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まずゴミ箱を捨てろ

 こんにちは、椎名大往生です。 
 卿の人間性を音響に捧げ、オーディオに帰依するのだ。

 最近どうしたら若者がオーディオ趣味をしてくれるのか? という話題でSNSが持ちきりですね。

 ちなみに僕としては……おっさんである我々に今どきの若者の心が判るわけないので、ワオ……滅びかな? みたいな気はしています。

 しかし滅んだら、立派な貧民である自分達が楽しめる機材が永久にリリースされない未来へ繋がるので避けたい事態です。しかし我々個人にできることはほとんどありません。精々自分が楽しんでいる様を見せて興味を持ってもらえたら御の字といったところでしょう、それでいいと思います。

 憂いて何か過激なことをしても大抵は逆効果ですからね。

 それなら希少生物らしく、檻の中で己のオーディオを求め続けるほうが性にもあっているのではないかと思います、狂人の強みは正に狂人であることにありますからね。

 しかし地獄みたいな音響環境をSNSにただ放出するばかりでは、音響世界の販促……アピールになっていないと思います。

 オーオタにも人間アピールが必要な時と場合がある。

 一般人にカラオケに誘われた時に「クソのような音に耐えられない」と断るよりも「耳が少し悪いので」と言ったほうが角が立ちませんし、気を使ってもらえます……紳士的です。

 同様にオーディオを見て「へえこれ音が出るんだ」という反応レベルの市民達に、機材のスペックアピールをいくらしても心をつかむことは不可能です、オタクの悪い癖……死ぬべきだ。

 我々が人間の常軌を逸した生命体であるという自覚は大事です。人間社会の普通という領域の存在は、10万円のスマホは買えても10万円のオーディオは買わない。しかし我々は四則演算も怪しいオーディオチンパンジーなので、カード明細に記載された数字がよく理解できません、このあたりを理解していないと人間と交流はできないのです。

 新しい時代に即した音響の使い方を踏まえつつ、日常の中で音を出すあらゆるコンテンツをオーディオ機器を通して楽しむという、生活に根ざした文化自体を形作っていく必要があると思います。

 幸いそういう機能を持った機材が多数登場しており、メーカーも完全に無策だったわけではありません、少なくとも色々と考えてる人がいるわけです、そういう面でTEACは非常に強く応援しています。


 が、今日は別にそんなことを語るためにゴミ箱を捨てろと言っているわけではありません、前述のオーオタ人間アピールにも少し絡むので全く無関係というわけではないのですが。

 オーディオをしている環境についてのちょっとした小話になります、まあ6割がたのオーオタにも絡んできます。

 皆さんオーディオを設置した部屋の写真をSNSでよく見ると思います。不思議に思われるかもしれませんが、いかにも金のかかった美麗な部屋もあれば、こじんまりとした小綺麗な空間もありと、実に様々……しかし果たしてオーディオをする空間は常に、そんな写真映えするような環境でしょうか。

 オーディオ専用ルームならまだしも、この趣味をしている9割の環境は単なる自室の筈です。部屋は生活空間そのものであり、生きている限り部屋は荒れるはず……そう、部屋は普段絶対に汚い筈なのです。

 いかにも綺麗な、オーディオをしているというハイソさをアピールするために、掃除機とフォトショップで加工された画像にすぎません。

 ビジュアルインパクトが強烈なのでオーディオが特殊な趣味であるかのように思う一因かと思いますが、そんなことはない……大抵のオーディオ趣味者の部屋は普段汚部屋です。

 断言できる……間違いなく床に空きペットボトルとかが投げてあります。

 なので、小綺麗な部屋を見てもそれは……時折SNSで流れてくるやたらと加工臭のする、誰も彼も似たような、目がでかくて現実感の無い肌と体型と顔に見える女性?達のコスプレ写真のようなもので、いかにも金のかかっていそうな、威圧的音響画像の姿に慄く必要はないのですね。

 それはそれとして、そんな普段汚部屋な各自マイルームですが、趣味者の部屋は大抵物が多くなります。ヤフオクで妙なアイテムが出ていたら即座にトリッガーを叩いてしまうような人種が過半数を占める趣味であるため、自然と物は部屋に増えていきます、致し方ないことです。

 しかし音響者なら常識であるように、空間にある物が多いと部屋が狭くなり、狭いだけ音が悪くなっていきます。真実音響学のことを考えると反射やら減衰距離やら色々と専門的なことが出てくるのですが、ファラオである僕は神官ではなくヒエログリフが使えませんので、この場で説法めいて解説するぐらいなら、説教癖のあるオーオタのブログかWikipediaを読んだほうがいいと思います。

 僕がいいたいのは部屋を片付けろという一点です。

 YGアコースティックのような航空宇宙力学的オーディオを所有するような富裕層でも無い限り、9割のオーオタは心の醜さ……余裕の無さが部屋と顔に現れます。荒れた部屋は己の内面なのです。

 ちなみに富裕層は一見余裕そうに見えますが、単に焼き肉とかで精神の均衡を保っているだけなので、近所の焼肉屋が潰れたりすると本性をあらわにしてきます。別に彼らが人格者というわけではないことに注意してください。オーオタはオーオタなのでしっかり殺しにはきます。

 心醜さが部屋に反映されている状態では、物理的な要因で音も悪いのだということを認識せねばなりません。しかし部屋を何時も小綺麗に片付け続けるのは限界があります、我々は日々辛い労働を強いられており、部屋を片付ける気力を保つのは容易なことではありません。

 そこで僕は考えたのです、部屋からゴミ箱を無くせばいい。

 生活空間であるマイルームからゴミ箱が無くなれば当然生活に支障をきたします、しかしながらゴミ箱があるからこそ生活空間たり得ているとも言うのです。

 この一見矛盾しつつ真理を突いた構造を利用しない手はありません。

 ゴミ箱があれば部屋でコーラを飲みながらネットを見つつ音楽を聞いてしまいます、ファミチキをかじり……油紙をゴミ箱へシュートしてしまう。

 しかしゴミ箱がなければそれも叶いません。

 ファミチキは買ったその場で食ってしまうか、リビングで胃の中に消えることでしょう、ゴミもリビングのゴミ箱に消える……部屋の中は清浄に保たれるというわけです。

 僕はこれをシュレディンガーのファミチキ現象と名付けました。

 ゴミ箱が存在するとファミチキの油紙はゴミという現象としてそこに存在してしまうのですが、ゴミ箱自体が存在しないとファミチキのゴミもそこに存在する事象として成立することは出来ないというわけです。存在しないイマジナリーゴミ箱にファミチキのゴミを捨てることはできませんからね。

 このシュレディンガーのファミチキ現象を応用することで、部屋は次第に物が少なくなっていきます、そう……もうおわかりですね。

 ゴミ箱の次に爆破するのは棚です。

 ゴミ箱が無ければゴミは発生し得ないとすれば、物を置くための棚も存在しなければ、無駄な物は増えないという現象に至ります。音響の邪魔になる無駄な家具は破壊していくに限ります。真理だろこれは。

 しかし破壊するべきでない家具も存在します、それは本棚。

 音響の知識を少し齧れば、音の反射という言葉を知ると思います。一見本棚と無関係な現象に感じますが、実は非常に重要な効果を本棚……正確には本棚に敷き詰められた本がもっています。

 整然と棚に並んだ本は、吸音・反射材にもなるのです。

 微妙に不揃いな本の列は吸音・反射拡散を自然的に行います。同様の効果は非常に高額な音響用反射材が売っていますが、これを買うぐらいなら漫画本だろうが広辞苑だろうが、本棚に詰まってさえいれば詳しい数値はともかく似たような効果をもたらしてくれます。

 ゴミ箱よりも遥かに重要度の高い家具であることは明白……本は知識を豊かにするだけでなく音も良くしてくれる、おすすめです。

 生活空間としてソリッドになったマイルームを見て暮らしづらいと感じるかもしれませんが、人間は概ね怠惰なので次第に再び汚部屋化していきます。でもそれはそれでいいのです。ここまで言ってなんですがオーディオは身構えてやるものでもないので、荒れたらリフレッシュするつもりで全部燃やしてしまいましょう。

 部屋が綺麗になる→音がよくなる→汚部屋になる→全部燃やす→部屋が綺麗になる→音が良くなる→汚部屋になる→全部燃やす。

 大事なのはこの破壊のサイクルです。

 どんな趣味にも言えることですがメリハリが必要です。

 大きな変化を強制的に与えることで刺激が生まれます。音響趣味に大きなイベントを与えることで飽きがきづらい、健やかなオーディオのためには……やはり必要なのは暴力と炎。

 そう、暴力と炎なのです。

 邪魔な家具を打ち壊し、火を放つ。

 この破壊と再生のサイクルがオーディオに求められている。


 この文章を見た貴方は既に、棚を破壊したいという意思が芽生えたことと思います、今にも家具を破壊したいと考えているに違いありません。

 しかしやりすぎれば生活に必須な物も勢い余って破壊してしまいます、注意が必要です……僕は勢い余ってベッドを爆破してしまいました。暫く寝床は床になり、健康を損なってしまいました、腰も破壊されたのだ。

 それはさながら、勢い余って味方もろともソーラーシステムでコロニーを焼いてしまうバスク・オムのようなものです。何事にも限度というものがあり、バスク・オム状態に突入すると自制が全く効かないため、生活に必要なものを焼き、コロニーに毒ガスを注入する勢いで断捨離を実行してしまいます、あまりにも危険な状態。

 なので破壊と再生は計画的に、常に自分がバスク・オムに近づいていないか、問いかける必要があるでしょう。


……バスク・オムをご存じない?


そう……


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