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“農業レンズ”を通すと、社会がちょっと違って見えた。

みんな大好きな、いちご。

可愛くておいしいこの果物、見た目からは想像できないくらいハードワークのもと栽培されている。

どれくらいハードか。僕は特に「手入れ」が大変だと思う。

50メートルあるビニールハウスの畝と畝の間で中腰になって、

畝(うね):いちごが植えられてる山みたいに盛り上がった部分。

いちごの一粒ひと粒が太陽の光を浴びられるように、毎日毎日毎日、新しく生い茂ってくる葉っぱを寄りわけて、ヒモと竹串で留め直す。

ビニールハウス1棟につき、4列の畝間(うねま)。そして、そんなハウスが、うちの農園には13棟。

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片道50メートルをゆっくりじっくり、太ももに負荷をかけながら、四股を踏むようにねり歩く。しかも、ハウスの中は真冬でも暑い。めちゃくちゃ暑い。

このハードさは さながら、現役の高校球児も音を上げるような基礎トレメニューなわけです。

自然とのふれあいが足りてない都会のビジネスマンの方々、いつでも歓迎しますので、週末はうちの畑へ筋トレしにいらしてください(笑)

ろくでなしだった仲間と最高の苺をつくる。

僕たちは「BERRY」というブランドを立ち上げて、いちごの自社生産をしています。今年の冬が3シーズン目。畑は三重県の伊賀市にあります。

書き手の僕自身は、宮澤大樹(みやざわだいき)と申します。1991年生まれ。29歳になりました。「BERRY」を運営する遊士屋株式会社の代表をしています。

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高校球児だった僕は大学に入り、エリック・クラプトンさんと話せるようになりたいという突飛な理由から、CRAZYの森山さんや、cotreeの櫻本さんを輩出した海外ビジネス系NPOに入ったり、カナダのトロントにワーホリに行ったりと、気付けば意識高い感じに。

帰国して、HRスタートアップの関西事業立ち上げに参加、色々あって学生支社長になり、そのまま新卒入社。その会社がエン・ジャパンの傘下に入るタイミングで デザインファームに転職。観光や畜産、自治体、美容メーカー、、、などなど 事業開発や企業間連携、デジタルマーケティングのプロジェクトをさせてもらって、2017年から「いちご屋さん」になりました。

☑︎ 最高品質のいちごを世界中に届けること。
☑︎ それを「人生 生き直したいやつら」と実現すること。

この2つをブランドの柱にしています。

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手前味噌ですが、僕たちのいちごは本当にウマい。

基本的に一般流通はしていなくて、

・お客様のご自宅へ直接お届けしたり(いわゆるD2C的な)

・シェフの方々へ直接お届けしたり(勝手にD2P - Direct to Pâtissierと呼んでる)

・海外セレブや高級店向けに輸出したり(去年はコロナで大変だった)

しています。

一般流通は時代遅れだ!みたいなスタンスではなくて、

・ ギリギリまで完熟な苺を食べてほしい
・ 「僕たち自身」から買ってほしい
・ 直接感想が聞きたい&お話したい

という僕たちのエゴとわがままで、今の形をとってます。

ウサギとカメの情けない話。

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時間は遡って3年前、2017年の冬。まだBERRYの名前もロゴもなく、

コンセプトも「福祉と連携した農業をカッコよくやるのって、ステキじゃない?」くらいオボロゲにしか見えてなかった頃の話。

この事業の共同創業者で、10年以上いちごの生産と輸出をしてきた、若手なのに経験豊富で商才溢れる森川竜典の経営するいちご農園(熊本県玉名市)に、栽培研修に来ていました。

参加したメンバーは、僕のほかに3人。あえて型にはめて それぞれを掘り下げると、

・依存に苦しんだ過去を持つやつ。
・発達障がいと依存で辛い経験をしたやつ。
・十数年ぶりにひきこもりから出てきたやつ。

この、なかなかクセの強い仲間たちとともに 最初に教えてもらったのが、冒頭でお話した、高校球児も音を上げる(はずの)いちごの手入れ作業でした。

一粒1000円でも買い手のつく高級いちごを傷付けてはダメだとビビる僕たちに向かって、森川が言います。

「ここから向こうまで、誰が一番早く行けるか競争しましょ。」

急いで葉っぱをより分けていちごを傷付けたら、アウト。でも、ビビってゆっくりやってても仕事にならない。そりゃそうだ。

でも、なぜか自分が一番うまくできる自信のあった僕は、ダサいことを考えるわけです。

「わざと負けて、これから現場の中心メンバーになる3人に花を持たせてあげた方が、自信がつくんじゃない...?」

そして、手入れ競争開始。

もくもくと作業を始める3人。
余裕な感じでキョロキョロする僕。

数分後、異変に気づく。

4人の中で僕が一番遅れてる。でもまだ誤解してた。

「みんな意外と手先器用なんだな。負けすぎても嘘っぽいから、スピードあげよう。」

さらに数分後 顔をあげたら、想定の視界に誰もいない。おかしい。めっちゃ離されてる。年齢は僕が一番若い。運動も得意な方なはず。なのに、どんどん引き離される。

結局、3人全員にダブルスコア以上 離されて、最下位。

ウサギとカメどころか、自分がウサギだと勘違いしたカメ。それくらいの負け方。

そして負けたことで、僕が無自覚に持っていた思い込みに気付いて憤る。

社会不適合なのか。社会が未成熟なのか。

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条件が変われば「仕事の出来・不出来」も当然変わる

僕は、こんな当たり前のことに気付けていなかった。

「社会に適合できる人」と「適合できない人」の二種類がいるわけじゃない。

彼ら3人が、一度は社会不適合だとされたのは、彼らの持つ強みが活かせる場に出会ってなかっただけだった。

そしてどうやら僕だけじゃなくて、社会全体にそんな思い込みがありそうだった。社会不適合者なんて本当は存在しなくて、社会がまだ未成熟なだけなのに。

きっと、この時の感覚を義憤と呼ぶんだと思う。

今社会で活躍している 例えばホワイトカラーっぽい人材も、強みが時代にフィットしていただけ。逆に、いろんな理由で社会から爪弾きにされて、一度は人生を諦めかけたうちの仲間のような人間も、「強みを活かせる場」と出会えさえすれば、生き甲斐を持って歩んでいけたはず。

これだけ変化の早い時代。島国で、民族学的にも生き直しに不寛容といわれる日本だけど、ラベルをつけて思い込みに囚われるのはそろそろやめにしたい。

強みを活かして 最高においしいいちごをつくって、生き甲斐を感じながら生き直せる事業に。

「手入れ競争」をきっかけに、BERRYのコンセプトが固まっていきました。

生き甲斐を持って 生き直せる世の中に。

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そんなこんなで たくさん失敗しながらみんなで走って、3年目。

一度は人生を諦めかけた ろくでなしたちのつくるイチゴは、多分 世界でトップクラスにウマい。世界トップクラス、というと大袈裟に聞こえるかもしれないけど、

世界一を受賞しているパティスリーや、ミシュランガイドに載る料理店から御指名いただいたり、海外の百貨店に並んだり、フーディーの方々に唸ってもらったりしてるんだから、決して誇大表現じゃないと思う。

世界のトップクラスだと誇れる仕事をすること。そして、お客様と直接やりとりしている僕たちのもとには、喜びの声も直接返ってくる。これは凄いことだと思う。

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こんなふうに、生産現場で活躍してるメンバーのことを取材していただいた。良いこと言いすぎてて、僕が言わせてる疑惑が出そうなくらい。(本当に本人たちのコメントです。)

生き直しのストーリーに共感していただいて、イギリス王室御用達の陶磁器ブランド「ウェッジウッド」さんともコラボレーションさせてもらった。

なんと、ブランド創業260周年の記念キャンペーン。BERRYは創業2年目でした。

仕組みじゃなくて、共通認識を作りたい

現実的な話、いちごの事業で何人の生き直しを叶えられるの?と問われると、プラットフォームをつくるアプローチじゃないから、ぶっちゃけそんなにインパクトはないかもしれない。

でも今は、誰かのツイートが世界情勢にまで影響を与える時代。BERRYの物語が、たくさんの人の生き直しのきっかけになるかもしれない。

国民に分け隔てなく選挙権があるように。
地球の裏側とも顔を見ながら話せるように。

「生き直しができて素敵?なに当たり前のこと言ってんの?」という未来は、僕たちのいちごがきっかけで、つくられていくかもしれない。

ウェルビーイングな社会をつくるには、こういう斜め下からのアプローチも絶対必要なはずなんだ。

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そして、こんな生き直しの物語をいちご以外にもいろんな事業で作っていきたいと思っています。近々、いくつかお披露目できると思います。

「意義ある事業」と「生き直し」。大義を両輪で回しながら、走っていきたいと思います。

以上、
農業っていう角度から福祉・社会を見たら、どうしても変えたい「思い込み」に気付きました、という話でした。

長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。

BERRYのいちご、ばーちゃんに食べさせたいな。

子どもたちと一緒に食べたいな。

そんなふうに思ってもらえた方は、こちらからご予約いただけます。年明け1月以降、おいしいタイミングを見極めて、お届けさせていただきます。

この日に届けてほしい!という方は、備考欄からお伝えください。


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