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【スヤマ】 第一章①

どうも。
毎度ありがとうございます。
「スヤマ探偵事務所」代表、スヤマと申します。

代表といっても、
わたし自身どこかで探偵のイロハを学んだわけでもなく、
半年ほど前、とある繫がりからこちらで商売を始めることになりました。
なので、従業員はわたしひとりでございます。

あまり大きなヤマはまだまだ経験不足が否めませんが、
お仕事をくださった依頼主さまとしっかり心で向き合い、
全力で解決に向かうこと。
これをモットーに日々、勤しんでおります。
よろしくお願いいたします。

さて。ご存知の通り、
この世は現在、一部を除きほぼ全ての人間が
11桁の数字によってあらゆる事柄を管理されています。
そしてここ、「ネオトーキョー」においては
「ベスティア」という組織がその管理を一手に担っております。
・・・表向きには都が管理しているように見えますが。
その実は、かなり近い距離感で、
表の都の人間が裏のベスティアに逐一申し開きをし、
その判断をも委ねているようです。
なぜそんなことを?
それは、その政治家たちも皆、
全てをベスティアによって管理されているから。
例外はないからです。
・・・なかなかショッキングなお話ですから、
ここはオフレコでお願いいたします。

ですが本来、
あまりに出過ぎた行動を取らない限り、
ベスティア本体からの攻撃というのは
そうそう起こらないものです。
なぜなら
彼らが恐れるものは、民衆が団結しての反乱。
数による反撃が一番厄介なものだからです。
しかしここ数年、
そのバランスが崩れつつある。
この管理体制というのは、
数百年前の大疫病の時代から行われていると聞きます。
その長い期間で各々が代替わりをし、
それぞれの認識が変わってきたからでしょうか。


そして・・・
【ドンドンドンドン!!!】

おっと、話しすぎてしまいましたね。
お客さんがまいら・・・
【ドンドンドンドンドンドン!!!!!】

『あーはいはいちょっと待っ・・・』
ガチャ
ドーーーーーーン!!!!!
『助けて!!!!!
・・・あれ?
なんでうずくまってんの?』

『うぅ・・・』
(いきなり開けないでください・・・)


彼女の名は、「ユキ」。
捕らえられた友人を助けようと忍び込むと、
そこは、とあるベスティア幹部の館だった。

『・・・いや無鉄砲にも程があるよ・・・』

『その時は助けようと必死だったの!
でね。』

その幹部の名は「ガマ」。
そしてその屋敷は「ガマ」の本部でありながら
ガマ本人に対しての性接待の場でもあった。
ガマは、性欲の化け物だった。

『最初はわかんなかったの。
友達以外にも捕らわれてるコたちがいっぱいいたから、
「面接に来たんですけど。」って。』

『逃げれなくなるとか考えなかったの?』

『うん。入ってから気づいた。
でね、なんとかみんな一緒に逃げたいって思って、考えたの。
いくらベスティアの人間とはいえ、
多分管理されてる数字は隠し持ってるでしょ?
それを奪って他の幹部に晒しちゃえばいーじゃんって。』

『さっきから言ってることもやってることもだいぶ過激なんだけど。』

『いやこっちだって黙ってやられるわけにはいかないわよ。
あ、あたしはまだやられてないけど。
そーじゃなくて、
女だからってナメんじゃないわよって話。』

『おっ、おぉ・・・・・。』

『でね、そのナンバーの隠し場所は
屋敷の一番奥の、やつの書斎の中だってことに
目星まではつけたの。
で、こっそり抜け出して書斎に入ったら
あの野郎、書斎で待ち構えてるわけよ。
どうやら最初っから疑われてたみたい。
で、逃げ出して、今、って感じ?』

『・・・え?』

『え?』

『今?』

『うん。さっき。』

『えっ・・・じゃあ今出たらそいつらが血眼んなってキミを探してるってこと?』

『あー・・・かもね。
キミじゃなくてユキだけど。』

『かもねって・・・
ダメだよ女のコがそんな無茶しちゃあ・・・』

『女だからってバカにしないで。
しかも捕まってんのもみんな女のコなんだよ?』

『あーそうだね。ゴメン・・・』

『ううん。
ちゃんとあたしのこと気遣ってのことでしょ?
あなたは、あたしのことちゃんと助けてくれる。
でしょ?』

『いやだってこんな風に来られたら
助けないわけにはいかないでしょう・・・。』

『じゃあ・・・
報酬は、あたしのカラダってことで、どう?』

『は?
どうって・・・は・・・?』

『・・・・・は?
あたしのカラダだよ?
好きにしてくれていーんだよ?』

『そんな自分のこと安売りしちゃだめだよ。』

『えっ・・・・・!』

『なに。』

『・・・そんな風にちゃんと見てくれたの
はじめて・・・!』

『そんなこと言ったこと自体はじめてでしょ。』

『バレたか。』

(それに一度無くした命だ。)

『えっ?』

『いや、なんでもない。
無事に解決できるかはわかんないよ?』

『うんいいよ。
あたしの命、あなたに預ける!!』


事務所創設以来、
思いがけずはじめての大きなヤマとなった。

続く→

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