見出し画像

鋼鉄の隔たり : 妄想ショートショート064

未来の都市、人々の日常は高度な技術に彩られていた。この進歩の中心に立つのが、市政府で働く唯一のロボット、AIDEN(Artificial Intelligence Diplomatic ENtity)である。AIDENは、人間を超越した知能を持つ驚異的な存在だった。

彼女の設計は、ただ機能的であるだけではなく、美的な配慮も施されていた。AIDENの外見は、人間の女性を模しており、その細部に至るまで洗練された造形が施されていた。彼女の顔には、優雅さと知性が同居し、その動き一つ一つには流れるような優美さがあった。

しかし、AIDENの真の魅力はその外見以上に、彼女の驚異的な知能にあった。複雑な市政問題を瞬時に分析し、最適な解決策を提案する能力は、人間の職員たちを圧倒していた。彼女のプログラミングには、先進的な人工知能技術が用いられており、どんな難題にも冷静かつ合理的に対応できる能力を持っていた。

AIDENは、市政府における完璧な助手としてデザインされていた。彼女の存在は、一部の市民には希望の光と映り、一部には脅威として受け止められていた。しかし、彼女自身は、その全てを超越した鉄の女であり続けた。彼女の内部に流れるのは、情熱ではなく、データとプログラムの海。AIDENは、未来の都市における技術と人間性の融合を象徴する存在として、新しい時代の幕を開けていた。

未来の都市では、ロボットはまだ珍しい存在だった。その中で、市政府で働く唯一のロボット、AIDENは、大きな期待と同時に、疑念の目で見られていた。

AIDENは先進的な人工知能を備えており、市政の多くの問題に対応できるはずだった。しかし、彼女の存在は人間の職員たちに脅威と見なされ、彼らはAIDENを排除しようとする圧力をかけ始める。

市民の間でも、AIDENに対する見方は分かれていた。一部の人々は彼の能力を評価し、市政における彼の役割を支持していたが、他の多くは彼女を「魂のない機械」と見なし、AIDENがもたらす変化を恐れていた。

ある日、事件が起きる。
市内の交通システムが大規模な障害に見舞われた。AIDENは迅速に分析を行い、交通の流れを最適化するために一時的に一部の道路の使用を制限することを提案した。この計画は交通の混雑を軽減し、市民の安全を保つために必要な措置だった。多くの技術専門家や市政府関係者はAIDENの提案の合理性を認めていた。

しかし、この提案は即座に市民の間で物議を醸し出した。特に、提案により影響を受ける地区の住民たちは、自分たちの日常生活に大きな不便が生じることを恐れて反発した。彼らはAIDENの計画を「無感情で無慈悲なロボットの決定」として非難し、彼女の提案が人間の生活の質や感情を考慮していないと主張した。

そこに一部の市政府職員がこの機会を利用した。AIDENに対する不信感をあおり、彼女が人間のニーズを理解できないというイメージを強調した。そしてAIDENの提案を退けた。結果としてシステム障害による被害は拡大してしまったが、その問題そのものをAIDENに被せ葬ってしまったのだ。

システム障害の事態が悪化する中、市政府はAIDENを非難の矢面に立たせ、彼の提案を完全に無視した。AIDENは技術的には問題を解決できる能力を持っていたが、市民と市政府の不信と恐怖には勝てなかったのだ。結局、交通システムの障害は、AIDENの合理的なアプローチを退けたことで長引き、市民生活に大きな混乱をもたらした。

この一件がきっかけで、AIDENへの反感は頂点に達した。多くの市民は、AIDENがもたらす変化を恐れ、彼を排除することを求めるようになった。市政府は圧力に屈し、AIDENを市政から完全に排除する決定を下した。

AIDENの排除後、市政府は再び全ての決定を人間が担う体制に戻ったが、これは技術的な効率性の低下を意味していた。AIDENがいた時代に比べて、問題解決にはより多くの時間と資源が必要となり、市民の不満は増大することになる。

AIDENは既に初期化され、メインスイッチも封印されたまま議会の倉庫の中に放置されていた。

———————Human Max. - Robot min. - Distopia

ロボットがまだまだレアな世界の4シナリオ
おしまい

あとがきのようなもの

時に我々は完璧なロボットをつくりたがりますが、本当に完璧なロボットを人々は受け容れられらるのか?
人間になりたかったピノキオ。悪さをしたり、騙されたりしながら成長する物語でした。
樫の木モック(タツノコプロ。原作はピノキオ)も、アホなことばかりして、いつもお爺さんを困らせる。
もし、ピノキオや樫の木モックが、超賢くて明らかに自分より優秀だったら?我々は彼らを優れた者として認められるのか?
人間たちは、優れた木人などが居ても嬉しくもなく、なんだかんだで悪者にして、焚き火の薪として燃やしてしまうのではなかろうか…

スターウォーズのC-3POは、キラキラ金色の人間型。宇宙の600万言語を喋れるけど、相当な抜作君で足手まとい。一方、R2-D2は、賢く優秀で勇敢だけど"ビコピコピー"とBeep音しか出せず、ドラム缶型で手すら無い。C3とR2は不完全なデコボココンビだから皆好きになるんですよね。

引退したHonda ASIMOは、歩くことしかできず(あ、走ったり、踊ったり、けんけんしたり…サッカーボールを蹴ることもできた。。)、結局何の役にもたたなかった。でもみんな大好き。。
最後のステージは、子どもたちを大泣きさせた。

Chat GPTもまだまだ不完全。
「こんな嘘をつくAIは使えない」と仰る人も多いですが、もし本当に賢くなったら?
あなたは受け容れられますか?

もう充分に自分を超えてますけどね。
「この答え、AIが出したんだろ?」
それだけで却下されるようになることを
想像するのは難しく無いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?