リヨンのだまし絵

Le trompe-l'oeil de Lyon

街はキャンバス? 
世界的アーティスト集団の作品に触れる

 リヨンの街を歩いていると自然と目にする壁のだまし絵(フランス語では、トロンプ・ルイユle trompe-l'oeil「眼をだます」意)。これは、どれもリヨン郊外に本拠があるシテクレアシオン(CitéCréation、以下シテ)による作品です。1978年にリヨン美術学校の卒業生が中心となって創立した芸術グループで、壁のだまし絵という大変ニッチな業界ながら、今では世界的に有名になりました。現在も、代表のジルベール・クーデーヌさん以下、80人ものだまし絵専業のアーティストが活動しています。

 シテの作品は、世界15カ国に約580あり、リヨンではそのうち160以上の作品を目にすることができます(2014年夏現在)。リヨンでは街の至る所にだまし絵があり、だまし絵ツアー専門の地図やガイドブックが書店などで手軽に買えるほどです。ちなみに、とある三ッ星レストランの中庭には、フランス料理研究家の辻静雄氏が現在のところ、リヨンのだまし絵の中では唯一の日本人として描かれていますよ。

 意外に思われるかもしれませんが、だまし絵ははじめから直接、壁に描かれてはいません。まず壁の所在地の空間をシミュレーションして、見る人がだまされるように十分計算して下絵を制作します。そして次に、シテの広大なアトリエで下絵をキャンバスに再現。最後に、そのキャンバスを特別な方法で壁に接着し、キャンバスと壁の接合部やキャンバスが貼られない壁に加筆をして、完成です。

 郊外にあるだまし絵の多くは、HLMと呼ばれる低家賃公共住宅の壁にあり、「観光できるHLM*」がコンセプト。観光客がたくさん訪れることで住民が誇りを持ち、治安の改善にも役立っています。地域住民の中には、下絵の決定に始めから関わり、急遽アーティストとして制作に参加する人もいます。2012年の9月からは、だまし絵アーティスト養成のための世界で唯一の学校EcohlCitéもリヨンでスタートしました。

 シテの代表作のひとつは、15年ぶりに2度目のリニューアルを行なったクロワ・ルースCroix-Rousse地区のLe Mur des Canuts(「絹織工の壁」の意)。ヨーロッパでも最大級のだまし絵作品(1200m2)です。リヨンにいらしたらぜひガイドブック片手に、だまし絵ツアーを楽しんでみてくださいね。

*Habitation à Loyer Modéréの略


information

Le Mur des Canuts
Boulevard des Canuts 69004 Lyon (rue Denfert-Rochereauとの交差点)
Metro C : Hénon

CitéCréation
http://www.citecreation.com

mémo

日本では、リヨンの姉妹都市である横浜市にあるトレッサ横浜(港北区)北棟内で、シテのだまし絵2作品を見ることができますよ。
http://www.tressa-yokohama.jp/



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