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2020-JUN-9「ロックの日に。ヴォイスの集合は世界を変えることができるのか?」

ジョン・レノンは世界を平和にしたのか?
セックス・ピストルズは権威をブッ壊せたのか?
ボブ・ディランの詩は政治に反映されたのか?

答えはノーだ。

ベトナム戦争をジョンでも止めることができなかった。
ピストルズのヴォーカル、ジョニーは右翼からの襲撃を受けた。
ディランはもとから、人々を鼓舞して世界を変えようなんて気はなかった。

世界が変わったのは現実的な政治決定だけだった。

いまジョージ・フロイドさんの死をきっかけにして、多くのアーティストが声をあげている。
しかしこれらヴォイスの集合がアメリカの差別問題を、いますぐに変えることはないだろう。

僕ら日本人が思っているよりも、アメリカの人種差別問題は根が深い。
明日、奴隷解放の宣言がなされて多くの人が解放されるように、黒人差別がなくなるというものではない。
アメリカ社会は自由という建前のもと、未だに黒人と白人とで生活エリアは明確に分かれているところが多い。僕が住んでいたブルックリンはそんなコントラストがとても際立っていたところだった。1ブロック曲がれば、そこに住む人々の肌の色は変わる。
実際に治安のよくないエリアに黒人は多く住み、その暮らしから抜け出すことは簡単ではない。貧困が貧困を生んでいる。
そんなひとつの社会システムに固定されているがゆえに、差別も固定されている。
それをすぐに変えるには、社会のすべてを白紙にするしかない。
でも、それはできない。

けれど、人種問題はかならず融和してゆくと僕は信じている。
それはゆっくりとした歩みだろう。
時間が解決するはずだ。

ならば、アーティストのヴォイスに意味はないのだろうか?
そんなことは絶対にない。

僕らは…
ジョンの歌に励まされ、ピストルズにやり場のない怒りを解放してもらい、ディランの歌声に涙した。
ロック・スターやアーティスト達が善きメッセージを発することは、僕らに善き行動を選ぶことを意識させてくれる。

政治家とはちがって、特定勢力の意思に左右されることのない個人である僕らはとっても自由だ。
誰の利害に関係することもなく、世界がより良い場所になるよう、自由意志に基づいた叫びをあげることができる。

ロック・スター達のヴォイスが世界を変えるのではなく、ヴォイスを聴いて勇気をもらった僕らが世界を変えてゆくのだ。
僕らの世代では変わらないかもしれない。
それでも、僕らの子どもの世代や、孫の世代にはきっと変わる。
善きことを未来の世代に伝えるという、いまを生きる僕らのつよい意思さえあれば。

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