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【スヤマ】第一章 ③

『諸刃の剣、とゆうことですねぇ。
・・・気をつけてくださいねぇ・・・
ユキさん。』

ビクンッ!!!
『・・・・・!』

『え?』

『・・・あ"い"っ!』

・・・は?


帰り道。

『・・・ユキさん。
井川さんと知り合い?』

『・・・えっ!なんでー!?
初対面だわよーぅ!!』

・・・知り合いなんだ・・・。

『スヤマくんは?
その・・・井川さん?と、
どういった繫がりなの??』

『あぁ・・・わたしは・・・・・・。


実はわたしは、
この事務所を開く少し前からの記憶がないんです。
起きたら、ベッドの上でした。
命を救ってくれたのが、
井川さんと、ケンジさんという人です。
そして井川さんたちは、
おそらく記憶を失う前のわたしを知っています。
でなければ、
ここまで親切にしてもらえる理由がわからない。
・・・本当は、非常に心苦しいんですが・・・
わかることがあまりに少なすぎて
今は頼るしかない状況なんです。
しかし・・・』

『なるほどね・・・。』

『え?』

『それってさ、
でもスヤマくんの人柄もあると思うよ?
スヤマくんがもし悪い人だったらきっと
助けてもらえてないと思う。』

『・・・・・。』

『どしたのそんなに見つめて。
そんなにあたしかわいい?』

『そうじゃなくて・・・』

『そうじゃないんかい。』

『確かに悪い人間だったら
助けてもらえてないかもしれない。
そんな風に考えたこともなかった。
ありがとう。
なんだか救われたよ。』

『そんな真っ直ぐ返さないでよバカ!』

『はぁ・・・笑
・・・まぁでもそんな風に捉えられるってことは
ユキさんもだいぶいい人なんだな。』

『・・・そんなことないよ・・・。』

『え?』

『あたしはそんな真っ当に人生歩んでないよ。』

『そうなのか?
そんな風には見えないけどな。』

『・・・ありがとね。』

『・・・?
お、おぅ・・・。』


・・・翌朝。

(はぁっ・・・はぁっ・・・)
パァンッ!!!

『うわぁっ!!!』

・・・夢か・・・
妙にリアルな夢だったな・・・

・・・!!!!!
ガバッ!
ユキがいない!!!
・・・置き手紙だ。

「いい人だったゆってくれてありがとう」・・・?
そんなのっ・・・!

trrrr・・・
【井川さん!ユキさんが!】

【いなくなりましたか?】

【えっ・・・はい・・・】

【大丈夫ですよ。
ユキは仕事に戻りました。】

【・・・え?】

【・・・ユキは、実は
ガマの屋敷に潜入している部隊の一員です。】

【え、それはつまり・・・】

【はい。そうです。】

【ユキさんはその仕事は了解済なんですか?】

【いやそれは・・・
しかし、誰かがやらなかればなりません。】

【それはあまりに・・・
そういった仕事もあることは否定しませんが。
でも・・・】

【スヤマさん。
あなたの気持ちは痛いほどよくわかります。
依頼人に寄り添うあなたの心、
それは何より大切な、崇高なものです。
しかし、
当時のユキには選択肢がなかったんですよ。】

【選択肢がなければそこにあてがうのは
あまりに身勝手で理不尽です。
わたしは、依頼人の思い以上に
その人の心の叫びに寄り添いたい。
任務を遂行するためにその叫びを見て見ぬふりはできません。

わたしは・・・!】

【・・・助けに行きますか?】

【えっ・・・!】

【・・・それもよいでしょう。
今晩あの屋敷には
多くのベスティア幹部が集まります。
いわゆる・・・そういった会が催されます。
そして、すでにユキは
ガマに目をつけられている。
組織に戻ったのは彼女の意思ですが、
どのような扱いを受けるかは想像すらできない。
しかし我々は
そこに手出しすることはできない。
あなたは・・・
彼女のために生命をかける覚悟がありますか?】

【依頼人のために生命をかける。
そんな仕事ではないんですか?】

【フッ・・・あなたらしい・・・
仕事どうこう抜きにして
実にあなたらしい思考ですね。
しかし、無茶はしないでください。
あのときも・・・】

【え?】

【いえ、なんでもありません。
わかりました。
我々も、できる限りのサポートはいたしましょう。
どうか、彼女の身を・・・
そして彼女の心を、救ってあげてください。】

心を・・・か・・・。

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