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パリの屋根の上
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(東峰書房、昭和31年1月25日、装幀想案=亀倉雄策)
パリ旅行記は見つけるとできるだけ買うようにしています。『ヨーロッパの旅』は昭和三十年(1955)に勅使河原蒼風(1900-1979)がパリやマドリッドで個展を開催したときの滞在記・旅行記です。多数入っている写真は、モノクロながら、実に興味深いものがあります。
個人的な趣味ですが、まずはセーヌ河岸の古本屋を探しました。パリ旅行者は本に興味がなくとも必ずその写真を撮ります。案の定、掲載されていました。とくに記事中にはコメントはありません。
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写真家のドアノ(ロベール・ドアノー Robert Doisneau, 1912-1994)と意気投合したというくだりがありますので引用してみます。
気どらないで、さわがないで、かなりのふざけ屋のドアノ氏とはいっぺんで仲よしになって、それこそ十年の知己的な調子になった。
はじめてのとき、友達だという天井桟敷の人々の作者で詩人のジャック・プレベールさんがいっしょにこられたが、プレベールさんはわたしの長い釣り竹の作品を馬鹿に感心してくれた。
この竹がわかるようじゃ相当なものだといったら、ドアノさんはおそらくあなたのためのいちばんいい見物人は彼だろうといったが、どうやらあとで考えてもあまりこの一言はちがわなかったようだった。
「天井桟敷の人々」は一九四五年製作・公開のフランス映画:(Les enfants du Paradis「天国(=天井桟敷)の子供たち」)。脚本をジャック・プレヴェールが書いています。プレヴェールとドアノーと三人で写っている写真も掲載されています。
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このときドアノーに注文されてボーグに使うためモデルの頭に花を生けたそうですが、それがこちら。奇抜にしたつもりが、ちょうどよく似合ってしまうのが不満のようです。
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ぼたん屋というパリで日本人が経営していたレストランやその主人の写真も案外貴重なのではないかと思いますが、ここでは藤田嗣治のアパルトマンを取り上げておきます。
その藤田画伯の家にわたしと娘の霞を遊びに連れていってくださったのは写真の木村伊兵衛さんで、さそわれたときいっしょに食事をしていた横山泰三さんも加わることになったのだった。
藤田画伯の家はアパートの一室で、かなり大きい部屋だが一部屋で、中二階が寝室になっていて、いかにも便利にそしていかにもたのしく暮していられる感じだった。
霞にはデッサンを一枚いただいたりして、木村さんも横山さんもわたしもうらやましかったのだが、まったく温雅で明朗で、素朴ななんとも申し分のない親愛さに満ちあふれた藤田画伯に感心せざるをえなかった。
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美人は得だというお話でした。たしかに可愛いお嬢さんです(検索してみますとアンディ・ウォーホルの版画のモデルにもなっていました)。ただ勅使河原霞(1932-1980)さんは、蒼風没後の1979年、草月流の2代家元を継ぎましたが、翌年、脳腫瘍のため死去しています(ウィキペディア「勅使河原霞」より)。
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