野村證券 営業失敗エピソード③ソフトバンク大損事件

株を買ってくれたのにお客様がどんどん損していく。

証券マンにとってこれほど辛いものはない。


2018年10月。


野村證券で飛び込み営業がスタートした。


当時の野村證券は4月に入社してから半年の研修期間を過ぎた後に

独り立ちという意味で飛び込み営業が開始できる。

飛び込みをやりたい!と思い野村證券に意気揚々と入社したものの、

飛び込みをスタートした時は、

お客様になってくれる人がほとんどいませんでした。

くる日もくる日も毎日150件ほど飛び込みをして、


仕事中に飛び込んでくるんじゃねぇ

という具合で断ってくる。

「社長!株をやりましょうよ!」

と言っても、

「株なんて危ないからやりたくない」
「難し過ぎてやる気にならない」
「本業に集中したいから今はそんなお金がない」
「そんな株なんかやってる時間はない」


こんなことを言われる。


でも、そんな時にめちゃくちゃ大きなチャンスが訪れた。


ソフトバンクの上場だ


え?ソフトバンクってもともと上場してなかったの?

と思われる方のために説明しておきますね。

もともとソフトバンクは上場しています。

ただそのソフトバンクは、ソフトバンクグループといって、
言ってみれば一番の親方の会社。

今回のソフトバンク上場はその子会社の通信事業のソフトバンク。

みなさんが一番馴染みのあるケータイのソフトバンクが上場することになったのです。

上場というのは、自分の会社の株式を全世界に公開して、
株を買いたいという投資家を募ることです。

そして野村證券の営業マンであるぼくは、上場するソフトバンクの株に
投資をしたいという人を探してくる役割を任されている。

実は、このソフトバンクの上場は少し前から注目されていました。
理由は主に2つ。


①通信大手キャリアという投資家にとって馴染みのある株だから
②めちゃくちゃ大規模な上場だったから


ぼくが新入社員として入社した4月くらいから、
年内にソフトバンクが上場するかもしれないということが新聞で書かれていたりしていました。


つまりこれは、営業マンであるぼくにとってどういうことかというと、


めちゃくちゃビッグチャンス。


なぜなら、ソフトバンクの株なら買ってみたいという投資家を見つけてくれば
ぼくのお客さんになってくれるからだ。


この取引をきっかけにぼくのお客さんになってもらえる人を増やそう。
そう思って飛び込みをし続けた。


やっぱり注目度の高いソフトバンクの上場だけあって、
社長に話た感触も今までとは違った。


ぼくは初めてここで1千万円を超える取引を契約することができた。


ただ、、、

これが地獄を見ることになる


今でも忘れない2018年12月19日


ソフトバンクは全世界の期待を背負って上場した。


基本上場したばかりの株というのは、世界的な注目が集まりやすく、株価が勢いよく上がりやすい。


誰もがそんなストーリーを思い描いていた。


しかし現実は違った


上場した時に一番最初につく値段を初値というのだが、
これが予想よりもだいぶ下回ってしまった。


さらにこれだけではない。


初値予想を下回ったソフトバンクの株価は、


みるみるうちに下がっていった


お客様には一律で1株1500円で買ってもらったソフトバンクの株価が
1日で1200〜1300円近辺まで下がった。


その時の支店の雰囲気は今でも覚えている。


みんな頭を抱えていた。


ぼくの直属の上司からは


半値になるぞ、ここで投げろ


そんなことを言われた。


取引をしてから初めての相場報告の連絡をお客様にした。


開口一番謝った。株価が下がっていますと。


根拠のない楽観論で、ここから株価が切り返してきますなんて口が裂けても言えなかった。


だって、この上場の日に上がると思いますと言ってお客様に買ってもらったのだから。


正直にお客様に話た。


初値がついてから株価が下がり続けています。正直なところ、半値になる可能性があります。損切りしましょう。


しかし社長はそこで株を売らなかった。


せっかく株を始めたんだから、もう少しゆっくりみていたい。証券会社も大変だな。


さすが数多くの苦労を乗り越えている社長だった。


とても冷静に判断をしていた。


その後株価は何事もなかったかのように回復していった。

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