3着だった。
「伝説効率」なる言葉を生み出されたけれど、オリ打ちしての放銃も印象に残った。対戦相手の黒沢選手は、天才を相手にしても徹底して黒沢選手であり続けた。さすがはMリーガー最強候補の一角である。ある種、Mリーグの洗礼めいたものを見せつけられた。
闘牌中の堀選手は所作も美しい。理牌の動作は気品があって、摸打の動作は流麗だ。そして表情も常に一定で、ずっと困ったような、憂鬱気な顔で怜悧な印象を受ける。そして優雅なまま、怜悧なまま、淡々と勝ちを重ねていく。
これがファンにして「王」と言わしめるのだなと思った。
圧倒的な王の存在感と、ポンコツ芸人のような「ふわっふわっ」した存在感を巧みに使い分けていた。
岡田選手はこれを予想していたのかもしれない。「堀慎吾のオシャレ化計画」くらいから「ぽんこつモードの時にやる、王のような言動」が素敵だった。
初トップの「ブレードどうして忘れたんですか?」から始まり、2021年2月の「私の誕生日のこと言ってくれなかったんですか?」まで、堀選手は意図的か天然かは知らないけれど2つのモードを上手く使い分けた。インタビューを受けることも多い堀選手だったが、渋川解説者からも「麻雀は強いけれど、インタビューは最下位」みたいなとても美味しいキャラと評された。
麻雀の内容に相当の裏付けがある、と分かったのは10月28日である。
堀選手が鈴木たろう選手の家に招かれての配信の時だった。麻雀の振り返り配信で、この時何を考えていたのかを饒舌に語り始めた。
漫画「アカギ」で「まるでこの世の成り立ちを説く高僧のよう」と、アカギが説明をする回があるが、まさにその姿だったと思う。
半荘2局を4時間かけて語っていた。しかも淀みなく。こんなに饒舌にトークできるんだ、普段は何だったんだと思ったのがこの時だった。
多分これを見ていた森井監督が、堀選手の振り返り解説を企画したのだろう。「堀慎吾の好きに言わせろ」からは、麻雀の「王」の姿と、時折繰り出される「ポンコツ芸人」の姿と、そして「伝説効率」「ハイタッチ効率」「弁当効率」なる最高のワードセンスを、MC森井が巧に引き出した。
7月27日時点では5000人弱だった堀選手のTwitterのフォロワー数が、10月23日には10000人を超えていた。
サクラナイツは10月の開幕週からまもなく全員勝利を遂げるが、そこから謎の不調に陥る。その中でチームメートから「今はどんどん出場して慣れることが大事」なんて言われていた堀選手が一人でポイントを支え続けた。
私には麻雀の真髄はわからぬ。わからないが、勝てば勝つほど堀選手は本当に強いと言われた。勝てば勝つほど「運が良いだけ」と謎の不当評価をされた去年のサクラナイツが嘘のようである。
ちなみに、あたしはMリーガーは全員強運であると思っている。
内川幸太郎さんのスペースでご本人に聞いてみたことがある。
「この時代に藤田晋さんがいて、森井巧さんがいて、先輩に身近なところで沢崎誠さん多井隆晴さんはじめ多くの方が、同期には佐々木寿人さんら多くの方が、そして後輩にも恵まれている、これは運がいいとしかいいようがないのでは?」と。
その解答を丁寧に書くのはなんかルール違反なような気がするが、肯定されていらっしゃったことは伝えても良いと思う。内川プロも尊敬する先輩に同じことを言われたそうだ。
Mリーガーは全員、強運すぎるほど強運なのであった。
対戦相手も相当に強運なのであった。
だからサクラナイツも簡単には勝てないのであった。
10月を終えてチーム成績は -64.3pt で5位である。勝ち頭は岡田選手、そこから沢崎・堀選手が続いて、内川選手が1-0-0-2という成績。コツコツとは少し違う様相だった。
11月は状況が悪化した。
チームのポイントは -238.3pt に下がった。去年チームのプラスポイントを一人で稼ぎ出した沢崎選手は、好局が2着止まりとなり、苦しい4着が増えた。今季多かったのは「毎局チートイツで耐えしのぐ」という展開だった。岡田選手は連対できなかった。昨年勝ち越した対ドリブンズにやられ返されている印象だった。内川選手も勝利は遠かった。堀選手だけが1着2回、2着2回と全連対しチームを支えていた。
6位フェニックスが0.2pt差、8位雷電が11.5pt差。アベマズ、風林火山、ドリブンズ、格闘倶楽部が抜け出している状態。参戦していない2018シーズンの中に突然放り込まれたような状況である。
12月1日、頼みの綱の堀選手の連投。
2着の後の2戦目、ついに連対を外して3着となった。
明確な黄信号である。
岡田紗佳選手と、おかぴー
Mリーグ2019シーズンが終わった時、誰もが思った。
「来年、サクラナイツのカギとなるのは、岡田選手の成長」
もちろん正しそうである。そして、ファンがこれを思うのは勝手である。
しかし、考えていただきたい。これを発言に残すと何が起こるか。
数千、数万のサクラナイツのサポーターは、岡田選手の成長なくしてはMリーグ2020は戦えないと言っているわけである。
その数千、数万の期待の言葉を岡田選手は受けることになる。
期待も積もれば呪詛となる。
育て・育て・育て・育て・育て・・・・育て!
岡田選手のプレッシャーたるや、想像に余りある。
しかし、岡田選手は常人ではなかった。
真面目で、芯があり、人の言うことに耳を貸し、そして何より、徹底的に負けず嫌いなプロ雀士だった。
10月29日は「あと1牌が押せていれば」というところで勝てない試合となった。ダブルリーチが決まらず4位になった試合もあった。もどかしい日々は12月になっても続き、滝沢選手とスリリングな上がり競争をするも、2着止まりと苦しい日々が続く。
そんな岡田選手の久々のトップは12月14日だった。
相変わらず連盟女流には強い。というか高宮まりさんには滅法強い。きっと岡田選手はよっぽど高宮選手の顔が好きなんだろうと勝手に思っている。石橋選手が後に「蛮勇」といわれた大三元に対するリーチの局、巧にトップをとったのは岡田選手だった。
いつの間にか、岡田選手に新しい二つ名がついた。
「サクラナイツの切り込み隊長」
サクラナイツの苦しい場面、チームに勢いが欲しい場面を、岡田選手が積極的に任され、道を開く役割を担うようになった。
ポイントは僕が稼ぐから楽しく打っておいで、と沢崎さんに言われて戦った1年目。夢我夢中のまま準決勝で勝利し、夢我夢中のまま決勝に行き、そしてチームが4位に沈んだサクラナイツの1年目。
そこから岡田選手は明確に強くなった。
岡田選手が強運だとするなら、岡田選手のチームメイトが内川選手という牌理を教えるのが上手い講師であり、堀選手という読みを言語化するのが上手い講師であり、沢崎選手という勝負術をアドバイスするのが上手い講師だったことだと思う。貪欲に成長したい岡田選手は学びのチャンスを最大化した。(と、勝手に思っている)
これは強運だとしか言いようがないから、岡田選手は強運である。
岡田選手の麻雀は実力である。
岡田選手は【人気モデル・岡田紗佳のもう一度見たいMリーグ】を東京スポーツ紙に連載されている。これが、結構な内容である。全選手のことを研究されていて、全選手にとってプラスになることを、その時に同卓した対戦相手にも損にならないように丁寧に言葉を選んで書いている。天然で面白い堀選手のワードセンスとは違って、プロフェッショナルのワードセンスと感じる。
岡田選手は、サクラナイツオンラインPVのときも全力だ。サクラナイツPVは、無言の時間が少ない。岡田選手が控室にいるときは会話が途絶えない。何を言っても、「岡田選手」というより芸能人「おかぴー」がきっちりツッコミを入れてくれるからである。沢崎選手も堀選手も安心して冗談を言いたい放題である。
関西で放送された「今田耕司のネタバレMTG」を見られた方は、おかぴーの「平場のトーク力」を見たことがあるかもしれない。芸人がやるような裏回しやガヤを全力で振り抜いている。これができない人はアイドルであっても関西のバラエティ系情報番組には呼ばれない。
その力でサクラナイツのPVをやるんだから、PVがべらぼうに面白い。きっちり「番組」になっている。麻雀は切り込み隊長だけれど、PVに関して言えば守護神である。
12月もサクラナイツは一進一退の攻防が続く。
12月4日。安斎瞬プロのツイートが僕の中で話題になった。
ウヒョ助先生が注目し、fuzzカップで堀慎吾プロが天才性を認めた協会の未来を担う俊英、そして割と自他に厳しそうな安斎プロが岡田選手をまっすぐに褒めた。その日のオンラインPVの少し前、ファンコミュニティ向けの限定PVでそのことを認知されているように語られていた。
12月7日には沢崎選手が会心のトップを決めた。萩原選手と技のかけあいになったと思われたが、さすがにここは滅法強かった。反対に堀選手が久々のラスとなり、歯車の噛み合わない時間が続いた。
そんな中、サクラナイツは沢崎選手の提案で今年の運命を大きく変える重大なイベントを行う。
神田明神への参拝。
サクラナイツの2020シーズンを語る上で欠かせない一大イベントは12月10日のお参りだ。堀選手もおっしゃっていた。「チーム戦、何かを変えられるきっかけであれば、すべてやった方がよい」
その日、内川選手の連投となった。
1着 96.7pt。
2着 3.1pt。
素晴らしい内容だった。
素晴らしかった内容以上に、チームに欲しかったポイントを、およそ100ptほど勝ち取ってくれた。
先述の12月14日の岡田選手のトップが続き、12月18日は、魔王の猛追を横移動でかわした堀選手、そして村上選手とのツモ合戦を制した内川選手が上がり切って2連勝となった。まつかよインタビュアーがお休みで伊藤友里インタビュアーが代役を勤められたこの日は、今季初となる2連勝だった。
こんなに実感のある言葉を僕は知らない。チームは7位から4位に浮上、コツコツと返済した借金は-182.5ptから-65.3ptとようやく地上が見えてきた。
12月25日。サクラナイツの年内最終戦は、沢崎さんが四国にいって「愛弟子」武田雛歩プロと麻雀イベントにお出かけされた日だ。1戦目は岡田選手で、ほとんど発声すらしない割には最後にちょっとだけ幸運があった3着に終わった。2戦目は内川選手の登板だった。東1局から3局連続和了して、大きな振り込みもなく年内最終戦は盤石のトップだった。
ちなみに岡田選手のPVに「ハズレ無し」を象徴する場面がここ。
逆フラグをたてる堀選手が「もう諦めた」を連呼しているのを、岡田・森井コンビがうまく番組にしているところも最高なのだけれど「こんなの諦めてなかったらツモられてますからね」「あきらめてよかったー」という複雑な日本語が成立しているのすごい。
あと岡田選手の「どうした……トリィ」
が最高。これで年を越せるとみんな喜んでいた。
年があけて1月2日。
この日の主役はなんといっても堀選手だった。
四暗刻の美しさもさることながら、ツモった時の手付きと「16000は16100オール」の声のまるで500オール上がったようないつもの声。
パワーを送るために立ち上がって……
堀選手よりも先に「カン!」の声。結果はご存知の通り。
この時、サクラナイツファンとのお約束で感謝のスクワットをする若手(監督含む)3人の姿が見られた。赤スパってなかなか消えないんですね。
内川幸太郎選手と、うっちー
内川幸太郎選手の麻雀の特徴はオーソドックスな所、と言われていたが、まぁオーソドックスな麻雀なら誰でも勝てるのかといえばそういうことはない。昨年、沢崎選手と同じチームということがものすごく勉強になると言っていたし、鈴木たろう選手の麻雀が好きで、その影響を一番受けている堀慎吾選手と同じチームということがものすごく刺激になると言っていた。この方も、やはりファンの見えない所で、相当の研鑽をされているのだろう。萩原聖人選手のインスタグラムでも「苦労人」と言われていた覚えがある。
このユニフォームも懐かしい。
1月4日に年をまたいでの連勝を決めた内川さん。そこから2着3着と一進一退が続く。沢崎さんが1月7日に久々の連投を2着3着と、去年少なかった3着が目立つ展開となる。1着か4着かという麻雀ならわかりやすいけれど、3着が多いのは苦しい証拠なのかもしれない。ここに来て、明確に不運というどうしようもない何かがやってきていた。その割にA1リーグでは首位に居続けていたので、ご本人も首を捻られれていたことだろう。
サクラナイツファンが快哉を叫んだのは1月28日だった。
オーラス、1着2着の点差が700点、3着4着の点差が900点というシビアな状況での値千金の1000点で逆転トップを決めた第1戦。
そして平和一通赤ドラを決めて5本場と供託1を持っていったのが決めてとなった第2戦。
勝手な印象だけれど、内川選手が一気通貫を上がっているときはなんとなく勝っている気がする。十段戦の時からそれをずっと思っていた、と書けば内川ファンはニヤリとされるだろうか。蛇足ついでに、南1局7本場で見事な満貫ツモを見せた朝倉選手が2着。朝倉選手もイケメンなんですが、イケメンを意識している時よりも無造作にイケメンを見せてくるときが強い怖いカッコイイというのはまたの機会に。
そして1月末。この日、久々にサクラナイツが地上に返り咲いた。
内川選手は12月、1月と連続での区間賞となった。
2月8日、プレイヤー解説の多井選手が、岡田選手を絶賛されていた。多井選手は現代の第一人者でもあり、そして、全ての登場選手が決して損をしないような解説を心がけられている。選手を活かすも殺すも解説である、という事を熟知されているようだ。岡田選手は難しいところも見事にかいくぐってトップ、チームは32.3pt、そして2位に浮上した。
2戦目はエースがエースの仕事をした。内川選手がオーラスに競り勝って、サクラナイツは連勝する。その週の後半は、沢崎選手が一時はトップに浮上するも、亜樹選手の箱割れ寸前からの大逆襲という不運があり3着、そして最後に逆転条件の三暗刻を決めての堀選手のトップ。
チームは週間トップとなった。
この頃からサクラナイツに言われだしたものが「叙々苑弁当」である。サクラナイツは健啖家が多い・・・というより皆、肉食系。「叙々苑弁当!」とチームで合言葉のように言い出すのにつれて、ファンも「これで叙々苑弁当ゲット!」と言い出すようになった。叙々苑弁当は高いヤツは本当に高く、本当に美味しい。美食家でもある四人はわちゃわちゃいいながらお弁当を食べていた。
他のチームが「セミファイナルに進む条件」を必死で計算している中、サクラナイツとサポーターは「叙々苑弁当!」とだけ叫んでいれば良くなった。これは非常に嬉しかった。ファンは難しいことを考えようと思えばいくらでも考えられて、最悪の自体とかそういうのも考えられて、森井監督になったつもりで采配を考えられて、まぁ何でも考えてしまうのである。
しかし別にファンは、アドバイスなんてできやしない。素人たるファンが「副露率オチてます!上げていって」とか邪魔以外の何物でもないだろうというのは素人でもわかる。「これ以上ないほど頑張っている選手たちに、さらに『頑張ってください』なんて声をかけていいのかどうか」を考えだしたら沼である。
ファンにできることは、この大好きなサクラナイツの人たちを笑顔にすることくらいである。元気いっぱいにすることだけである。
元気いっぱいにするためには、美味しいものを食べさせるというのは一丁目一番地。というわけで、鈴木たろう選手の言葉を借りれば「母の気持ち」で「あたらしい叙々苑弁当資金よ」とばかりに、どこかの人は3971円をスパチャし続けたらしい。
まぁサクラナイツの人たちが美味しそうにご飯を食べているのを観るのが好きなのである。みんなこのときは良い笑顔なのである。『本当は岡田さんのご親戚の焼肉屋さんに集まってみんなでオフ会できればよかったけれど、コロナでそれも難しくなってしまったな……』とか何とかそういうことを考え出せばきりがない。
考え出せばきりがない。
きりがないけれど。
焼肉弁当は美味しいのである。
ファンはこの人達の笑顔を見たくて応援しているので、その人達の笑顔が見られる叙々苑弁当をゲットできるように応援していくぞという気持ちだった。
「弁当効率」
サクラナイツのPVを見に来られたMリーグ成績速報(非公式)さんによって発掘されたその魔法の言葉は、またたく間にサクラナイツファンの共通認識となっていった。叙々苑弁当を獲得し続けるということは、週間トップを取り続けるということである。
だから、「叙々苑弁当」と言い続けることで、セミファイナルにもいけて、ファイナルにもいけて、気がつけば優勝しているかもしれない。この世に言霊があるならば。そういう魔法のコトバ「叙々苑弁当」と叫べばファンも不思議と勇気がもらえた。
ちなみにサクラナイツで弁当の話が言われるようになったのは10月。
森井監督「開幕2週間でトップ4回は、これはもしかしたら、叙々苑弁当効果だったかも・・」
内川選手「叙々苑弁当を食べた直近の試合だけでいったら、僕と堀さんはトップとってますからね」
(中略)
内川選手「(スペシャルマッチで)勝ってくれたら毎月届いたんだよな…」
「鳴かせてくれない上家」さんの古日向先生、更伊先生も差し入れてくださっていましたね。
なお、叙々苑弁当を毎週差し入れされることに対して、岡田選手から無言の圧が飛んでいたのもこの頃だった。
2月22日に「王牌が強い」と言わしめた岡田選手の2着を受けて戦った堀選手がトップとなった。2月25日に園田選手に惜しくも競り負けた堀選手の2着を受けて戦った内川選手がトップとなった。
内川選手のすごいところはファンの言ってほしいことを言ってくれるところだと思っている。それは、人気者の「うっちー」の姿なのかもしれない。
インタビュー30位といわれた人がチームにいた気もしたけれど、内川さんのインタビューは本当に見事だった。岡田選手が「うっちーまじめだなぁ」とPVで語っていた。本当に、大事なことを全部言ってくれたと思っている。
内川選手のえらいところはちゃんと王子様をしてくれるところだと思っている。これも人気者の「うっちー」の姿なのかもしれない。サクラナイツの「王子様」という、なかなかのキャラクター設定を、何のためらいもなくこなして、ブレードで決めポーズを真顔でやってくれる。
マジ話もするし、冗談も言うし、優等生なことも言うし、ちょいワルなことだって言うかもしれない魅力がある。内川さんがスペースを開かれるたびに、今日は何を言うんだろうという魅力もある。
そして、「内川幸太郎選手」と「うっちー」の間に別人感がない。
岡田紗佳選手と「おかぴー」、堀慎吾選手と「ぽりぽよ」には別人感がちゃんとある。内川幸太郎選手と「うっちー」に別人感はあまり感じられない。
影武者が3~4人いるけれど、その影武者とも楽しく遊んでいるようだ。スパチャで「面白いんです!」と言われたら雷電ポーズも決めてくれる懐の深さもある。かといって、直情径行な感じもするときがある。
というわけで、ウチカワンヌは増えていくんだろうなと(内川さんのことは全くしらないけれど)勝手に思っている。
沢崎誠選手と、まむたん
今年の沢崎ファンは辛かった。
たぶん沢崎さんご本人はもっとだろう。
なにせ「あっピンフのチャンス手だ」「役牌ホンイツ赤で満貫が見える」みたいな配牌があまりない。「ドラドラだけど遅そうだ」「なんとここで役牌が持ち持ち」で苦しくチートイツに向かう姿を何回も見てきた。
勝てるときはポイントで、勝てないときは応援で。フォアザチームの姿にレジェンドの高貴さを見せられる思いだった。聞けば、チームの人達が調子よく打てるようにずっとサポートに回ったそうだ。
1月13日の沢崎選手の誕生日祭りの時も、沢崎選手は大人気だった。Abemaの応援ポイントは32,000ptを記録していた。10,000ptでもらえる「おでんセット」と30,000ptでもらえる「おでんを作る鍋」がプレゼントされると聞いた。そういった些細なことがきっかけで、沢崎選手の運気が上昇してくれたらいいなと思っていたファンも多かったと思う。僕もそうだった。
それを、チームのために、チームメイトの叙々苑弁当に変えてくれた、とも聞いた。ご本人は「おでんの季節ではないので」と仰っていたけれども。
チームが摂取不足しがちなビタミンを、イチゴなどの果物を差し入れてくださっている、と聞いた。
誰よりも早く、試合19時なのに16時30分頃には会場に現れて、サクラナイツの控室のブースに暖簾をかけてミカンとお菓子を置いてリラックス環境の造作をされている、と聞いた。(それを知っているのは藤沢監督くらいのものらしい。その頃、藤沢監督は盛り塩を作っているから)
大黒柱・沢崎誠選手が不調であっても、サクラナイツは負けない。それが沢崎選手の闘牌中とは別の顔、「まむたん」の姿だった。
沢崎選手には公式記録に残るような「偉業」がたくさんあれど、選手やファンの間の口から口に語り継がれるような「偉業」も多い。これだけ長いプロなのだから、ご本人が知られない所で様々な「偉業」があると思うし、「えっ、そんなのが偉業ですか?」とご本人に言われるような「偉業」もたくさんあると思う。こういう類の話はご本人が訂正するような話でもないと思うけれども。
その「偉業」の中でひたすら異彩を放つのは、「十段戦で対戦した藤崎智プロの才能を見抜き、東北から東京に招き、仕事や食事の世話をした」と思っている。
藤崎さんが30歳。沢崎さんが43歳。藤崎プロは後に鳳凰位・十段位を制されてその活躍はご承知の通りだ。だが、このような決断を、この年齢で行うのって相当のことだ。簡単な話ではなく、もっと様々な登場人物もいるのかもしれないし、その時の状況やお気持ちも含めて、詳しくはやっぱり僕には分からない。
だけれども、自分ではなく、人のためにしたことが「偉業」と伝えられるのは、沢崎さんらしい話だなと思った。ほんの数年後の内川選手や堀選手が「一回り以上年下プロの才能を認めて地方から上京させる」ことがあったとしたら、おそらく大ニュースになると思う。そのプロが鳳凰位や十段位、あるいは雀王や雀竜位を制覇されたら尚更だ。それをやったのが沢崎さんと藤崎さんだった。
そんな沢崎さんだから、麻雀が不調でも、チームが好調になるように尽力された。チームが暗い雰囲気になるのだけは全力で避けた。「300沈んでいるやつがニコニコしてたら笑うしか無いでしょ」は名言だった。だからサクラナイツのPVは常に明るかった。
1ファンとして私見(に見せかけた僕の願望)を言えば。
沢崎選手をきっかけとしてサクラナイツを応援するようになったのだから、沢崎選手には全戦全勝して欲しい。しかし、麻雀という競技ではいかに名人であっても難しい。
後に、BOOK☆WALKER×サクラナイツコラボという企画があり、沢崎さんがおすすめの書籍として「信長の原理」を取り上げられる回があった。
この「信長の原理」の話の中で、柴田勝家は「百戦して百勝する武将など、この世に存在するものか」と語っている。織田信長は「そもそも戦の勝敗に、絶対などない。だからこそ、考えうる限りの万全の準備をして戦に備えるのだ。それでも、必ずうまくいくという保証はない」と語り、「勝ちの確率を高めるだけ高めて出陣しても、わずかに残っている負けの確率にひっくり返されることもある。しかし、その危険を敢えて冒し、捨て身で戦った者にしか、勝利という果実は捥ぎ取れないものだ」と語っている。
この言葉が沢崎選手のお考えに沿うのかどうかは知らない。
知らないが尤もだと思った。
さらに1ファンとして私見(に見せかけた僕の妄想)を言えば。
今シーズンのマイナスの成績はもちろん沢崎選手はご納得されるはずもないと思うが、そりゃ相手も一流どころのMリーガーたち。無策で2020シーズンを迎えるはずもなく、「対沢崎」はオフシーズンに練ってきたに違いない。
一方で、沢崎選手がそんなに簡単に対策されてしまうような選手であるならば、日本プロ麻雀連盟のA1リーグを主戦場として戦い続けられる理屈が説明できない。対策しにくいプロ雀士の一人であることは疑いようがない。
不調の原因は多分いろいろあるのだろう。単純に運気の問題もあるだろう。いろんな人がいろんなことを言えるのだろう。が、それが正しいなんて保証はどこにもない。
こう考えたら「説明がつく」というそれだけである。
沢崎さんはきっとそういうところ以外に理由を探すだろう。
まぁ、1ファンが考えたことだけをメモしておく。
沢崎さんの不調の原因は、心技体のバランスではなかろうか。
体とは体力。体力づくりに余念を欠かさないのが沢崎さんの根幹である。趣味お散歩は伊達ではない。技とは技術。プロの勉強とは技術の習得と明確に語る。心は技術を組み合わせることになるだろうか。一つ一つの技術は部品、その部品を磨き、組み合わせることで機械は構成される。闘牌中に怯えず震えず侮らず。明鏡止水のような心はメンタル強者とも言われる。
相手の手の動き、視線、呼吸、熱量、打牌時間、卓上に露出するありとあらゆる気配を、体力気力の限りセンシングして、それを解釈する個々の技術を組み合わせて脳に情報という形でインプットして、心でもって大局を観てテーマに沿った最善手・勝負手を探す。心技体の極地である。Mリーグ初年度、心技体すべて充実した沢崎選手はライバルを圧倒した。連盟プロなら誰でも憧れるという沢崎選手の姿がそこにあった。
その歯車が狂い始めたのはコロナ禍が社会問題化してからである。
2020年2月にサクラナイツPVに来場された方からも(その1ヶ月以上先となる4月の話ですが)感染者が出て。
そしてMリーガーの中からも複数の「感染が疑われた方」が出た。
幸い、大事には至らなかった。若くて健康であったことが大きいかもしれない。一方で、沢崎選手は(ファンも意外と忘れることが多いが)決して若くはない。基礎疾患について伺ったことなど無いけれど、あると言われて不思議はない。コロナ感染のリスクは他の選手とは全く違う。Mリーガーの中でコロナに感染した時のリスクが最も高い選手は?と聞かれたら、そりゃ申し訳ないけれど沢崎選手になるだろう。
もし「PCR検査が陰性だったけれども、実は感染していた」選手がそこにいたとしたら。もし対面の選手が「咳」をした瞬間に、自分が「世紀の死病」に感染するかもしれないとしたら。
なので「体」は自動的にコロナに備え、「心」も自動的にコロナに備えた。そういう状態だった。もしMリーグもマスク着用だったら何か変わったかもしれない。(逆に呼吸ができなくて大変な選手もいたかもしれない)
というわけで、沢崎選手の不調の原因は「コロナのせい」と誰もが三秒で考えつくような妄想にそれらしく理由をつけた。「コロナは原因の一つかもしれませんが、どうでしょうか?」と言われそうである。私は全く面識がないが勝手にそう思っている。「チームメイトのフライデーが原因です」と言われたら、これから群馬の方向に土下座する。
3月2日には、沢崎さんが待望のトップをチームにもたらした。この時の、近代麻雀Webの記事は最高だった。
「俺たちの間には、卓と麻雀牌しかなかったよな」 盟友・前原との息詰まる熱戦を、沢崎誠はどう切り抜けたのか【Mリーグ2020観戦記3/2】担当記者:ZERO
沢崎さんと前原さんの人間関係も僕は全く知らない。だけれども、何年も戦ってきたことは知っている。その背中を見てきたと内川選手も語っている。そしてMリーガーの中でゴジラの強さを一番知っているのが沢崎さんだということも知っている。ファンも気持ちの半分は沢崎さんを、残り半分は前原さんを、思い思いに背中を応援していたのだと思う。最後まで勝負勝負に行って、危険なところまで攻め込んで、放銃になったけれどもそれでもトップという沢崎選手の良いところがたくさん出た。
2戦目は、チームでお見送りした時に堀選手に「まだレギュラーシーズンをプラスの成績になるのは早い」といわれ「みてろやー!」と言って出場した岡田選手だった。相変わらず高宮まり選手がいるときは強いと思ったけれど、魚谷選手のリーチに押し返して親満を決めた後は、山読みの精度の高さが話題となるようなリーチを決めた。岡田選手の充実ぶりがよく見える展開だった。
その状況を裏3の倍満ツモで覆した黒沢選手は相当だったけれど、親被りで8000点を失った岡田選手が8000点を取り返したのも見事だった。ここにきて、「牌理は岡田式内川流、読みは岡田式堀流、勝負術は岡田式沢崎流、リーチ精度は伝家の宝刀・本家岡田流」のような、プロがトッププロに進化を遂げていく姿をみているようだった。
レギュラーシーズンは終盤に差し掛かり、ドラマティックな場面が多く見られるようになった。近藤誠一選手の一世一代の倍満ツモ逆転トップ。黒沢選手のフリテン満貫ツモ逆転トップ。2020シーズンを代表する名場面である。どちらも名脇役が園田選手になってしまっているのは申し訳ない。
そしてサクラナイツも3月12日にレギュラーシーズン最終戦を迎えた。
チームとしてもリーグとしても最終戦である。
MVPを目指して1戦目に内川選手が登板した。前年度MVPの魚谷選手、前年度ポストシーズンMVPともいえる石橋選手、そして首位アベマズからは白鳥選手が登板した。この試合は、それでも白鳥選手が大きく勝った。フェニックスは後がなくなり、パイレーツは35700点条件のトップという現実的な点数を残して小林剛選手にバトンタッチした。
もちろん、フェニックス・パイレーツのサポーターにとっては大一番である。一方で、首位アベマズを追撃する立場の2位サクラナイツとしてもポイント差は取り返しておきたい。そういう最終戦になった。
南3局、現在2着目27500点の小林選手からリーチが入る。その後、国士無双気配の近藤選手が無筋をプッシュする。
親リーチと国士無双に挟まれた時、Mリーグの放送とPVのカメラはこれを捉えていた。
笑ってはいけないけれど(と監督もおっしゃっていた)当たり牌を持っていないからこそ面白い。もっと最高の笑顔はあるので、気になった方はこの時間帯を探していただきたい。
次局。横のチームから悲鳴が聞こえる。パイレーツの控室なのだろうか。岡田選手が口元を抑えた。いつもなら「5200は5500」とだけ言う内川選手が、珍しく語尾に「です」をつけて「5200は5500です」と点数申告をした。オーラス、ひとつ意地を見せた近藤誠一選手の次の局。
内川選手が先制リーチ。親の近藤選手が鳴かずから役牌を暗刻にして有効牌を引き入れてのリーチ。フェニックスにとっては奇跡の連チャンを、パイレーツにとっては横移動をひたすらに願う場面。
静かに内川選手が自摸和了した。
そしてMリーグ2020レギュラーシーズンが終わった。
……終わっていなかった。
「あれ?これ変わったんじゃない?」
週間トップは叙々苑弁当である。
算数の得意な堀選手が「勝った!」と言い出した。かなり微妙な数字のようだ。Mリーグ成績速報(非公式)さんのツイートと「追っかけ再生」した本日の試合のポイントを何度も確認した。震える手でエクセルに入力して計算した。109.6vs106.3。どうやら週間トップだ!
森井監督「やったー!」
ちなみにこの回、小林選手のインタビューの際に、全員が座り直した。いつも賑やかなサクラナイツもこのときはインタビューに見入った。31戦してラス1回のラス回避率という異次元の成績が紹介されて、感嘆して、そのタイミングでいつもの空気に戻った。
内川選手は小林選手のコメントに素直に感情を抑えられず、そして敗れたチームの分まで「ファンの皆さんを、楽しく、熱く、させていきたい、最後までご視聴の方をよろしくおねがいします」と抱負を語った。Mリーグの主人公の一人である、好青年のうっちーの感情が出ていた。
雀力的には大丈夫、トップ取るのも大丈夫、でもあのコメントはできない、と言う堀選手に、いつものように岡田選手が突っ込んで番組はきれいに終わった。サクラナイツは2位 497.3pt。3位のドリブンズ(-3.2pt)よりも、首位アベマズ(654.7pt)の方が近い、堂々たるレギュラーシーズン通過だった。
セミファイナルと、ファイナル
チームポイントは半分持ち越すので、トップとは80pt差。
4月12日の初戦を任されたのは岡田選手が3着、2戦目は堀選手が28800点持ちでトップを持ち帰った。
4月16日は今季セミファイナル初となるオンラインPV。
レギュラーシーズンからセミファイナルの間も色々あった。日本プロ麻雀連盟では桜蕾戦・若獅子戦が行われていて、中田花奈プロの活躍が話題になったし、この短いプロ歴でも大本命とされた岡田紗佳プロにあったアンラッキーな出来事にも悪びれない凛とした態度は語り草となった。
そして堀選手もイベントで松山を訪れていた。その時に持ち帰ってきたのがサクラモチジンベエザメのぬいぐるみである。
出陣前、サクラモチジンベエザメの口に手を入れた堀選手は。
東1局、跳満12000点。東2局、満貫8000点。親番でテンパイ、親満4000オールは4100オール、2900は3500。流局2回の後で満貫2000-4000は2500-4500供託1、3900。南1局まで完全なパーフェクトゲームだった。
松本選手にかわし手でドラが鳴かれてオりるという焦れったい展開が続き、丸山選手に勝負手が上がれない、そしてテンパイが入る直前に切られた牌が堀選手に放銃になるという不運が続き。
終わってみれば77000点持ち帰っての連勝を決めた。縁起の良いサクラモチジンベエザメはネーミングセンスSの岡田選手が「もちぽよ」と名前を決めてくださった。
沢崎選手だけが苦しかったが、それでも沢崎選手らしい好プレイは随所に見られた。4月19日、瀬戸熊選手、藤崎選手、滝沢選手を相手に、前年度と同じように「ビタ止め」を見せた。瀬戸熊選手への親満放銃を回避するとともに、4着目の藤崎選手へ打ってはいけないというテーマを守るとともに、視聴者は滝沢選手のノーテンを読み切っての着落ちを守る見事な麻雀に見えた。だから「ファイナルになると復活するだろう」と誰もが思っていた。
岡田選手のトップは4月22日。前原選手の先制リーチ、黒沢選手の追っかけリーチを受けての親リーチを決めてリードを奪うと6回上がり倒して、最後にはダブルピースをきれいに決めた。「サイレンススズカのように逃げてきた」は語りぐさとなった。
このチームはいつも笑顔が多いチームである。この笑顔の裏で、選手たちがどれだけの思いで戦っているのか、僕は全く知らない。全く知らないけれど、ファンに姿を見せるサクラナイツは常に明るかった。
セミファイナルの最終週は、エース指名を受けた内川選手が全連対、2着2着1着と抜群の安定感を見せた。恒例のセミファイナル最終戦はPVがあった。セミファイナル通過をほぼ決めていたから、幸せな感じで見られるPVだった。
滝沢選手が痛恨のラスでいきなり条件が動く。厳しい条件の勝又選手の最後の親番に、園田選手からのダブルリーチが入る。「EX風林火山解散」という最大の危機が迫る。南3局の堀選手の親番、そしてオーラスの勝又選手と多井選手の牌の対話。そして残ったのは、首位アベマズ、サクラナイツ、ドリブンズ、EX風林火山の4チームである。
5月の連休では、EX風林火山とサクラナイツの合同イベントが開催された。EX風林火山スポンサー様のまんまるハウスの二宮さんは、ウヒョ助先生に似顔絵色紙をプレゼントされたことで社長想いの社員との絆が話題になっていたし、サクラナイツのスポンサー様のクレイジートランポリンの伊藤さんの麻雀のレベルの高さは衆目一致するところであった。なんしゅう家様のゆーくんさんは随所に勝負強さを見せて、「鳴かせてくれない上家さん」原作者の更伊先生は解説の勝又プロから絶賛されていた。
別の仕事を終えた内川プロが合流し、最後は実況が松嶋さん、解説が勝又プロ、堀プロ、内川プロという超豪華な決勝卓が放送された。
更伊先生がダブ東を2枚重ねてドラ2。そのキー牌の東を先切り間に合わせたのは森井監督。堀選手「何やってんだよ森井さん!」と、サクラナイツはなぜか監督がこんな感じで言われるということに、EX風林火山のサポーター様は驚かれたかもしれない(し、Mリーグの解説時とは全く違う堀プロに驚かされたかもしれない)けれど、こういう交流は素敵だった。
勝又プロが更伊先生が絶好手の時に「親を蹴ろう」と森井監督を応援しはじめ、堀プロと内川プロが「森井さん何もしないで」と、言われていた。最後は「フリテン?まずいですよ気づかずにロンと言っちゃうかも」みたいなとんでもない空気になっていた。極めつけは、
勝又プロ「上家は鳴かせてくれないから」、内川プロ「まさかの下家からのチー」という伝説の場面は3時間14分くらいからご再生を。
連休を開けて、いよいよファイナルが始まった。
5月10日の1戦目。サクラナイツは切り込み隊長、岡田選手を投入した。2019シーズンでは「起用を決めすぎていた」ことを最大の反省としていた森井監督は、柔軟に、チームに勢いをもたらす選手を起用した。岡田選手の跳満3000-6000から始まった試合は、南2局に満貫2000-4000を決めて43800点。レギュラーシーズンなら安泰かもしれないが、さすがに条件戦だった。丸山選手の跳満3000-6000を親被りし、そして勝又選手が松本選手から親跳18000を和了。最後は700点差の上がり合いを、サクラナイツにだけはトップを取らせない姿勢の松本選手と、絶対にトップを持ち帰りたい岡田選手の対決を制した松本選手がいた。試合は勝又選手がトップとなった。
岡田選手、2019シーズンに続いてファイナル初戦を2着で帰ってきた。さすがに相手を褒めるべき展開ではあったけれど、トップ取りたかったことは言うまででもない。ただ、サクラナイツというずっとファイナル優勝を目標としてきたチームの、大事な大事なファイナル初戦を任されて、勝利を期待される選手になっている、ということは岡田選手に伝えたかった。特に去年の岡田選手に伝えたかった。
ええこと言うてますやん僕と自画自賛したけれど、実際にはいろんな人達が、思い思いに岡田選手のファイトに魅せられて、感動を伝えていた。(それを貼って良いのか分からなかったので、手前味噌となりますが自分のコメントですみません)
私のコメントなんて当然霞むくらい、チャットのリプレイは岡田選手を応援する優しい声で溢れている。森井監督が作ったチームが、優しいファンの方々に愛されて、Mリーグに優しい、良い空気を作っていると勝手に思っている。
その2戦目、サクラナイツも2着だった。内川選手から安牌がなくなる。実況の日吉さんがまた叫ぶ「西はいやだ!西を打ちたくない!」解説の佐々木寿人プロから冷静にツッコミがおりる。内川選手の表情はまた強張っている。
この時、比べようがないけれど、ドリブンズの控室は「そんなのないから西だから」といった印象(まぁドリブンズは園田選手が勝負リーチをしている側、間違っても白鳥選手に2sをオリ打ちはしてほしくない)だったが、まぁサクラナイツの控室はいつもの通りの笑顔だった。西を切って放銃回避したときの笑顔たるやである。
1戦目終わって2着2着。サクラナイツにトップはなかったが、チーム差は急接近する。
ファイナルは短期決戦。翌5月11日も試合がある。沢崎選手の先制リーチに対して亜樹選手が追いかけリーチ、カン4mに一発放銃といった不運な出来事もあり3着。トップは日向選手だった。
堀選手を獲得した瞬間に、ファイナルで堀慎吾選手vs鈴木たろう選手が来ることを想像した二人のファンは少なくないと思う。その夢の決戦は南1局まではラス目だった多井選手の巻き返しを受けて、連対を決めたアベマズがまた突き抜けた。
5月13日はまたサクラナイツはオンラインPVを開催した。一巡したこの日は、岡田選手が再度の登板となった。
1戦目、いきなり重要局面が訪れる。東1局の親番の白鳥選手の三元役模様の手配で、發をポン。白が岡田選手から打ち出されてポン。
去年2019シーズンのファイナル第5戦を再現するような展開が、奇しくも2020シーズンのファイナル第5戦でも再現された。2019シーズンは、2種類目の役牌を岡田選手からポンした朝倉選手が大三元を和了した。親の大三元16000オールは決定的な展開だ。サクラナイツファンにその苦い記憶がよぎった。岡田選手も脳裏を掠めたかもしれない。(内川選手や沢崎選手はそんなことサクっと忘れれているかもしれない)
白鳥選手は2役が確定して手の中には赤とドラ。親満12000点の状況で、これは不要と中を切り出した。次順、中をツモ。数順後、また中。痛恨の大三元逃しだった、とは言えこれは結果論だろう。ただ、サクラナイツは救われたと思った。それくらい、サクラナイツファンに去年のトラウマは残っていたのだと思う。
そのトラウマを払拭してくれたのは、2戦目の堀選手だった。
苦しい展開で、村上選手のリーチを早い段階でのリーチを受けた。それに一切引かずに四暗刻形にせずに両面リーチを放つと一発ツモ。嬉しさのあまり一盃口という役を忘れるというめったに無い場面が見られたが、堀選手は倍満4000-8000を決めた。南3局では村上選手のリーチに親として勝負にいった松本選手が痛恨の12000放銃、横移動という展開もあり、そして最後は点差がわずかとなった展開で滝沢選手が高速に聴牌を入れ、堀選手が差し込んで村上選手・松本選手の逆転手を消すという展開だった。
サクラナイツ、1年後越しのファイナル初勝利である。
長かった。実に長かった。ファイナルに勝てない呪縛は、サクラナイツが優勝するために獲得した堀慎吾選手によって断ち切られた。
「タッキーイケメン!」とオンラインPVで声が飛んだ。すかさず「タッキーイケメンだけど、堀さんのことイケメンって書いとかなきゃ!」と岡田選手のアンテナはついにファンにまで飛んだ。「堀選手イケメン」の声であふれた。堀選手のイケメンなインタビューに期待する声も飛んだ。堀選手の「嬉しいです」はファンに認知された名物になっていた。一番嬉しかったのは「マツからの村上さんへの横移動」と語っていた。沢崎選手は「結構正直だねw」と笑っていた。
アベマズとトップラス。この結果は大きかった。
ファイナル12戦の半分を終えて、マッチレースの様相を呈してきた。
5月14日。このトップをとった堀選手が日をまたいでの連投。好調者を積極的に使っていく森井采配が見られる。トップの日向選手が清一色イーシャンテンになった際の牌を討ち取って、堀選手が親満12000点を決めて接戦を演じたが、最後は勝又選手が逆転のトップとなった。
1戦目負けた後のサクラナイツは内川選手の登板となった。打ち合いではないジリジリした展開が続いた後で、最後は横移動で決着となった。
8戦目が終わった。サクラナイツ、風林火山がトップラス。
首位アベマズとの差は0.6である。優勝するのはアベマズかサクラナイツ。そう思った人も多いのではないか。
週があけて月曜日となった。
サクラナイツの先発は沢崎選手である。沢崎選手のテーマが「アベマズ徹底マーク」であることは予想できる。サクラナイツは今シーズン最後となるオンラインPVを開催した。アベマズは「多井くん以外元気がなかった」と語っていた沢崎選手だったが、さすがの慧眼だった。
この試合、沢崎選手は3着だった。しかし、沢崎選手は徹底した仕事人ぶりを見せつけた。テーマは一貫して「アベマズ徹底マーク」である。季節が変わって、沢崎選手に調子が戻ってきていた。その調子の全ては、「対多井」というその点に注ぎ込まれているように見えた。そりゃぁトップが取れたら良いんでしょうけれど、そんな簡単なものではない。一番大事なことは多井選手より上にいることだった。叶うなら、多井選手の調子を狂わせるような展開にすることだったかもしれない。
最後は、2着目につけていた沢崎選手だったが、3着目の村上選手に4着目の多井選手が放銃。沢崎選手は着順を下げての3着ではあったが、この半荘のテーマ通りだった。
ここにきて仕事師の沢崎誠選手が還ってきて、9戦目にてサクラナイツは首位に躍り出た。EX風林火山は急接近しているが実際にはまだ100pt差以上。ここは対アベマズを見るべきだろう。
そして前試合にラスを引いて燃えている堀選手が登板した。麻雀の展開では、堀対多井、堀対たろう、たろう対多井といったところを随所にはさみながらも、スルスルと勝又選手が抜け出していく。ここにきて、勝又選手に猛烈な風が吹き出した。
10戦目の首位は、ここでEX風林火山に奪われた。ポイント差1.5。アベマズともごくわずか。1着順の差が20ptなので完全に「三つ巴」である。
5月18日。
泣いても笑っても最終日だ。
その1戦目、勝又選手のビッグプレイが出た。そして勝又選手の2着に、サクラナイツがなるかアベマズがなるかという大きな展開となった。
園田選手の三面張の追っかけリーチを受ける寒い展開に、内川選手がカン4mを上がり返した。2000オール供託1。これが引けたことが大きかった。
11戦目が終わった。
そして、サクラナイツには条件が残った。トップ2着で素点27300点差。あるいはトップ3着なら7300点差。現実的。非常に現実的な条件が残った。
ファイナル最終戦。どのようなことが起こるのか。
1戦目と2戦目の間。フォロアー300人くらいのアカウントなのでまぁそういうものだと思っていただきたいが、内川選手の登板を予想する声が多かった。最後の2000オールが決め手となったーーと思った。
サクラナイツのチームの、選手・監督・スタッフの、ファン全員の夢を背負って内川選手が登板した。
「ファイナル優勝」
いったいどれだけの覚悟を持って、選手たちはその言葉を言うのか。2019シーズン、ファイナルで1勝すらできなかったサクラナイツのチームにとって「ファイナル優勝」は重い。
その重いところに向かっていく姿を見たかった。
岡田選手の弛まない努力と成長、沢崎選手の苦闘とフォアザチーム、堀選手の実力とチームにもたらしたカオス、そして森井監督の名采配と、そしてここまでシーズンを通して応援してきたその全てを背負って、内川選手は西家に座った。
そして、最後の最後のチャンスが訪れた。
四暗刻イーシャンテンからの3pのポンテン。6sツモったら倍満。赤5mツモっても倍満。倍満ツモなら、勝又さんを3着に沈めてサクラナイツが瞬間トップになる。
そしてサクラは、サクラよりも赤いツモで散った。
この局、うっちーは苦しみに苦しんで、それでも最後までKADOKAWAサクラナイツのサポーターのために、KADOKAWAサクラナイツの内川幸太郎選手として戦った。それがサクラナイツサポーターの見たいものだった。サクラナイツのサポーターは1年応援して良かったと思った。
ずんたんも苦しみに苦しんで、それでも最後まで赤坂ドリブンズのサポーターのために、赤坂ドリブンズの村上淳選手として戦った。ドリブンズのサポーターの見たいものだったと信じる。ドリブンズのサポーターは1年応援して良かったと思ったと信じる。
たかちゃんも苦しみに苦しんで、それでも最後まで渋谷ABEMASのサポーターのために、渋谷ABEMASの多井隆晴選手として戦った。ABEMASのサポーターの見たいものだったと信じる。ABEMASサポーターは1年応援して良かったと思ったと信じる。
かっちゃんも苦しみに苦しんで、それでも最後までEX風林火山のサポーターのために、EX風林火山の勝又健志選手として戦った。栄冠は、勝又選手が手繰り寄せた。EX風林火山サポーターの見たいものだったことに何の疑いもない。圧巻のファイナルMVPだった。
他のチームのサポーターではないから勝手なことは言うべきではない。だからあくまで、僕個人がそう信じているだけである。
そして、いろんな人のいろんな想いを詰め込めるだけ詰め込んで。
サクラナイツの2020シーズンは終わった。
森井監督と稲垣マネージャーと、ファン
森井監督はTwitterの機能のスペースを使って、ファンと交流を持たれていた。終わってみれば悔しさが残る準優勝だった。去年の4位は心の整理ができていた。今年は、心の整理が何もできないまま準優勝になった。
キングメーカー問題を口にされる方もいらっしゃったが、それでもサクラナイツファンはサクラナイツチームを称える声で溢れていた。これも優しいチームが好きな優しいファンらしい、素晴らしいことだと思った。
いろんな選手にとって、眠れない夜だったと思う。その眠れない空気感をファンも共有することができていた。というより、「ユニフォームを着替えたのが(午前)4時30分」だったらしい。たぶん内川さんの魂の半分くらいはMリーグスタジアムにまだあったのかもしれない。
オフシーズン、サクラナイツはまた動いた。チーム報告会は5月19日。
まさに「昨日の今日」で情緒が追いつかないところもあっただろうに、それでもサクラナイツの選手たちはサクラナイツの選手として番組に出演された。コメントもサクラナイツの次を期待する声で溢れた。あんなにスパチャを読むのが上手な方々が読みきれないほどの声が届いた。鈴木たろうちゃんねるからも声が届いていた。「応援のおかげで選手が戦える」と内川選手がおっしゃったときは嬉しかった。それだけ応援されるチームになったことも嬉しかった。内川幸太郎さんの影武者の「時報頑張るから来季は頼む」というコメントもすごい話だったが、「来季も!」と仰っていたのもすごい話だった。
サクラナイツの2019シーズンオフの期間は、堀慎吾選手氏名が話題となり、オフシーズンには堀選手と森井監督でいろんな番組に出られた。麻雀ニュージェネch、リモトーク、いろんなところで堀選手とサクラナイツのPRをされてきた。
今年はまずEX風林火山のオーディションが話題となった。フォロワー数の多いまりちゅうプロや中田花奈プロ、最高位の醍醐プロ、雀王の矢島プロの参戦も話題となった。RMUの小沼プロがシンデレラボーイのごとく話題の主役になった。
やはり契約更改は話題となりやすい。サクラナイツは、契約更改初日に全員との契約更改を合意したことが報告された。
とはいえ、それはたまたま「いの一番」だっただけで、全チーム基本的に契約更改になるものと思っていた。
そうではなかった。
これはすごいことだったのだ。
麻雀格闘倶楽部の前原選手、藤崎選手、フェニックスの和久津選手がユニフォームを脱ぐと言われた。そして、EX風林火山から滝沢選手がチームを離れることが報告されたのは、奇しくもサクラナイツのクレイジートランポリン杯が開催された日だった。
森井監督「(スパチャ)今日も麻雀界の話題の中心はサクラナイツだといいなぁ」
内川選手「確かに・・・今日は無理かな・・・」
話題の中心にはなれなくても、それでもサクラナイツは幸せそうなニュースを放り込み続けた。ウマ娘の配信もMホールデムも面白かったし、そもそも、森井・内川・岡田選手には一人いるだけで番組を成立させられるだけのMC力をもっていて、そこにカオスを放り込む人がいるのだから、何をやっても面白かったのだ。
KADOKAWAなのに他社の書籍をPRするなぞの朝飯前のサクラナイツは、当然のようにフェニックスのセガ・サミーともコラボをしていく。
この何気ないツイートは、
ということで、
という、うそみたいな本当の出来事が起こっていた。
森井監督と堀さんは、
稲垣マネージャー「メガドライブ最高~!」
という番組に出ていた。EX風林火山メンバーオーディションの準決勝、そして内川さんがA2リーグと様々なところで様々な番組がある中、一番気楽にみられる番組だった。
堀選手はというと、
また森井監督と、るみあきチャンネルに出場されていた。
今の僕はというと、5月18日のファイナル最終戦を見直したテンションでこのnoteを書きながら、いろいろな思いを綴っているけれど。
この動画をみて、感情が全て消し飛んだ。しかし、どんな仕事も全部、堀さんは断らなかったのではないかというくらい、いろんな仕事を受けていたのではないか。麻雀の仕事もそうでない仕事でも、ファンを一人でも増やそうとするようなところに、Mリーガーらしさを感じる。横にいる人が、麻雀を学ぶ岡田紗佳選手から、芸能人おかぴーに変わっても、堀選手の手を抜かさなさはやっぱり偉い。と書こうと思ったが、やっぱりファニーだった。
一方、沢崎選手はというと、
中田プロ相手に、勝負リーチで戦っていた。一番美味しい仕事をきっちりやってたあたり、もはやマムシにスキはないと思った。
いろんなチームがいろんな形でオフシーズンをしかけていく。Mリーグも、一つ大きなイベントはドラフトがあった。
さすがにここでサクラナイツは主役ではない。森井監督が「モリイックサイン」を決めなかったのだからよほどである。
まぁドラフトで「あの選手が来るかな」「この選手が来るかな」というのはもちろん誰にでもあるのだと思う。EX風林火山のオーディションを勝ち抜いた松ヶ瀬隆弥プロ以外は誰もが未知数という状況だったので、それを自由に予想できると思った。
ただまぁ、自分の好きな選手をMリーグで見たいのならば、自分の会社をMリーグに参入させるのが最も適切な方法ではないか。自分がナショナルスポンサークラスの大手企業に勤務なら会社を説得させればよいだけ。自分がそうではない会社にいるなら、それができる会社に転職してから始めるだけ。それだけの話しなのだ。これは決して不可能ではない。森井監督はそれをやって、今ここにいるのだから。「他の人に出来ることが出来ていない」なので、どうのこうのは言えないか~と思いながら見ていた。
Mリーグの試合前公式生放送は、MCの日向藍子さんとアシスタントMCの岡田紗佳さんがさすがの呼吸だった。有料コンテンツにあまり何も言えないけれど、きっと家が近いからふらっと来たのであろう沢崎さんが飛び入り参加されていたことだけは書いてもいいと思う。
そうしてこうして、翌日の10月4日にはもうMリーグ2021シーズンが開幕である。そして、いよいよ2020シーズンも語り尽くした気もする。
2020シーズンは、サクラナイツのチームの、選手の、監督・スタッフの、ファンのいろんな人達の思い出となった。私はMリーグを応援しているというよりは、サクラナイツを応援しているという、とても気楽な立場の人間だ。ハイレベルな試合を見たい方々には申し訳ないが「決め手が天和でいいからサクラナイツ勝って🌸」とか考えている。改めて申し訳ない。
2021シーズンはどういうシーズンになるのだろうか。
新しいテーマは「その1ポイントを削りだせ」となったサクラナイツは、きっと1ポイントを削りにいくのかどうか。分からない。いろんな前例がありますからね。「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います」は良いアニメでしたね。
ファンとしては、今この4人がサクラナイツというチームに揃ってここに立っているだけで奇跡に近いと思っている。この奇跡のような時間を、僕は勝手に楽しむだけである。
エンターテイメントとしてはチームの入れ替わりもどんどん身近に感じられるかもしれないけれど、何年もずっとこのメンバーであれば嬉しい。「サザエさん」で「今年でカツオは卒業、来年からは新メンバーが加わります」って言われたら悲しいのと同じで、上質のエンタメは同じメンバーを許容する力もある。「マンネリ」は「マンネリズム」の略、その語源は「マニエリスム」で「最も美しいものを繋ぎ合わせて可能な限りの美を備えた一つの人体を作る様式」だそうだ。
内川幸太郎選手の主人公然とした立振舞い。
そこに、うっちーとしての人間らしさに惹きつけられる。
岡田紗佳選手のグローイングアップストーリー。
そこに、おかぴーとしてのファンサービスに惹きつけられる。
沢崎誠選手の捲土重来にかける精神。
そこに、まむたんとしてのフォアザチームに惹きつけられる。
堀慎吾選手の明晰な麻雀と流麗な闘牌。
そこに、ぽりぽよとしての絶妙な空気感の緩和に惹きつけられる。
知将・森井監督の選手の気持ち、ファンの気持ちを分かった采配。
軍師・稲垣マネージャーの、数万の展開を練ったであろう企画と実行力。
そこに、「おべんとう🌸」といいながらついていく優しいファン。
最も美しいもの。これがつなぎ合わさってサクラナイツはできている。だから、可能な限り美しいチームと思う。本来の意味でマンネリだ、素晴らしいチームだ、と僕は勝手に思っている。
じゃぁサクラナイツって何年同じメンバーでやればいいのか。
決まっている。100万年だ。
いや、これはちゃんと理由がある。
沢崎さんが100万年早いと言っている以上、岡田選手にも沢崎選手にも100万年ほど先の未来まで生きてもらわねばならない。
100万年後。
コールドスリープから目覚めた岡田紗佳さんは数万ぶりに地球の空気を吸うことになった。人類は幾度とない危機を乗り越えて、繁栄と平和の真っ最中であった。マインドスポーツの代表格たる麻雀はそのころも愛されていて、サクラ色のユニフォームに100万年ぶりに袖を通した岡田選手は、伝説の雀士の名前に恥じぬ活躍でチームをファイナルへと導く。
名実ともにエースと言われた岡田選手は心の中の老名人に問う。
「沢崎さん、100万年経ちましたよ。もう私、エースですよね」
「ーーーもう100万年早い♪」
そう言ったサクラ色のユニフォームに身を包んだ100万66歳の名人は、年齢を感じさせぬ足取りで「若い子たちが頑張っているからね、僕もがんばらなくっちゃ」とルンルン気分で内川選手・堀選手・森井監督(年齢略)にブレードを振ったのだった……などとまた盛大に外しておいて、画竜点睛を欠いておく。
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