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【ネタバレ有】『葬式帰り』感想②

葬式帰り(創作BL) | endoakka https://www.pixiv.net/user/52618/series/64797

↑全ての元凶。
まずは何も聞かずに読んでいただくことをお勧めします。

【ネタバレ有】『葬式帰り』感想①
https://note.com/dainzia/n/n2fe0102017ab

前回の感想が作者さんに読んでいただけたようで、昨日からずっと胸がいっぱいで物思いに耽っていたのが爆発して、更に感想を書いてしまいました。
今回も初っ端からネタバレしております。





ーーーーー以下、ネタバレ注意ーーーーー













第2話までは以前に読んでいて、絵柄が凄く好みだったので、「また時間があるときに読もう」と思い、しばらくタブを開いたまま数週間が経ちました。
そして昨日、病院の待合室で続きを読んだのですが、二人の仲の良いシーンはひたすらに二人が可愛くて続きが気になり、雲行きが怪しくなり始めてからは「二人は一体どうなるのだろう?」と、ひたすら続きが気になり……

正直なところ、続きが気になりすぎて、歩道で歩きスマホをしてしまいました。(気をつけます……)

その後、帰宅してから、章雄くんが亡くなり父親が過去を語るシーンを読んだのですが、一々感慨に浸りながら読んでいたので、読むのに物凄く時間がかかりました。

章雄くんが亡くなったことが本当に悲しかったですし、
「もっと何とかならなかったんだろうか……」と繰り返し思っていますが、それは作者に対してではなく、章雄くんのパパに対してです。

でも、きっとパパも、章雄くんのことを愛していたし、殺したくなかったんだと思います。
それでも、章雄くんとの二人きりの生活で、章雄くんのせいで社会から隔絶されることや、章雄くんの欲求に応える形とは言え、どちらかと言えば被害者のような、性的対象ではない自分の子供と性行為をすることによる不愉快な気持ちを味わうこと、実の子供と近親相姦してしまうことへの罪悪感などに耐えられず、明ちゃんのママと再婚したときには、もう既にギリギリの精神状態だったんだと思います。

再婚後は章雄くんも学校に通い、陽介くんとも上手くやっているようだったので、パパも(「また何か問題を起こすんじゃないだろうか……」と諦念のような不安を抱きながらも)何とか踏みとどまっていたところで、章雄くんが陽介くんとだけではなく家庭でも問題を起こし、更には章雄くんが「またお父さんと二人きりで生活したい」と言い出して、「もう再婚生活は崩壊してしまった。また前の生活に戻るのか……。仮に陽介くんとは仲直りしたところで、章雄の性格は変わらないし、変えられない。だから、また問題を起こすだろう。こんな息子がいる以上、何度再婚したところで、上手くいくはずがない……。」と考え、耐えられなくなってしまったんだと思います。

でも、実際のところ、陽介くんはまだ章雄くんのことが好きだったし、生涯章雄くんのことだけを愛し続けているのですから、あとほんの少し我慢するだけで、二人は紆余曲折ありながらも、きっと幸せになれたのに……
と、まるで陽介くんのように繰り返し彼らのことを考え、悔しい思いをしています。

陽介くんがどこまで章雄くんの過去のことを聞いたのかは分かりませんが、大学生になって「少年犯罪の心理学」という本を読んでいたシーンがあるので、ある程度のことは聞かされたのか、予想が付いているんだと思います。
だから、きっと章雄くんのことも受け容れて、二人で抱えて生きていくことが出来たと思います。

二人が「結婚しよう」と言い出したとき、私は単にBLで結婚生活が描かれるのか好きだったので「おっ!いいぞいいぞ!」とお気楽に考えていたのですが、
今までの現実的な世界観からは突拍子なく感じられたのも事実で、
今思えば、その時既に、二人はそんな「あるはずのない幻想」を抱きながら、終わりへの道を辿っていたんだ……と気付かされました。

今までは『シックス・センス』を観ても「あー、ふーん。そういう作品なんだ〜」くらいにしか思わず、どんなに好きな漫画やアニメ、ゲームでも一度観ただけで満足してしまい、二度目を観る気になれないことが多かったのですが、
『葬式帰り』の結末を知ってから、章雄くんと陽介くんの「二人でいた時間」が愛おしくなり、「二人の過去の思い出」という目線で1話目から読み返しました。

最初読んだときは「そういう日ってあるよね〜」くらいの日常風景にしか見えなかった冒頭の避難訓練も、章雄くんのことを暗喩していたんだ……と気付きましたし、
「きっと陽介くんのことが気になってるんだろうな〜」くらいに思っていた章雄くんの目付きも、今見ると企みのある顔にしか見えず、「これが衝撃的な結末の作品を何度も観る人の気持ちなんだな……」と思い知りました。

章雄くんが陽介くんを試すための自作自演ラブレターも、「あの子か〜」と思えるように丁寧にミスリードされていて、初め読んだときはまさかミスリードのあるような作品だとは思っておらず、完全に美里ちゃんからだと思っていたので、章雄くんの過去を知っても尚、まさか「あのラブレターまでもが章雄くんの自作自演だった」とは予想だにしませんでした。

(確かに、美里ちゃんだったら絶対来るでしょう。
もしそうだったとしても告白までしてたか、それとも章雄くんと陽介くんの仲を探る程度のことを聞かれただけだったのかは分かりませんが……
それでも、章雄くんが、気まずかったり、下手に陽介くんが自分への恋心を諦めてしまったりするのを避けるために、陽介くんに「誰も来なかった」と嘘を吐いたのかな……と思っていました。)

読み返してみて初めて、章雄くんが「ごめんね」と謝って、陽介くんが「今なんで謝ったんだろう?」と思ったシーンも伏線だったことに気が付きました。
最初に読んだときは、「気を煩わせてごめん」程度の意味だったと思っていたので、章雄くんがそんなことを言っていたことすら、何気無く通り過ぎて忘れてしまっていました。

私からは、何となく章雄くんがそこまでサイコパスなように思えず、幼少期に同級生を触ったり下級生を脱がせたり、家で陽介くん似の友達を脱がせていたときも、そこまで彼らは嫌がっている感じではなかったので、そこまで周囲も目くじらを立てることは無かったんじゃないか……?と感じています。

ただ、パパに問いただされたときに出た言い訳は、自分がやましいことをしていると知っていて、予め考えていた言い訳なんだろう、とも思います。
「特別好きという訳でもない友達でも、一緒にいたらそういうことしたくなる」と言い、父親にまで欲情し始めたのは、愛着障害の一種なのかもしれませんが、章雄くん自身、やましさを感じながらも欲求を抑えることが出来ず、それを見た母親から暴力を振るわれたり、そのせいで父親が孤立していく様子は、とてもショックだったのではないかと思います。

父親も章雄くんに振り回されていましたが、章雄くん自身、自分の加害的な欲求に振り回され、そんな自分に強いコンプレックスを抱いていたんだと思います。
だから、誰にもそんなことを悟られないように気丈に振る舞って、合法的に陽介くんと付き合って性行為をしていたのでしょう。

しかし、誰にもバレないようにしながらも、学校のトイレで性行為をしたり、それを(コンプレックスを抱いていなくて、純粋に章雄くんのことが好きだった陽介くんはともかくとして)割と平然と陽介くんにトイレで待っていることを伝える様子は、「章雄くん自身、そこまでハッキリと善悪の区別が分かっていなかったんじゃないか?だからこそ、そんな自分に強いコンプレックスと、社会で生きていくことへの不安を感じていたんじゃないか?」と感じます。

「社会に受け入れられるように自分を繕いながら、加害的なほど強い欲求を抱えている」様子は、確かにサイコパスなように感じられますが、それ自体、章雄くん自身が意図的にそうしているというよりは、「社会で生きていく為にそうするしかなかったから、自然とそうなった」ように感じられます。

陽介くんのことを愛していながらも、最終的に熱を出している陽介くんを保健室で無理矢理犯すシーンは、「章雄くんが『合法的な存在』で居られないほど、強い欲求に振り回されている」ことの象徴のように思えます。

それでいて、自分を受け入れてくれた陽介くんには、単に「自分の欲求を受け入れて欲しい」というだけではなく、「自分の欲求のために、自作自演をしたりまでしてしまう、『サイコパスな自分』も受け入れて欲しい」、と心のどこかで思っており、お泊まりのときに(単に「自分の欲求を満たす」為だけなら、言わないでいたほうが疑われずに済むような)「本当の自分」を仄めかしたんじゃないか、と思っています。

章雄くんが、ただ他人を利用しようと企んでいるサイコパスに思えないのは、一緒に出掛けたがっていた陽介くんを滝の名所へ誘い出したシーンも大きな理由の一つです。
単に自分の欲求を満たす為だけならば、陽介くんの気持ちを無視して家で二人きりで会うだけでも良かったはずなのに、自分の欲求よりも陽介くんの気持ちを優先したのは、他でもなく「陽介くんを愛していた」ことを証明していると思っています。

(最終的には保健室で「別にバレてもいい」とは言っていましたが、)陽介くんと付き合ってることは内緒にしていたはずなのに、明ちゃんに「人が少なくて二人きりになれそうなところ」を率直に聞いている姿は、コミカルで微笑ましくもあり、他人を騙したり隠し事をするようなサイコパス像とは少し違うかな?と感じます。

ただ、その時点で本当に章雄くんが陽介くんと付き合ってることを隠し通そうとしていたのかも不明ですし、「本当は混んでいるのを知っていたんじゃ……」と明ちゃんを疑うシーンは、明ちゃんが章雄くんに好意を抱いていることに気付いていたことを匂わせていますし、章雄くんが普段そこまで考えて行動していることも伺わせます。

父が再婚したときから、明ちゃんへのスキンシップが過剰なことも、「善悪の区別が付かないから無意識にやっていた」というよりは、「義理の姉である明ちゃんにも『そういうこと』をしたいと感じてしまい、それを期待して半ば意図的にやっていた」という方が近いかな?と感じます。

なので、明ちゃんや美里ちゃんが章雄くんに好意を抱いていたことも、章雄くんが仕組んだことのようにも思えます。

(一見、「(恋愛や性行為にはまだ興味無さそうな)純朴で可愛い子供」「明るくて挨拶もしてくれる、普通にいい子」なのに、「やたらモテる」……。

でもまぁ明るくて優しいならそんなもんかな?

……と思っていたら、純朴そうに見えたその子供は、とんでもない欲求を抱えた化け物で、
「やたらモテる」のも、意図的に、かつ自分の意図がバレないようにしながら、自分に好意を抱いてくれるように仕組んでいる……。

と言うのが凶悪すぎて堪りません。性癖に刺さります。)

なので、もしかしたら、自分に好意を抱いている明ちゃんをたぶらかそう(?)と、わざと陽介くんと付き合ってることを匂わせるようなことを言ったのかな?という気が全くしないでもありません。

実際、明ちゃんがどういった意図で章雄くんに滝の名所を教えたのかは不明ですが、その頃は既に章雄くんへの想いは諦めていて、悪意無く本当に滝は人が少ないと思っていたから教えたんじゃないか……という気もします。

最終話では大学生になった陽介くんも「惚れっぽい」と自覚していましたから、陽介くんと章雄くんは、生い立ちに差はあれど、「似た者同士」だったんだろうな……と思います。

だからと言って、陽介くんがどうして自殺未遂をしたのかは、私にはまだよく分かりません。
章雄くん以外の人を好きになってしまいそうな罪悪感からなのか、それとも、章雄くんのように自分の好意で誰かに迷惑をかけてはいけない、と思っているのか……。

最初は「ありきたりな日常風景なのに、こんなに丁寧に描いててすごいな〜」くらいに思って何気無く読み過ごしていたのですが、その全てに意味が込められていたことを実感して、きっと、だから「まだこんな展開になるなんて予想だにしていなかった時点でさえ、何となくこの作品に惹かれた」のだろうし、きっと作者も「ありきたりな日常風景に見えても実はその全てに理由が込められているからこそ、その一つ一つを丁寧に描くことが出来た」のだろうし、何よりも「作者が二人へ物凄く大きな愛情を抱いているから、こんなに長い作品を描ききったり、リメイクしたりすることが出来たんだな……」と感服いたしました。

pixivで公開されていた「Summer Sunshine」も読みました。
「葬式帰り」では幸せ一色でイチャイチャして過ごしていた「夏休み」が、今回は失恋一色で過ごしている描写が対照的に感じられ、とてもエモい気持ちになりました。
「死んだ父からもらった栞に恋をしているし付き合ってる(しかもその栞は男の子だと思ってる)」というのが、最高に気が狂ってて性癖に刺さりすぎました。
失恋して海を見に行こうと旅立ったのに、結局夢の中でしか海を見ずに、好きな男の子に呼び出されて新幹線に金をかけてまで秒で帰宅してしまう瞬くんがチョロすぎて最高でした。
あと圭介くんのメッセージ可愛いすぎて最高です。
このお話はこれで完結しているようですが、今後二人がどうなっていくかも気になりました。

合同誌に寄稿されていた『あなたも星になれる』も、導入が突拍子もなくて非常に気になります。
過去の合同誌は主宰者さんのBoothで通販されているようなので、大人しく通販が開始されるのを待とうと思います。

「横谷さんって、他にはどんな漫画を描いてきたんだろう?」と非常に興味を持ちましたし、是非読んでみたいと思っています。
「過去の作品は描き直さないと、とてもじゃないが他人に見せられない」と仰っていましたが、描き直すのも大変でしょうし、何よりも横谷先生には(章雄くんや陽介くんの話を含む)新たな作品を描いて欲しい、という気持ちもあるので、そのまま公開や販売するか、フォロワーさんにだけ限定公開でもしてくれないかな……と密かに期待しています。
(もちろん、作者さんの意に沿う形でないと創作のモチベーションがもたないと思うので、少しでも抵抗があるなら無理はしないで欲しいです。)

昨日から居ても立ってもいられず、かといって鬱展開もあるしネタバレも避けたいし、何より誰彼構わず薦めて読んでもらったところで、共感してくれるとも限らないので、なかなか誰かに共有することも出来ずもどかしい思いをしながら、感慨に耽ったり、章雄くんたちのことに想いを巡らせていました。
どうしても我慢出来ずにnoteに感想を書き留めたところで、
作者さんが「noteで感想をもらって嬉しかった」と呟いておられたので、情緒が爆発して昨日から考え続けていたことを書き殴ってしまいました。
中には横谷先生の意図と違った推測もあるかもしれませんが、飽くまで一人のファンの妄想だと思っていただければ幸いです。

横谷先生のマシュマロを読んでいたら、「自分の漫画を読んで思い出した作品を教えてくれるのは嬉しい」「嘔吐フェチ」と仰っていたので、私も陽介くんの嘔吐シーンで中村汚濁先生の『超能力少女と失恋』を思い出したことを伝えようと思ったら、既に中村汚濁先生をフォローされていたので、もう読まれているのかもしれませんが、一応リンクを貼っておきます。
https://twitter.com/odaku0916/status/1446418069505511426?t=AGp6l0-41RIpEg6E-NSgqw&s=19
淡白なタッチなのに、性癖が歪みまくっている点に、横谷先生の作品に通ずるものがあると思いました。

これからも横谷先生の創作活動を応援しております……!
Twitterを拝見したところ、お仕事がお忙しそうで、お金を稼がなければ生きていけない世知辛い世の中ですし、私もお力になれなくてもどかしく感じます。
まずは何よりもご自身の健康が大事だと思いますので、無理をしない範囲で創作活動を楽しんでくださるように心から願っております。


20230517 18:00追記

横谷さんへのマシュマロでの感想と返信を読んでいたら、章雄くんと母親の関係も一考の価値があると思い、ざっくり考えてみました。

母親が章雄くんを愛せなかった理由
①母親自身に異常があった
②章雄くんの異常に気付いていた?
③そもそも「子供が好き」「子供が欲しい」とは思ってない女性が子供を産んだら、大体こうなるのでは?
④夫のことも、都合が良いから結婚しただけで、そこまで愛してなかった?(「外泊が多い」と語られていたのも、他に恋人が居たから?)→だからその夫との子供である章雄くんも愛せなかった?章雄くんに夫と似ている部分を感じた?

章雄くんが異常に育った理由
①生まれつきである
a,母親の異常が遺伝した
b,遺伝に依らない偶発的なもの
②生育環境に問題があった
a,母親の愛情が得られなかった

母親が章雄くんを愛せなかった理由と、章雄くんが誰彼構わず性的な欲求を抱くようになった理由の相関性について、
①そもそも母親の精神に異常があり、その形質が章雄くんにも遺伝した
②母親の愛情が受けられなかったせいで愛着障害になり、誰彼構わず性的な欲求を抱くようになった
③もしかすると、母親は章雄くんが将来こうなることに勘づいていた?(これは、作中でも全くそういう描写がないのであまり可能性はないと思いますが……。①の可能性を考えるのであれば、「自分と似た子供」であると気付いていて、息子の些細な兆候にシンパシーを感じていた可能性もあるのかな、と思いました。
だとすれば、章雄くんのことを「普通の、普通以上に可愛い我が子」だと思っていた父親が、章雄くんの欲求や問題行動に振り回され、元妻の「今からでも児童養護施設に入れられないのかしら……」という言葉を思い出して、共感出来るようになってしまったのは物凄い皮肉に感じます。)

父親が章雄くんを手にかけた理由も、自分自身が限界だっただけではなく、「息子が犯罪に手を染めて誰かに迷惑をかける前に、父親である自分が責任を取ろう」という気持ちもあったんだろうなぁ、と思いました。
だからと言って、章雄くんは「自分は死んだ方が良いのかもしれない」とは思いながらも、「死にたい」とは思っておらず、再婚が決まったときに父親に首を絞められたときは涙を流していたのに……。
決して誰も悪くないのに、なんて残酷な運命なんだろう……。
と、改めて感慨に耽っています。

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