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小さな組織が年商10億円に届かない理由と解決の糸口

人材と新規開拓の問題がボトルネックである

カイロスマーケティング株式会社を創業して、これまで10年以上で3,000社以上の中小企業などの小さな組織のリーダーと接する機会をいただきました。当社の事業の中心である営業や販売促進のまわりには、どの小さな組織のリーダーにも悩みがあります。そして、小さな組織のリーダーのお悩みには共通点があるのです。

小さな組織のリーダーの共通のお悩みとは、人材育成や人材定着などの人材に関するものと、営業やマーケティングで新規開拓ができない、という二つになります。

小さな組織とは、や大企業の新規事業の立ち上げのための組織、そして最近では国の支援も充実しつつあるベンチャーやスタートアップ企業のことを指しています。優秀な人材は大きな組織で働く傾向があり、新規開拓はブランド力のある大きな組織が強いというよく知られた常識であり、小さな組織にとっての既知の課題があります。

それでも、小さな組織のリーダーは、我が国の経済成長への貢献や株主のための利益還元を目指して売上アップを目指しています。

そして、業種やビジネスモデルによって多少は異なりますが、年商10億円という売上が小さな組織のリーダーにとっての一つの目標になります。ベンチャーやスタートアップ企業では上場が見えてくるようになり、でも地元ではそれなりの知名度が出てきます。年商10億円になる頃には従業員数が百人を超えるくらいになり、いよいよ小さな組織から卒業をすることになります。
年商10億円に到達するためには、小さな組織のリーダーが抱える人材に関する課題と新規開拓ができない課題の両方を克服しなくてはなりません。それはどのように克服していくのでしょうか?


小さな組織の強みを活かすことが戦略である

そもそも課題の克服の前に強みを活かさなくてはなりません。どんな戦略の実行でも、まずは自社の強みを活かすことを優先します。弱みや課題の克服は、自社の強みを活かすことの次に優先します。

小さな組織の強みは、機動力の高さです。

小さな組織では、部門の部員数が少ないため、大きな組織に比べて組織の階層構造が単純になります。組織構造の単純さに加えて、組織全体に対する社長などのトップの影響が大きくなります。トップが意思決定してから、時間をかけず組織全体が決定された意思を実行できるという利点があります。
大きな組織では、稟議のための資料づくりに始まり、各種役会での承認などの意思決定、決定内容を実行するまでに各部門間での調整と、実行のための研修などが必要となるため、意思決定から実行までにとても時間がかかります。

機動力の高さが小さな組織の強みですが、機動力の原点となるトップの意思決定は、トップの経験と勘に基づいています。正しい意思決定がなされれば、機動力と兼ね合わせて強みになりますが、正しくない意思決定がされると弱みになります。

年商10億円を目指すためには、従来の機動力に加えて、市場やお客さまに関する情報を蓄積してトップの意思決定の精度を上げる必要が出てきます。ITツールを導入して、営業活動のデータを貯めるようにしましょう。営業活動のデータとは、営業活動に関する情報であり、お客さまや取引先との取引履歴、売上や収益、市場ニーズや要望、競合他社の動向など、営業に関連するさまざまな情報を含んでいます。これらの情報は、営業部員に聞かなければ得られない情報です。営業DXにより、自社の営業活動を記録できるようになることで、自社の営業活動のデータが社内に溜まるようになります。

小さな組織の強みである機動力をさらに活かすために、トップの意思決定の精度を上げるためにITツールを活用して事業に関するデータを貯める。これが小さな組織が年商10億円を目指すための基本になります。

小さな組織の人に関する課題をまとめると上の図のようになります。営業活動において分業がないことと、営業部員の大きな裁量権が、小さな組織の人材定着と人材育成の課題の根本的な原因を生み出す構造となっています


新規開拓ができないのは組織の構造が問題

小さな組織の典型的なもう一つの経営課題は新規開拓です。

お得意さまに売上が集中することは、小さな組織における事業継続のリスクです。単一事業を営んでいる組織では、これは喫緊の経営課題になります。お得意さまの経営不振やお得意さま企業の経営戦略の変更により、契約が解除されることで自社の売上に大きな負の影響があるからです。お得意さまに売上が集中しないようにするためには、常に新規開拓をして新しいお客さまとの契約を獲得することはとても大切です。

新規開拓は小さな組織にとって重要ではあるものの、なかなか新規開拓に手がまわらない意思決定の構造があるのです。

営業の目的は多くの受注を取ることです。新規開拓から受注、そしてアフターサービスまでを一人の営業部員が担当しなくてはならない状況にある小さな組織では、どうしても受注に近い商談が優先されます。目の前に受注目前の商談があるにもかかわらず、受注できるかどうか全くわからない新規開拓をする営業部員などいません。新規開拓と受注のための営業活動が分業されていればこのようなことは起こりません。

個人の営業部員の意思決定としては確かに正しいのですが、組織として営業活動をとらえた場合には議論の余地があります。小さな組織では個の営業部員が裁量を持っているため、このような事態になるのです。

新規開拓では、関係値が全くないお客さまに営業活動をしなくてはなりません。関係値がないことが営業活動の難しさであることを知っている営業部員は、これまで何度も打ち合わせなどを通じてお客さまを優先することは当然です。ほとんどの中小企業などの小さな組織では、特定領域における認知すらないため、新規の関係値がないお客さまからの信頼を得て関係値をつくっていくためには、一層の努力が必要になります。

小さな組織の営業活動では営業部員が大きな裁量を持ち自分でやるべきことの優先順位を決めてしまうため、どうしても新規開拓がおろそかになります。受注をすることで売上を積み上げることが目的である営業部員からすれば、確かに正しい判断と言えます。ただし組織として見た場合には、これは正しい判断でしょうか?

小さな組織における新規開拓は、事業継続のリスクを回避するだけでなく、自社の営業力強化にもつながります。新規開拓の営業活動を通じて、競合とのコンペや新たなお客さまのニーズへの対応、新技術の適応、価格交渉などの市場競争に対応する必要があります。市場競争を通じて、市場の理解を深め、その変化に追従する必要が出てきます。これらに対応することが自社の営業力を強くするのです。新規開拓を避けていては、いつまで経っても事業拡大にはつながりません。

小さな組織における新規開拓の課題を図 にまとめました。一人の営業が全ての営業業務をこなすため新規開拓と受注活動の分業ができていないこと、営業部員に大きな裁量があって自分で決めてしまうこと、という二つの営業組織に関わることと、新規は既存よりもはるかに難しいという周知の事実、により小さな組織の新規開拓ができないという問題の構造が見えてきます。この問題の構造は、人材育成と人材定着の課題と全く同じであることがわかります。


営業の仕組み化が小さな組織の問題構造を解決する

ここまで見た小さな組織の営業活動の課題は、

個々の営業部員が業務において大きな裁量を持っている

・個々の営業部員が業務において大きな裁量を持っている
・広範囲な営業業務を一人の営業部員が担っている

ということが根本的な原因です。

小さな組織の営業活動では、一人の営業部員が新規開拓から受注までの幅広い業務を担当する上に、業務に対して大きな裁量があるため、まるで個人商店のようになっています。

コンサルティングや士業法人のような、各部員が個人商店のように仕事をすることで各部員の業務量の調整と最適化ができ、屋号や法人として個人商店の集団としてのブランド認知を上げることを目指すような事業モデルであれば個人商店化している方が合理的です。

しかし、多く事業では、営業の個人商店化は好ましくありません。そもそも事業とはある活動の成功パターンを別の活動に当てはめることにより効率をあげることでうまくという性質があります。これは営業の個人商店化と正反対です。個人商店化が進む組織では、せいぜい年商は3億円が限界です。年商10億円を目指す組織、個人商店化から脱却して、組織として営業をすることで事業が大きくなります。

また、営業活動はお客さまとの唯一の接点であり、お客さまの声や競合の状況を知るための情報源です。経営においてとても重要なお客さまとの接点を、個人商店化させて個々の営業部員に委ねてしまうことは、経営にとって大切な要素をブラックボックス化しているだけであり、好ましい状態とは言えません。機動力が高いという強みがある小さな組織において、営業活動がブラックボックス化している状態では、意思決定の精度が上がりません。場合によっては、間違った意思決定を高い機動力で迅速に進める結果になってしまいます。

小さな組織における営業活動の個人商店化の解消のためには、営業活動を仕組み化して「決まりごと」つくる必要があります。営業活動を仕組み化することによって新規開拓と受注活動が分業できるようになるだけでなく、営業活動に決まりごとを定めることによって営業活動の個人商店化を解消することができるのです。仕組み化と分業は、小さな組織の営業課題である「個々の営業部員が大きな裁量を持つ」「広範囲な営業業務を一人の営業部員が担う」という両方の課題を直接解決することにつながります。

営業活動の仕組み化は個人商店化の解消だけでなく、人材育成にもなります。経験の浅い新人営業部員は、仕組みを通じてベテラン営業のノウハウを実践することになるため、営業のやり方を覚えるだけでなく、成果の出せる営業部員に成長することも期待できます。

仕組み化には営業DXと相性が良いと言われています。自社の営業の情報を蓄積するだけでなく、分業と仕組み化された営業活動の全体が見えるようになるからです。そのため、次の章では営業DXについて説明することにします。営業DXの良い点を取り込みながら、小さな組織の営業活動を仕組み化することで、営業活動の個人商店化を解消します。


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