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神のDB(006)
(006)動き出したらとまりませんにょ~|ω・)どうぞ~
前のお話:https://note.com/daikiha/n/n64476cb52692
後のお話:https://note.com/daikiha/n/n1c42ea12050b
【Ⅰ】
『接触したか。』
沈黙の世界に音が発する。
そこは青白い光が支配している空間。
『早いな』
そこは「無」が支配している空間。
『問題ない。』
そして一切の「無駄』がない空間。
『想定どおりの対応をするだけだ』
『うむ。』
そして、再び沈黙に戻る。
【12】
『お待ちしておりました、救世主、鳴沢大樹様。』
そうボクに声を掛けた男性は、丸めがねを掛け、長髪を後ろに結び、目は少し細めでたれ目、顎鬚を生やした細身の男性だった。
如何にもこのお店にあったマスターっといった風貌。
笑顔のまま
『さあ、こちらにお掛けください。』
と、キッチンの前のカウンターへボクを促した。
ますみはカウンターの上にあったエプロンを付けながらキッチンの中に入っていった。
そんなますみを横目に改めてマスター風の男性を見た。
『はじめまして、私、レジスタンス日本支部にて支部長を任せられております「祠堂京耶(しどうきょうや)」と申します。そこにいる祠堂ますみの兄でして、また彼女が所属する第一遊撃隊のリーダーも兼任させて頂いております。以後、お見知りおきくださいませ。』
と、女の子、ますみとはまったく逆の礼儀正しい挨拶をされ、ボクは少しうろたえていた。
『はぁぁ、っと、はじめまして、ボクは鳴沢といいます。ますみさんにここに連れてきて頂きましたが、このお店が、そのレジスタンスの支部、なんですか?なんか普通のレストランみたいですけど。。。』
『はい、表向きは普通の飲食店として申請、運営をしておりますが、ここはれっきとした支部です。日本のレジスタンス所属騎士達の連絡拠点、且つ、行動拠点として使用しております。店はこじんまりしている様に見えるかと思いますが、きちんと地下まで活用して支部機能を設けておりますよ。っと、申し訳ございません、飲み物もお出ししないでいきなり説明に入ってしまいました。何かお飲みになりますか?それとももうお昼ですし、ランチに致しましょうか?』
『はぁ、って、いやいや、お気にしないでください。大丈夫ですよ、ハイ』
『いえいえ、ご遠慮しないで。そうですね、パスタとサラダでもご用意致しましょう。お飲み物は、、、ビールでよろしいですか?本日はお休みですよね?』
『いえいえ、そんな、すみません。ただ、詳しいお話も聞きたいのでアルコールでなく、普通の飲み物でいいです。オレンジジュースでいいですよ』
『アルコールも呑めないほどのヘタレなの?なっさけないなぁ。』
っと、今までキッチンの裏で作業していたますみ様の第一声がいきなりの罵倒でございましたよ、ハイ。
『こら、ますみ、そんな言い方してはいけないよ。確かに緊張してアルコールなんて呑んだら何も出来なくなるかも、とか、うまく丸め込まれるんじゃないかとか、いろいろチキン的なお考えをされていることを、こちらが気付いていても、それをあえて気付かない振りをするのがやさしさであり、主への忠誠、と言うものですよ。たく、申し訳ございません、大樹様。ますみは少しその辺の気遣いが足りなく。兄でもある私の至らないせいでございます。』『すみません、ビールください、キンキンの!』
・・・こいつら、兄妹だ。
このマスター、笑顔で物腰柔らかく、人の痛いところを着いてきやがった。
『はい、畏まりました。では、ランチを食べ終わった後に、これまでのこと、これからのことについてお話させていただきますね。』
っと、マスター(もうめんどいからマスターと呼ぶ)は何事も無かったかのように話を進めやがりました。
しばらくは特に話は無く、マスターはパスタを、ますみはサラダを作っていた。そこからはいい匂いがしてきた。たぶんにんにくをオリーブオイルで炒めている匂いだ。そのあと、トマトの匂いもしてきた。そういえば、パスタ屋さんのカプリチョーザで食べたトマトとニンニクのスパゲティがすんごくうまかった記憶があるが、その匂いに似ている。このマスター、料理うまいんだなぁ。。 その奥ではますみがサラダを作っている。サラダは、、、お豆腐? ジャコも使っているようだ。アレは和風サラダかな?
っと、しばらくしてますみがサラダを持ってきた。
『ハイ、お待ちどう様。あんた、あんまり野菜食べてないでしょ?大盛りにしてあげたら、ちゃんと食べなさいよ』
と、持ってきたサラダは本当に大盛り的なビジュアルで、予想通りの豆腐とジャコのサラダ。野菜は良く使う水菜はそれほど多くなく、細くきったレタスにアスパラ、ブロッコリー&カリフラワー、とニンジン、それとこれはオクラかな? あとは少し大きめにカットしたトマトがあしらわれていた。まずは豆腐をジャコと一緒にパクっ。
『うまい。凄くおいしい。』
と、普通に感想を漏らしていた。
ますみは、ふんっ、と少しこちらをみて直ぐカウンターに入っていった。 ちょっと照れているのかなぁ?
それにこのサラダ、ドレッシングは普通のドレッシングじゃない。ごま油と塩をベースにすりゴマを振っただけのシンプルなドレッシングだ。とても野菜にも合うし、そもそもジャコに塩気があるから余計においしさを味わえる。これはビールが、
『ハイ、ご希望のキンキンに冷えたビールよ。』
と、これまた絶妙なタイミングでビールがきた。『ありがとう。』っといってビールを呑む。うん
『おいしい。このサラダと凄く合うね。ますみ、料理うまいんだぁ。』
『えっ! あ、それくらい誰でも出来るわよ。バカ。』
っと、自然に褒め言葉が出て、自然と罵声を喰らった。あ、普通に名前で呼んじゃった。
そんなやり取りを笑顔で見ていたマスターがパスタをカウンターから出してきた。
『大変お待たせいたしました。トマトとにんにくのパスタでございます。お召し上がりください。』
これまたシンプルなパスタだ。
トマトソースベースのパスタで主な具はトマトのみ。でも、匂いはにんにくが強く、食欲を掻き立てられる。一口、パクッ。
『うぉ!おいしい!凄くおいしいですね、このパスタ。』
『ありがとうございます。いつもよりにんにくは強めにしてますので、疲れも取れますし、ビールにも合うかと思いますよ。』
と、笑顔で話すマスター。う~ん、普通にいい人っぽいんだが。。
と、ビールをグビグブ呑みながら、警戒感が薄れるのを感じつつ、気を引き締め直す。
そんなボクの席の隣にますみがサラダと飲み物を持って隣に座り、マスターがパスタを渡した。
パスタを食べ始めた後、そんな光景を見ていたボクに
『なに見てんの?早く食べないとせっかくの兄さまのパスタ冷えちゃうじゃない。』
といって、バクバクとパスタとサラダを食べている。
まあ、確かにそれもそうだが。。。横乳がハンパない、にょぉ~r(^~^*)
『いいからさっさと食べなさいよ。見てないで』(ブスッ)
っと普通に二本の指でボクの目を突きましたますみさん。『イタァーー!』
『ははは、もうますみとは仲良くなっているんですねぇ。さすが大樹様です。』
と、こちらもますみが目潰しをしていることなんか気にしていない風で笑顔で見当違いのこと言ってやがりますマスター。
。。。お前ら、やっぱり兄妹だぁ。。
さて、閑話休題。
ようやく楽しい?ランチも終わり、本題に。
『すみません、マスター。そちらのますみさんからは少しお話を聞いているんですが、現状についてもう少し詳しく説明が欲しいと思っています。「救世主」「レジスタンス」って、今一納得感がなくって。。。』
そう。今、感じている違和感のキーワードは「救世主」と「レジスタンス」だと思った。現実感のないこの言葉。彼らは当たり前のような言葉として使っている。ボクは今、感じている違和感を払拭するためにマスターに話を切り出した。
『そうですねぇ。』
マスターは洗い物などの片づけをすませたあとからの自然な動きでボクの方に振り向き、軽く眼鏡の真ん中を指で押しながら直し、
『確かにこれまでこの世界の「表の日常」をお過ごしになっていらっしゃいました大樹様にとっては突飛な用語ですよね。救世主やレジスタンスという用語は中世以前、又はファンタジー世界のようなこの世界とは違う世界に良く使われる用語だと思います。しかしながら、大樹様。確かに存在しております。』
そして、真っ直ぐボクの方をみて言った。
『この世界の「裏の日常」は。』
『「裏の日常」?』
『はい、例えばこの日本でいいますと、国民が政治家を選び、議会でこの国を統べている民主主義国家としての日常が「表」というならば、その政治家のみならず、この国自体の仕組みを全て管理している組織が存在している世界が、つまり「裏の日常」です。日本だけではありません。世界の全ての国、いえ、全ての人々はその組織が作り上げたこの世界に管理、統治されております。』
なんだ、なんの話になっているんだ?全ての国を、人々を管理している組織?なんだそりゃ、それじゃまるで・・・
『漫画やゲームの世界の話、じゃないか?』
ボクは思わず口に出してしまった。そう、あまりにも馬鹿馬鹿しくて、滑稽な話。
そう感じているボクにマスターは笑顔で言った。
『はい、正にその通りです、大樹様』
『え?その通りって、今の話はウソなんですか!?』
ボクは思わず声を大きくして、立ち上がって言った。
しかし、そんなボクに対し、笑顔のままマスターは首を横に振った。
『いいえ、ウソではありません。しかしながら、大樹様。あなたは的を得た言葉を発しられております。そう、「ゲーム」です。この世界は正にゲームのようなプログラムによって支配されているのです。』
プログラム?ボクはますます訳がわからなくなった。
この人はいったい何を言っているんだ?
ボクのことをバカにしているんじゃない・
『いいえ、京にぃはあなたをバカにしていないわ。全て真実よ。』
そこにますみが横から割り込んできた。
ますみはボクの目を見ながらはっきりと言った。
『私たちは、神が創ったプログラムによって、人が地上に文明を作り始めた紀元前から支配されているのよ。』
『神が創ったプログラムってなんだよ。それってどんなプログラムなんだ?』
『それは私がお答え致します、大樹様。神が創ったプログラムとは神がまだ地上に直接干渉していた時代に、地上に降り立つことなく地上の全ての生物を支配する為に開発された管理プログラムデータベースです。』
『世界を支配する管理プログラム?それってどんなことで支配なんかできるんですか?』
『はい、このプログラムは地上に起きえる全ての「事象」の可能性をコントロールできるプログラムなのです。例えば、天変地異などの自然災害が代表的です。自然災害を自在にコントロールできる、ということはどのような国も自然災害を未然に防ぐ完璧な方法などありませんから、刃向かうことは国に甚大な被害がもたらされます。手出しできません。また、「事象」は自然災害だけでなく、「知識」や「運動神経」、「超能力』など人々に備わる「才能」などもそれに当てはまります。プログラムには全ての「才能」が管理されており、また、その「才能」にアクセスさせる「天才」と言われている人間、我々は「アクセラー」とよんでいますが、この者達に専用ネットワークを繋ぐ機能もあります。組織に都合の良い人間にのみ「才能」を与えることでも、表の世界を管理しているのです。』
『神が世界を支配する為に創ったプログラム。本当にそんなものが存在するんですか?』
『はい、存在します。大樹様。この世界には確かにそのような突飛とも思われるものが存在するのです。そう、』
マスターは少し語気を強くしながらこう言った。
『「神のDB(データベース)」は存在するのです』
ボクの心に何かが来た。
胸を打ち鳴らすような強い振動のような。それは心が、いや「魂」が共鳴したような感じだった。
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