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コミュニケーションはイノベーション?〜話す量が少ない方がいい理由〜

人と話す量が少ない。

これだけ聞くと「コミュニケーション能力が低そう」とか「コミュ障?」とか考える人が多そうです(実際僕はよく言われますが笑)。

それだけで終わってしまうと僕がしょんぼりと悲しくなるので、僕の考えているコミュニケーションの理論について話してみます。

結論から言うと、コミュニケーションにおいて話す量は、全く関係ないと考えています。むしろ少ない方が好いとさえ思っています。

順を追って説明していきましょう。

コミュニケーションの目的は何か?

まずいつも通り”コミュニケーションの目的は何か?”について考えてみましょう。

辞書を引いてみると、"人がお互いに何かを伝達し合うこと"と書かれていました。…ただ僕はこの説明は少し足りない部分があると思っています。

コミュニケーションの語源はラテン語で”communis”と言い、”共有”や”共通”という意味があるそうです。つまり、何かを伝達しあった結果、”共通する考えを共有する”ことが目的です。

コミュニケーションの4つのレベル

僕の考えるコミュニケーションを図にすると、以下のようになります。

コミュニケーションの4つのレベル

コミュニケーションは大きく2つのパートに分かれています。

何かを伝達し合う部分はマーケティング。そして共通する考えを生み出す部分はイノベーションです。

要するに、効果的なコミュニケーションとは、”イノベーションを生み出すプロセス”であり、何かを伝えるだけでは足りないということです。

次にコミュニケーションの”質”について考えてみましょう。先程の図で、コミュニケーションを4つのレベルに分けています。

レベル0:伝えているけど伝わっていない状態
レベル1:片方に相手の考えが伝わっている状態
レベル2:両方に相手の考えが伝わっている状態
レベル3:両方に共通する考えが共有されている状態

レベル0:伝えているけど伝わっていない状態

まずレベル0では相手に何らかの情報を伝えてはいるけれども、相手には何も伝わっていない状態を指しています。

これは現実にもよくあります。「~しろって言ったじゃん」とか「~って伝えたよね」とか言っちゃう人はこのレベルだと考えても好いでしょう。

レベル0からレベル1に上げるために鍛えるべき能力は、相手の脳の思考回路に沿って伝えることができる能力です。具体的には、マーケティングの原則を勉強するのが近道でしょう。

レベル1:片方に相手の考えが伝わっている状態

レベル1になると、相手に自分の考えを伝わるように伝えることができるようになりました。

でもまだ効果的なコミュニケーションをしているとは言い難いです。なぜならこれは一方通行の関係であって、まだ相手から何かを伝達されていないからです。

この時、お互いがレベル1に達していれば、2人合わせてレベル2のコミュニケーションを取ることができます。もしくは片方がレベル0であっても、もう1人がレベル2以上なら、レベル2のコミュニケーションが取れます。

コミュニケーションレベルの関係性

相手を"コミュ障"扱いする人は、レベル1と考えることができます。相手がレベル1以上なら双方向のやりとりができますが、レベル0の人が相手だと一方通行の伝達しかできないからです。

レベル2:両方に相手の考えが伝わっている状態

ここからレベル2に進むためには、”傾聴力”や”聞き上手”などと呼ばれるスキルが必要になります。

このようなスキルを持っていれば、相手の”伝える能力”がまだ不足している場合でも、”伝わるように伝えられる”ことができるようになります。

レベル2でようやくお互いの考えを伝達することができました。

レベル3:両方に共通する考えが共有されている状態

ここからレベル3にステップアップするためには、マーケティングからイノベーションに替わる必要があります。

その理由を知るために、何かを伝達された時の人の反応について考えてみましょう。

この時、考えられる反応は2つあります。

1つ目の反応は、相手の考えが自分の考えより好いものと感じたのであれば、相手の考えをそのまま受け入れることです。

2つ目は、相手の考えに共感できずに、自分の考えを保持することです。

Aの情報を伝達された時の2つの反応

最初のケースは、”共通する考えを共有する”ことができたので問題ありません。

話す量が多い人というのは、たくさん話すことでA→Aになる回数を増やそうとしているわけです。

対立がある時のコミュニケーションの問題

問題になるのは2つ目のケースです。

ここでやってしまいがちなのは、相手の考えを否定して自分の考えが正しいと押し付けようとしてしまうことです。

僕は基本的に相手の考えを否定するのは避けたいと思っています。僕自身”NO”と言われるのが好きじゃないからです。

好印象を与えるサービスでは"NOと言わない”のがいいと言われていますよね。ザッポス社、スターバックス社、リッツ・カールトン社などはこれを高いレベルで実行しているように感じます。

だから僕もコミュニケーションにおいて、相手に”NO"とはあまり言いたくありません。

…そもそも相手がどんなに支離滅裂なことを言っていたとしても、それが間違っているわけではありません。相手の限定合理性や認知バイアスなどの中ではそれが正解なのです。

この時、もう1つやってしまいがちなのは”妥協”することです。妥協とは、自分や相手の考えの中で、相手に譲れそうなところを一時的、もしくは恒久的に受け渡すことを意味します。

でも”妥協した”ということは、片方、もしくはお互いの満足度が下がっていることを意味します。つまり、結果として”Win-Lose“か”Lose-Lose”になっているわけです。

僕の好きな本の1つに、エリヤフ・ゴールドラットさんの『The Choice』という本があります。

この本の中で、ゴールドラット博士は”すべての対立は解消できる”と述べています。そして僕もそれを信じています。

レベル2からレベル3のコミュニケーションに進むためには、お互いの異なる考え(AとB)を組み合わせて、”Win-Win”になる新しく共通する考え(C)を生み出さなければなりません。

元々の考えA/Bから新しく共通する考えCを共有している状態

これを実現するためには、自分の考えを変えるように話をしなければなりません。

共通する考えを共有する方法

具体的にどうしたら好いかと言われると状況によるので難しいのですが、僕の場合どうするかを述べてみます。

僕は自分と異なる意見があった場合には、まずは相手の意見をそのまま鵜呑みにします。相手の意見に対して好いか悪いかの”判断”をしないようにします。

つまり、相手の意見を正解として受け入れて、そこからなぜ自分と違う考えに辿り着くのか、疑問に思ったことを相手に聞いていきます。

手法としては”ソクラテス式問答法”に近いです。”無知の知”を得た後に相手からその”知”を得ることで、自分になかった視点を得ることができます。

もしこれを双方向に行うことができたのであれば、その考えに至った経緯や意思決定に必要な情報、その重要性(重み)を共有することができたことになります。

つまり、お互いの限定合理性が似たような状態になります。この状態で納得できる新たな結論を導き出すことができたなら、それはお互いが納得できる考えを生み出せたことを意味するはずです。

今まで自分の頭になかった新しい考えを生み出す、まさにイノベーションですよね。

あと、TOC(制約条件の理論)の”思考プロセス”を使うのも個人的にはおすすめです。

まとめ

ところで、コミュニケーションが上手くいかないことがあるのは何故なのでしょうか?

僕の考えでは、”どちらかが相手とコミュニケーションを取ることを諦めた”からです。

どちらかが感情的になって話を続けられなくなったり、時間がなくて話を切り上げて去っていくからです。

つまり、お互いが諦めなければ、いずれはレベル3に到達できるはずなのです。

京セラ社の”コンパ”、ホンダ社の”ワイガヤ”、野中郁次郎さんの”知的コンバット”は、このレベルに至れるようにする手段のように感じます。

もし”時間がない”というのが諦める原因になりやすいのであれば、話す量はむしろ少ない方が好いと思いませんか?

それによって、より短い時間で効果的なコミュニケーションを取ることができるかもしれません。

これが僕がコミュニケーションに話す量は特に関係ないと思う理由です(長い笑)


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