拝啓 24年目のポルノグラフィティ様

 2022年9月8日。ポルノグラフィティはデビュー23周年を迎えた。この日ばかりは全ての憂いを忘れ去って、心のワインボトルを空にしてもいい。愛が重いことには何処ぞで定評な私だけれど、至極平常な心でラブレターを書き綴りたいと思う。ハッピーハッピーコングラチュレーションアイオールウェイズラブユーフォーエバー。



 1年前は、こんなに毎日飽きもせず彼らを好きでい続けるだなんて、それでもまだ思っていなかった。私の気質上全く予測不可能なことだったとは思えない。けれど偶然から引き寄せられたきっかけだったために、漠然とした不安を抱いていたのかもしれない。しかし出会いは偶然に、ラブストーリーも突然に。


 2019年、ポルノグラフィティはデビュー20周年のアニバーサリーイヤーを迎えた。「神vs神」と冠したドームライヴは2日間共に満員御礼だったという。なぜ当日まで「チケット売れるかな〜」と本人たちは心配していたのか皆目わからないが、彼らが低姿勢なのは今に始まったことではないので放っておく。東京ドームに集った6万人のファンは、2019年9月7日と8日にいつだってバックトゥーザフューチャーできるというから、ファンにとってそれほど思い入れのある特別なアニバーサリーライヴだったことは想像に難くない。ではポルノの二人はどうだったかというと、やはり彼らも口を揃えて「あの時のドームライヴがあったから、ファンの皆さんがあんなに僕らを愛してくれてるとわかったから、これからも頑張っていきたいと思えた」大体こんなようなことを言ってきている。羨ましいな、相思相愛じゃないか。

 しかしその1年後、2020年。世界は未知のウイルスによる恐怖と混乱の闇の中に放り込まれた。あらゆるエンタメが「そんな場合か」と非難され躊躇されてきた。ポルノの二人も、「自分たちは無力だ」と打ちひしがれていた。音楽しか届けられないこと―けれど、その「音楽」に救われたという人たちは確かにいたのだ。


 立ち止まらざるを得ない時だったかもしれない。だが、ポルノグラフィティは止まらない。ロマンスポルノと題した単発ライヴ「REUNION」は世情を鑑み自身初の現地と配信のハイブリッド型で行い、「ポルノグラフィティの全盛期はこれからです!」と謡って、新曲を披露した。翌2021年、17回目の全国ツアー「続・ポルノグラフィティ」を開催。そのツアーで「何をもってして“続”であるのか」という、自身とそしてファンへの問いかけの答えとして、2曲の新曲を届け、これからもライヴをやる意志を表してくれた。これからもポルノグラフィティが続けていくための特別なツアーとして、彼らは「続・ポルノグラフィティ」というツアータイトルを掲げてくれたのだと思う。未だ続くコロナ禍でもその先の未来の展望を抱かせてくれたような、そんな形でファンの心に強く残っている。止まる気などさらさらなく、留まる事など許してはくれない。雨はまだ降り続くかもしれないが、それでも晴れ間を探し求める心は止められない。それを改めて感じたツアーやライヴを、この2年で見せてくれたのだ。

 春に発表された全国ツアー「暁」も絶賛チケット発売中だ。ことごとく落選の憂き目に遭い続けてそろそろ泣きたくなってくるがそこは脇に置き、まずは無事の開催と完走を祈りたい。



 音楽は希望になる。



 同時にこの2年間で、ポルノはそれぞれの強みを強化した。昭仁は個人のYoutubeチャンネルを開設し、チャンネル名を「DISPATCHERS」とした。いかなる時でも光を、音楽を発信し受け取ってもらいたい。「自分の歌で何か少しでも心が明るくなれば」と彼が願った通り、ポルノのボーカルとしてよりも、一人の歌い手としての岡野昭仁を存分に見せた活動を行ってきている。昭仁自身が光なのだから、これはもう必然だった。晴一は、エンタメに宿る救いを疑わない。舞台観劇や最新のトレンドを常にチェックし続け、新しい知識を吸収していった。持ち前の好奇心は留まることを知らず、クラシック音楽にまで興味を示し、専門に携わるゲストを自身のラジオに招いたこともある。そうして自身の作詞スキルを磨き上げ、音に言葉を乗せる力は今まで以上に光を放っている。もちろんギターの腕も底上げだ。たまのゴルフやビールくらい、羽根伸ばしとして温かく見守りたい。

 1年前の9月8日、彼らは2年振りのシングル「テーマソング」をリリースした。作詞した新藤晴一曰く「明日に希望があるかどうかは知らないが、あると信じていたほうがいいな」という世界を描いたというこの曲は、彼が書くには珍しいストレートな応援歌だった。岡野昭仁の強く真っ直ぐな歌声が、聴く人の孤独と苦しみを和らげたはずだ。「嘘でもいい I can do it! I can do it! 言い切ってしまおう」には、先の見えない現実に折りたくなる膝を、今再び優しく強く添える手のぬくもりがある。

 そして今年の8月3日には、5年振りとなる12枚目のアルバム「暁」がリリースされている。そのリード曲である「暁」は公式YoutubeにMVとそのメイキングもアップされており、先日MVは再生回数100万回を超えた。アルバムと、今月22日からスタートする全国ツアー「暁」のプロモーションのためにメディアラッシュでファンに嬉しい悲鳴を上げさせ続け、ファン以外の人たちにも今のポルノグラフィティと、そしてポルノグラフィティというロックバンドの名を新たに世に知らしめた結果であった。

 リード曲「暁」のサビ詞は「血の滴る弱音を吐け 醜くとも」から始まっている。これについて作詞した晴一は「弱音を吐くって難しいじゃないですか。でも、吐き出したことで何か一息つけるだとか、救われることってあると思うんですよね。そんな意味を込めました」と語った。「暁」という言葉は広く「夜明け」を指し、しかし完全に明けきったわけではない。薄闇を残しながら徐々に視界が明るくなり、見えなかったものが見えてくる。足元を照らす、確かな夜明け。


 それぞれの活動で吸収した全てのスキルを叩き込んだアルバムが、5年振りというタイミングはなんの偶然か、暗雲立ち込め続ける世の中に放たれた希望の結晶だった。

 収録曲全曲の作詞を手掛けた晴一の魅力や強さそのままが詰め込まれた一枚には、優しいばかりの曲は実は少ない。ともすれば「暁ってタイトルのわりに暗くね…?」と捉えられがちなこのアルバムだが、けれどそこにこそ「希望」がある。わかりやすい明るさも押し付けがましくない。安い励ましには鼻白み、安易な慰めには頼りたくない。そんな複雑で、闇に沈んでしまいそうな日々を、ポルノの曲とその詞は彼らにしかできない方法でこれからも寄り添ってくれるのだろう。

 「音楽に救われた」―それはファンであり、あるいはポルノグラフィティの曲をたまたま聴いた人たちであるかもしれない。そんな彼らのために「このアルバムを強い気持で作れた」と言う昭仁の言葉に、この道に進んだ時から彼の胸にずっと灯っているであろう炎を見た。


 音楽は希望になる。

 

 2022年9月8日。ポルノグラフィティはデビュー23周年を迎えた。活動開始から24年目を迎えた今日、彼らは新たな夜明けも迎えつつある。デビュー曲「アポロ」のタイトルそのままに、高く打ちあがったロケットは未だ黄金の月に着地し安住することをよしとしない。順風満帆のように見えたデビューから、20年以上に渡る活動の中、彼らにも不安や葛藤があった。迷いながらやってきた。ポルノはここまで続いてきたのだ。そしてこれからも続いていく。

 その敬意と愛を、彼らのデビュー曲を借りて詠んで捧げてみた。これは「ポルノ短歌」というファンの間で少しずつ広まっているひとつの愛の形である。



ポルノグラフィティ23周年おめでとう


途方もない見果てぬ夢って言うんだろ? 笑い飛ばして この恋だって

届かない叶わないなんて いつだって口では言ってしまえるけどね

君の言う「愛」ってもう見つかった? 偶然になんて頼れないやつ



 17年前、当時のアルバムに収録された「グラヴィティ」という曲に「一秒と千年の間に違いはなくて」という歌詞があった。時間や時の差など、抱いた愛の前では無意味だ。もうそろそろ、24年目の彼らのファンへの想いと、ファン2年目の私の彼らへの想いの間に違いはないのだと、前より強く思ったっていい。

 晴れの日も雨の日も輝くメタルブルーのバイクのその後ろに、私はまだしがみ付いて乗り続けている。彼らがハンドルを離さない限り、歌うことを辞めない限り、汚れた手でギターに触れない限り、何より、時々薄目で現実を見たくなってもそのたびに目をつむり直して、一緒に夢を見続けてくれる限り。つまるところ、そう。ずっと大好き。

 これから何が起こるか、始まるかは誰にもわからない。暁の空は、どんな空だろう。このまま晴れるのか、雲が広がるのか、雨が降って風が吹き荒れるのだろうか。それでも改めて伝えたい。

 ポルノグラフィティ、デビュー23周年おめでとう!自信持って胸張って、これからも音楽を届けて続けてほしい!



これからもずっと、大好きで、愛してます。いつかどこかで会えたらいいな。





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