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【文化財紹介】大都会に残るレトロな木造駅舎

大阪歴史倶楽部です。

大阪市西成区にしなりくにあります、戦前に建てられたレトロな木造駅舎の「西天下茶屋にしてんがちゃや」駅(南海電鉄なんかいでんてつ汐見橋線しおみばしせんの駅)をご紹介いたします(西成区編 第2弾)。

南海電鉄汐見橋線とは
南海電鉄なんかいでんてつ(正式名称:南海電気鉄道なんかいでんきてつどう)の「汐見橋線しおみばしせん」とは、広く一般に使われている通称で正式には(書類上では)南海電鉄高野線こうやせんの一部分です。区間は大阪市浪速区なにわくの「汐見橋しおみばし」駅から大阪市西成区にしなりくの「岸里玉出きしのさとたまで」駅までの約5kmです。

この汐見橋線は、現在約30分に1本のダイヤで2両編成の各駅停車だけがのんびりと往復しているという、大都会の中にあって、まるでローカル線のような雰囲気をかもし出しています。

豆知識
関西では鉄道会社の一般的な呼び方(略称)は「○○電車」と言います(関東では「○○線」と呼ぶのが一般的なようです)。たとえば「阪急電車」「京阪電車」「阪神電車」「山陽電車」「阪堺電車」などです。これらはそれぞれの鉄道会社さんが略称として広報などでも使用しておられます。けれども南海さんについては「南海電車」という略称はあまり使っておられないようで「南海電鉄」という略称をおもに用いておられますので、ここでも「南海電鉄」として記述を進めさせていただきます。

南海電鉄高野線の路線図
南海電鉄さんの公式サイトより


西天下茶屋駅について
西天下茶屋にしてんがちゃや駅は、大阪市西成区にしなりくたちばな3丁目にあるレトロな木造駅舎の駅です。無人駅ですが自動券売機と自動改札機、防犯カメラが設置されています。

この西天下茶屋にしてんがちゃや駅の現在の駅舎が建てられた年代については、南海電鉄さんが公表されていないこともあり、ネット上では1915(大正4)年建築説をはじめいくつかの不確かな情報が流れています。

今回、大阪歴史倶楽部が約2年をかけてコツコツと調査した結果、この駅が設置されたのは1915(大正4)年ですが、現在の駅舎は1930(昭和5)年に「木津川きづかわ」駅から「西天下茶屋にしてんがちゃや」駅までの間が複線化された頃に新築された建物だろうということが分かりました。

ですから今年(2022)年で、現在の西天下茶屋にしてんがちゃや駅の駅舎は築90年以上ということになりますね。

西天下茶屋駅正面
駅舎内の天井
改札口(自動改札機があります)
線路側からみた駅舎
改札口からプラットホームを眺めたところ
プラットホーム(椅子いすも昔のままの木製)

文化財データ
南海電鉄高野線(汐見橋線)
西天下茶屋駅 駅舎
大阪市西成区橘3丁目3
1930(昭和5)年頃 竣工(複線化にともなって新築か?)
写真:2021年8月 大阪歴史倶楽部 撮影

西天下茶屋駅の周辺
西天下茶屋にしてんがちゃや駅周辺は、1996(平成8)年10月から翌1997(平成9)年4月まで放送されたNHKの連続テレビ小説『ふたりっ子』(三倉茉奈まな佳奈かなさんのデビュー作)の舞台となりました。

駅の南西200mほどの所にある「銀座商店街」(西天にしてん商店街とも言います)の中のスーパーマーケットの前には『ふたりっ子』の記念碑があります。

銀座商店街(西天商店街)
2022年 大阪歴史倶楽部 撮影
『ふたりっ子』の記念碑
2021年 大阪歴史倶楽部 撮影

この西天下茶屋にしてんがちゃや駅がある大阪市西成区の天下茶屋てんがちゃや地域は、西成区の中では最も治安が良く(普通の住宅地なみの治安です)、昭和時代の雰囲気があちこちに残っている庶民的な下町です。

西天下茶屋駅への行き方
西天下茶屋にしてんがちゃや駅へは、もちろん南海電鉄の汐見橋線しおみばしせんを利用するのが最も近いのですが上記のように現在は約30分に1本しか電車が走っていません。

より便利なルートとしては、南海電鉄および大阪メトロ堺筋線さかいすじせんの「天下茶屋てんがちゃや」駅(南海電鉄と大阪メトロ堺筋線は同じ駅舎です)を利用するルートをオススメいたします。天下茶屋てんがちゃや駅は、南海電鉄各線の全列車が停車しますし、大阪メトロ堺筋線(阪急はんきゅう電車直通)の終着駅でもあります。この天下茶屋てんがちゃや駅からだと西天下茶屋にしてんがちゃや駅までは西へ約700m(徒歩約15分)です。

そのほか大阪メトロ四つ橋線よつばしせんの「岸里きしのさと」駅からも北西へ徒歩約15分です。

おわりに
ここで紹介いたしました西天下茶屋にしてんがちゃや駅を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、南海電鉄さんをはじめ駅の利用者や駅周辺の方々のご迷惑にならないようご配慮をお願いいたします。

また許可なく他の人の敷地内に入ったり、むやみに電車の線路内に入ったりはしないようお願いいたします。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第6号 通巻16号 2022年2月12日)

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