自作問題解説 その4

ダイキリです。問題集の宣伝もかねて、自作問題の解説をYouTubeにアップしようとしたんですが、喋りが下手すぎて結局原稿を書くことになったので、その原稿をちょっと直してnoteに上げた方が早いという結果になりました。なので今日は口語っぽい表現が多いかもです。
なお、問題集『Break The Barriers』ご購入はこちらからお願いします。

さて、今回紹介する問題はこちらです。

Q. 蜘蛛の巣のようなスパイダーの中心に、雄牛の目のようなブルズアイ。これは、何という遊びで使われる道具?
A. ダーツ (ダーツボードのこと)

用語を使ってダーツボードの説明をしている問題ですね。
この問題を使って話したいことは、文章で出題するなら文章ならではの出題にしたいよねってことです。

以前、先輩から「クイズの問題文を聞いてる人が思い浮かべるビジュアルと、現実のビジュアルをできるだけ一致される文章表現を選ぶべき」というアドバイスをしてもらったことがあります。
現状のクイズ界だと、文章題が主流なので、そのクイズ界を広げるという意味で、ビジュアルを的確に想起させるような問題文の構成は極めて大切なことです。僕もなるほどと思いました。
と同時に、僕は逆張りオタクなので、逆に、文章ではビジュアルは伝わりきらないことを利用して、問題文では解答者は現実と違うものを思い浮かべて、答えを聞いたときに「ああ、そのことか」となるような問題が作れないかな、と思いました。
僕はビジュアルクイズ含め色々な形式のクイズを出す場に恵まれているし、ビジュアルをどうしても想起させたいならビジュアルクイズ出せばいいというところがあって、文章で出題するなら、文章を選んだ意味がある問題を出したいんですよね。

で、このダーツの問題は、スパイダーやブルズアイという生き物に関係する言葉を並べてます。知らない人にはまず蜘蛛の巣や牛の目などのビジュアルが浮かぶかもしれません。そして、答えを聞いたら、ああ、ダーツボードのことか。確かに蜘蛛の巣っぽいし、中心は目っぽいな、と納得してもらえそう。
この問題で、さっき言ったような、「文章では違うビジュアルを想起させて、答えで正解のイメージをさせる」という効果が実現してるかと言われたら正直微妙ですが、それに類する問題の一つだとは思います。

これをもう少し一般化すると、題材の刺激の種類、つまり、元々文章のものだったり、元は画像とか3次元の見た目だったり、あるいは音・聴覚刺激だったり、っていうのと、問題の刺激の種類の組み合わせを考えたときに、作問者は、出題の刺激の種類を自由に選択して面白い問題を作っていくという意識を持つべきなんじゃないかと思ってます。
例えば、雪国の書き出しを映像化する問題。最初に「この作品は何?」と問うて、暗闇の中4Dみたいに列車に揺られてる振動を感じさせてから一面の銀世界を出して、早押しさせるとか。元々小説、文章で書かれたものを、視覚や振動といった刺激で出題するわけです。卑近な例で言うと、そもそも描かれた内容から文章題で絵画を問うとか、歌詞棒読みクイズとかも、元々の刺激と出題の刺激の種類が異なるタイプの問題ですよね。

僕が最初に作問を始めたときは、競技クイズの既存の構文に沿って、「文章読み上げ」に出題の形態を固定して問題を作ろうとしてました。少し慣れてきた1年くらい前は、題材の刺激の形態に合わせた問題作り、題材がビジュアルなら問題もビジュアル、題材がオーディオなら問題もオーディオっていうのを一つの理想としていて、それができる場所、出せる場所を作る努力をしてました。
それを経て現在は、出題の刺激の種類を、既存の構文や題材からは独立して自由に選ぶ、その都度一番面白くなる出題の刺激の種類を探すというのを一つの理想としています。現実的には、作問のときにあらゆる可能性を吟味するのは難しくて、そのとき思いついたものに限定されることも多いのでしょうが、理念として、「出題形態が既存の形式や題材の形態からある程度自由であること」を意識するだけでも違うんじゃないか、と勝手に思ってます。

この理念の前提には、クイズは単純な刺激と同時に、もう少し高次元な「意味」を扱う遊びであろうという予想があります。元々、視覚刺激や聴覚刺激は、それぞれの感覚器(目や耳など)から入って、最初は脳内で別々に処理されるんですが、その後いろいろな情報と統合されて、意味などを含めた高次の処理をされるんですね。そして、クイズは、その高次の処理も明らかに必要になるような遊びだと思います。よって、題材の刺激の種類と、出題の刺激の種類をあえて変えても、意味というレベルで思考や記憶の想起ができて、楽しめるのではないかと。
もちろん、クイズの話をしているので、刺激といっても厳密に感覚器に対応しているという意味ではなく、例えば名作映画の内容をいらすとやの絵で表現するクイズとかは、どちらもビジュアルとはいえ、刺激の形態をずらした問題だと言えると思います。大事なのは、題材の原型を出題者がどこまで保つか、保ちすぎてつまらなくなることも、保たなくて荒唐無稽になることもあるでしょう。それを選択することが作問者の仕事の一つなのではないか、と。ここ1年弱くらいはそんなことを考えています。

ここまで読んでくださってありがとうございました。よければ紹介した問題が載っている問題集『Break The Barriers』を買ってくださると嬉しいです。

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