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大信製材 学習机をつくる

2019年11月、ある友人からのe-mailがこのプロジェクトの始まりでした。

「長男の学習机が欲しい。大信製材で製作できないか」

お客様からの要望に応じて加工する「賃加工」(=加工委託事業)が主体の大信製材。自社製品は何一つありません。それに当社が扱うのは内装材やデッキ材。家具を加工した経験はなく「机を作って」と言われても、何から始めればいいのやら。
ただ友人は、私が以前机づくりイベントに参加し感銘を受けたこと(その時の様子はこちらに詳しいです)や将来自社製品をつくりたいと思っていることを知っていて、あえてこの仕事を振ってくれたのです。本当にありがたいと思いました。

後先考えず、とにかく「挑戦させて!何とかします!」と返事したのです。


どんな机を作りたいかを考えることから

日本の森林率はおよそ68%。OECD加盟国の中ではフィンランドに次ぐ第二位です(2015年)。ただその利用は進んでおらずフィンランドやスウェーデン(森林率第三位)の木材自給率が120%以上であるにもかかわらず日本は40%をきっています。特に家具に使われれるような広葉樹は外国産がほとんど。国内で流通する家具のなかで国産材を使っているものは5%にも満たないと言われています(参考:「家具向けの木材需要」2016.6 農林中金総合研究所)。
一方社会においては、先進国と途上国、都市と地方、生産者と消費者、白色人種と有色人種……いたるところで分断が起きています。劣化した関係性を修復することで豊かさを取り戻すことができるとずっと考えていました。
国産材を使うこと、作り手と使い手を結びつけること。この二つを実現したいと思うことが机づくりの出発点でした。


どんな木?どこの木?

国産の広葉樹を使いたい。しかも素性があきらかなものを。

まずは飛騨市で広葉樹を専門で曳いている西野さんに相談しました。飛騨古川は友人(ヒダクマという会社をやっている)が暮らす街で私にとっても愛着があります。西野さんとは何度かお話をしたことがありますが、取引実績は過去に一度もありません。
「大阪の大信製材の出口と申します……」と恐る恐る電話すると、「あーー!出口さん!?元気~~?」と気さくな声で答えてくれました。学習机をつくることになったこと、男の子が使うので栗(木目がかっこよく丈夫だから)を使いたいことを伝えると、「ちょうどいいのがあるよ!」と二つ返事で回答いただき、飛騨産の栗を仕入れることができました。

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西野製材所の西野さん

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西野製材所の様子

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飛騨古川からやってきたゾー


製作は地元・大阪平林で

大信製材単独で机の製作はできないので連携先を探すことに。ウチの社長(義理の母ですが......)に相談すると、松前木材店の前重さんをつないでくれました。当社と同じ大阪市平林地区で製材所を営む松前木材店は家具の製造・販売もやっています。とても寡黙な前重さん。初めてお会いした時はこちらの思いがちゃんと伝わったのかちょっぴり不安でしたが、自転車で5分とかからない松前木材店に頻繁に通ううちに迅速かつ細かな意思疎通ができるようになりました。平林ならではのありがたいご縁です。

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松前木材店の前重さん

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アジト感漂う前重さんの工房

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前重さんや友人親子とともに作った図面。というかイメージ図


塗装体験会を実施する

前重さんとは、お気に入りの一台になって長く使ってもらいたいねと、当初から話をしていました。自ら製作に携わることで道具への愛着は格段に上がります。あれこれ案がでましたが、品質(特に強度)を担保しつつ誰もが容易に取り組める「親子塗装体験会」を実施することにしました。塗料は亜麻仁油が主成分の自然塗料・リボスを、色は木目が際立つクリアを選びました。
体験会当日。脚、チェスト、ブックスタンド、机の天板と親子二人でぐんぐん塗装が進みます。「いつ家に来る?早く来てほしい」と何度も言ってくれてた息子くん。本当にうれしかった。やった甲斐がありました!

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アレルギーにも安心なリボス。赤ちゃんが舐めても大丈夫


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白っぽい表情がグッと艶やかに

【番外編として】
体験会の3日ほど前に急に思い立ち、机製作に込めた思いを紙芝居にしました。友人の息子くんはよく話を聞いてくれましたが、同世代のウチの娘に後日見せたところ、「全く意味がわからない。作り直さないとダメ」と辛らつなご意見。女子はバシバシはっきりものを言うので怖え~です。

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木の道具を大切に使うといいことあるよ、という内容の紙芝居だった......


塗装体験から一週間、ついに完成です!

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connected by wood(木でつながりを作ってく)

プロジェクトを進めるうちに自分のやりたいことが少しずつ明らかになっていきました。
今回ご協力いただいた西野さんや前重さんはじめ、木に携わる人はかっこいい人が多いと感じますが、きっとそれはどの業界でも同じこと。裏を返せばモノの使い手は、作り手のことを知らなさすぎる(知る機会を得られない)のです。旅に出かけて単にアクティビティだけを楽しんで帰ってくるようなもので、そんな旅行もいいですが、歴史や名産品を知り、地元の人と触れ合って、そこでしか味わえない体験をするのも悪くない。道具の購入においても単に効用だけを得るのか、ストーリーを知り愛着を持って使い続けるのか、メリハリをつけることが大切だと思うのです。
木の道具は、豊かなストーリを持っています。素材の個性のこと、生まれ故郷のこと、育てたり・伐ったり・加工する人のこと。知れば知るほど愛着がわきます。木という素材を活かして使い手に新しいつながり(connected by wood)を提供できればいい。

今回の取組みにご協力くださった全ての方に感謝申し上げます。そして私の挑戦におもしろがって関わってくれた友人に、心からお礼申し上げます。本当にどうもありがとう!引き続き、おもしろくって、ほんのちょっぴり世の中の役に立ち、そしてお客様を笑顔にできるような仕事に取り組んでまいります!!



 





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