個人的クイズ大賞2020

私・ダイキリが独断と偏見で選んだ「今年良かったクイズ」を紹介する個人的クイズ大賞の時期が今年もやってまいりました。初開催となる今年は、一問一問のクイズとクイズコンテンツも、全て同一部門で審査します。

まずは入賞作品を発表し、最後に大賞を発表します。

入賞作品

・Q. 水の量が多いのは? 日本1年分の生活用水 OR 琵琶湖
A.琵琶湖
(ネプリーグ2月10日放送分)

まずはこの1問。クイズ番組『ネプリーグ』の「トロッコアドベンチャー」で出題された問題です。生活用水が147億㎥で、琵琶湖の水量は275億㎥とのこと。
2択問題として正解も含め天才的です。琵琶湖を犠牲にすれば日本中の生活用水がまかなえるんですね。「ベタ問」になるにふさわしい問題です(もしかしたら私が知らないだけでベタ問なのかも)。
調べたら2016年に「東京都の水道使用量」と「琵琶湖」の2択がトロッコアドベンチャーで出題されていましたが、そのときは圧倒的に琵琶湖の方が多いという結果でした。東京都よりも日本全国と対比させた方が答えに驚きがあるので、今年の問題の方が良いでしょう。
最近のクイズ界では作問者のつまらないユーモアが前面に押し出された問題が増えてきた印象ですが、このように、シンプルで一見ただの事実のようでいて、実は作問者の視点がないと作れない問題こそ理想的な一問だと思います。


・Q. 白星、黒星、金星。全部で何勝?
 A.2勝
(タイムショック10月7日放送分)

この問題は『タイムショック』の決勝で、まさに勝敗が決まりそうなときに出題された問題です。
問題として非常に綺麗で、5秒のシンキングタイム(実際は問読みの時間があるのでそれより短い)とプレッシャーだと確かに間違えるかもしれない難易度。解答者は誤答していたと記憶しています。『タイムショック』にあまりに相応しい1問です。
私はお茶の間で見ていたので難なく解けましたが、完成度の高さに唸ってしまいました。この問題も、シンプルだけど作問者に拍手を送るべき問題だと思います。


・『東大王』5月〜6月放送回

クイズ番組『東大王』。今年の春にはコロナの影響で様々なものがリモート化しましたが、『東大王』では「リモートで東大王と視聴者が対決できる生放送」という企画が行われました。3択クイズが次々に出されていき、東大王が答えていくのですが、視聴者もデータ放送でそれに参加できる、というものです。
元々この番組の良いところは「クイズ王の見せ方」だと思っており、必ずしも最初から完璧ではない、成長していくクイズ王を見せるのがうまい番組です。しかしやはりクイズ王はクイズ王、高い壁であることは事実なわけで、そんなクイズ王と実際に生で正解数を競えるということで、非常にワクワクしたことを覚えています。ちゃんと生放送でも威厳を保てると信頼された東大王の皆さんにも拍手を送りたいです。
問題は良い感じの3択が多く(中には変なのもありましたが)、お茶の間でワイワイ楽しめる番組だったと思います。生き物が擬態している画像を3分割し、どこに生き物が隠れているかを問うクイズは「テレビの生放送クイズ」としてかなり面白い試みでした。
『東大王』では秋に視聴者チームとの対決を生放送で行うなど、かなり「生の対決」を意識した企画もあり、これからに注目しています。


・Q. 2020年、残念ながら「白と藍色」のものは鳴りを潜めてしまったが、「黒と緑」のものを見る機会はものすごく増えた、日本の伝統的な模様の一種は何?
A. 市松模様

(ホッチキスさん作 11月1日みんはやでの「自作全般26」にて)
作問の天才と私が勝手に呼んでいるホッチキスさんが「みんはや」で出題された問題です(私が見たのがみんはやであり、その他の場所でも出題されたかもしれません)。
今年を象徴する1問を選んでくれと言われたら、迷わずこの1問を選びます。今年はコロナ関連の問題も鬼滅関連の問題も数多く出題されましたが、その中でも特に印象に残りました。クイズで問いにくい「デザイン」と「肌感覚(見る機会の増減)」を「共通項」で問うている名問です。
『鬼滅の刃』の黒と緑の市松模様をどうやってクイズにしようかなと考えていたらこの問題に出会ったので、感動するやら悔しいやらでした。ホッチキスさんの自作問題みんはやは本当に面白く、これ以外にも面白い問題にたくさん出会うことができました。


・問題集『4×4×4』

(片山智さん、高野碧さん)
両名が9月に行った企画の問題と記録が載っています。同期のよしみで私も参加させていただきました。易しめ〜普通の難易度帯ながらも、今まであまり出ていなかった問題などがうまく出題されており、解きごたえのある楽しい企画でした。
ペーパークイズのちょうどいい難易度からかなり好みで、凡ミスが悔しくて解いて採点した紙をスマホの待ち受け画面に設定しています。
「ベタ問ばかりという感じではないが、難しくはない」という問題が多く、色々な人がそれぞれの知識で正解できるが、きっちりと強い人は強いという、競技クイズで活躍中のお2人ならではの問題群という印象です。時々入る「なんじゃそりゃ」という問題(たぶん高野さん作)も良いアクセント。
↓こちらから購入できますので、興味のある方はどうぞ(お金をもらって宣伝しているわけではありません)。


・問題集『いろは 第1回』
(山上大喜)

私が2月に行った大会「いろは 第1回」の記録集です。自画自賛ですが、一応「自分の独断と偏見のもとに」公正に審査した結果、自分好みの問題がたくさん載っているこの問題集を選びました。
易しめの早押しクイズの問題を意識し、ベタだろうが非ベタだろうが面白ければ出すという意志のもと、自分が好きなベタ雑学系の情報と、あまり出ていなかった問題がバランスよく揃った気がしています。

例題(上2問みたいな問題がオーソドックスな問題が多いです)

Q. 発明者が最初に挑戦した際は完成に1ヶ月を要したが、現在では3.47秒が世界記録となっているパズルといえば何?
A. ルービックキューブ

Q. 熱い地面にも触れられる分厚い肉球、砂塵を防ぐための瞬膜や長いまつげ、エネルギーを蓄える背中のコブが特徴の動物といえば何?
A. ラクダ

Q. 現代の農家は「ストッポール」などの農薬を使って防いでいる、科学者ニュートンが万有引力を発見するきっかけになったと伝わることは何?
A. りんごの落果

Q. アメリカの歯医者によって発明された当初は「Fairy Floss」と呼ばれていた、歯に悪そうなお菓子は何?
A. わたあめ

ご購入はこちらから(自分の問題集なので宣伝しています)。


また、今回は2月の『いろは』を選びましたが、時系列順に私の作問の腕が上がっているので、夏〜秋にやったみんはやの『Break The Barriers』シリーズや、11月にやった佐藤顕司さんとの共同企画「第1回Q星群企画」の問題集もオススメです。よろしくお願いします。


・「いろんなものをグラフで表してみた結果www」
(カプリティオチャンネル)

サムネイルから非常におバカなこの企画。YouTubeチャンネル「カプリティオチャンネル」にて6月29日に公開された動画です。
これはもう動画を見てもらった方が早いのでネタバレはしませんが、「色々なものをグラフで表す」というコンセプトのもと、オーソドックスな問題から徐々に変化球の問題が出題されていき、サムネのおバカ問題も登場します。
この動画の最大の魅力は、何よりこの特殊なクイズにもかかわらず圧倒的な完成度の問題たち。「クイズが面白いので当然動画も面白い」というクイズ系YouTuberのお手本のような動画です。今年のYouTubeのクイズ系動画で一番面白いのは文句なく本作品でしょう。
今回の作問・ATさんは他にも面白い企画で作問を担当しており、私と私の知り合いの中で天才の呼び声高いです。
↓第2回も面白いのでぜひ。


・【VS超つねきち】ニセモノに騙されるな!有名絵画の二択クイズ
(QuizKnock ライター:山上)

またお前の問題群かと思われましたか? 貴重なご意見ですが、私が作る問題に私の好きな問題が多くなるのは自然なことなので無視します。
さて、この問題はタイトルの通り(?)、名作絵画を加工した偽物と並べ、どちらが本物かが問われる画像2択クイズです。
特にサムネにもなっている『星月夜』の問題が気に入っています。後半の問題は「ただ加工しただけ」にプラスで解説できるように作った結果、QKライターチームからも高評価をいただきました。

私は日頃から「作問者の看板となるような問題」のことを、シェフの得意料理に例えて「スペシャリテ」と呼んでいるのですが、この記事は私の「スペシャリテ」と言っていい一作になったと思っています。
私にはない画像加工技術を持った編集の方と共作できたのもとても楽しく、それも含めて良い思い出になっています。

・20回記念!自作問題総集編
(鳥居さん、みんはや企画)
いつもアヴァンギャルドな問題を「自作問題群」として「みんはや」で出題している鳥居さん。なんと20回分の企画から問題を選りすぐったのがこの企画です。
言わずと知れた名作

Q. 僕のみんはやコードは何でしょう?
A.(個人情報につき割愛)
注:割愛したのは私であり、元の問題では本当に鳥居さんのみんはやコードが答えになっています

をはじめ、

Q.【パラレルです】
全体的に湾曲した形状のネギを「曲がりネギ」といいますが、アメリカの首都はどこでしょう?
A. ワシントンD.C.(まったく違うところに飛ぶパラレルもオツなもんです。)

という、「関係ないパラレル」という一番思いつきやすいけど誰もやらない作品や、

Q.【何パラか教えませんがパラレルです】
JRAが選出している1987年の年度代表馬で、第1回はサクラスターオー、第2回はタマモクロス、第3回はイナリワン、第4回はオグリキャップ、第5回はトウカイテイオーですが、第6回は何でしょう?
A. ミホノブルボン(6パラでした。)

という、何パラか分からないという新たな作問形式のアイデアにもかかわらず、そもそも答えが分からないという鳥居さんの真骨頂、そして

Q. 本日生まれた人がローソン銀行に支店を作ると、何支店に割り当てられるでしょう?
A. スープ支店(出題したのが11月でしたからね笑 ちなみに本当に今日やったとすると、デザート支店(12月)になります。)

という、総集編にふさわしい問題まで粒揃いです。さすが総集編。スープ支店の問題が読まれたとき、そもそも支店についての知識がない以前に「いつ時点での情報か分からない」という課題を解かねばならず、クイズで感じたことのない不安定な何かを感じました。
そんな中でも、私が特に推したい問題は

Q. Google Homeに「OK, Google!江戸川コナンの正体を教えて!」と尋ねると、おそらく何と返ってくるでしょう?
A. 工藤新一(壮大なネタバレ。)

です。どうしてこうなったのか、意味が全く分からなくないですか?
Google Homeに本当にこの質問をして正しく返ってきたことが面白かったのならまだ分かります(面白さはよく分かりません)。しかし「おそらく」なのでこれは鳥居さんの創作のはず。
また、別に面白くはないですが「壮大なネタバレ」をやりたいのであれば、普通に「江戸川コナンの正体は誰でしょう?」で良いはずです。
なぜ、この2つのアイデアが組み合わさるに至ったのか。なぜ、Google Homeに聞いてみようと思ったのか。鳥居さんのセンスに合わせる以外正解する方法がないクイズであると同時に、クイズ以上に解くべき問題があるという構造です。
もしかしたら、総集編で一部が出されているから不思議なのであって、元の問題群では「Google Home」シリーズみたいなのがあったのかもしれません。しかしその場合も、依然「なぜ江戸川コナン→工藤新一をこの形式でやったのか」という謎は解決しません。
私は今まで「ナンセンス」と評価される作品の良さがほとんど分からなかったのですが、この問題で理解できた気がします。いつもやっていることをどう延長してもこうはならないという非日常・非現実こそが魅力なのです。

追記:鳥居さん自身から連絡があり、「コナンにAIスピーカーが出てこないのは、コナンの正体を言ってしまうためという都市伝説があるから」と判明しました。普通に理由があった……


個人的クイズ大賞2020  大賞

さて、いよいよ大賞の発表です。
その前に、実は今年、今までの人生で一番良いと思った問題に出会ったのですが、その問題はパーソナルな情報が関わっており、プライバシー面での課題があるため、今回は自分の中で殿堂入りとしています。

では気を取り直して、2020年の個人的クイズ大賞は……

・ 『カズレーザーが解けなかったクイズ200問』
(カズレーザー著、マガジンハウス 2020年10月29日)

です!!!!!
この問題集は「必読」という言葉がふさわしい一冊です。
2択とマルバツ、4択、理由記述、あるなしクイズ、早押しなど多様な形式のクイズが掲載されているのですが、どれをとっても新たな知識や視点に満ち溢れています。
カズレーザーさんの膨大な知識量に裏打ちされた「面白い題材」、クイズ番組に飽き足らず同人問題集まで読み込む経験に基づいた「適切な形式選び」、類稀なる「面白いこと」へのセンスが産んだであろう「新しい切り口」、どれをとっても一級品です。
単純に情報として面白い問題から、古典的な形式をいじって面白くしてきた、という問題まで硬軟自在の作問能力に、ただただ脱帽しました。早押しクイズを面白く適切に作る。あるなしクイズで新しいことをする。択一クイズで「選択肢」に作問者の視点を反映し、きっちり面白くする。これを同じ人がやっている。すごすぎです。
「解けなかったクイズ200問」ということで、新作傾向を謳った問題集ですが、ちゃんと「これはベタなんだけど……」という問題が少なかったことも驚きでした。たぶんそこらのクイズプレイヤーが同じ面白さで作ろうと思ったら、「ベタだけど知らなかった問題」がもっと混入する気がします。まあこの問題集も見る人が見ればベタなのかもしれませんが……
読んだ後は「1問100円で2万円でも買うな」と思いましたが、Kindle版のお値段は990円。安すぎです。冊子版も買おうかなと考えているところです。

さらに感動したのは、前書きにある「面白いクイズとは、明日誰かに出題したくなるクイズである」という理念が、この問題集を通してしっかりと伝わってくる点です。
理念自体に賛同するかどうかとは全く別に、「理念をクイズで実現する」ということは非常に難しく、それを可能にできる作問者は超一流と言ってよいでしょう。
もちろん最初に前書きがあったからよりそういう点が強調されたのはあるでしょうが、それを抜きにしても「明日誰かに出したい問題とは」という問いに一つ一つなんとか答えを出そうとするような(実際に出せているかはともかく)クイズの数々でした。
作問者の顔が見える、まさに「スペシャリテ」と呼ぶにふさわしい一冊でした。


以上、個人的クイズ大賞2020でした。あくまで私の個人的な評価なので、全然合わない人もいると思いますが、まあそういうものだと思ってください。
(勝手に取り上げてしまったものも多いので、何か問題があればご連絡ください)

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