散文詩「世界構造」

 ひょうきんな男がいた。
 毎日楽しそうだった。
 周りからも「毎日楽しいでしょう」と言われた。
 しかしその心のうちはどす黒かった。
 男は大金を払って白血球を雇った。
 心の煤を削り取ってくれと頼んだのだ。
 白血球は心に向かった。
 ところが間違えて胃に行ってしまった。
 胃にはガンポリープがあった。
 仕事を終えた白血球は男にレポートをした。
 男は心の煤が消えて気持ちよかった。
 ただガンレポートは受けていなかった。
 白血球にその義務はなかったからである。
 白血球も教えてやればいいものを。
 男も白血球にちょっとチップをやればいいものを。
 このように心のない世界が広がっている。
 だからガンポリープも育っていく。
 そもそもガンポリープだって生きている。
 みんな自由に生きている。
 それを誰かが固有意思でどうにかできるものでもなし。
 金持ちも車に轢かれればくたばる。
 生活保護受給者だってやりかたによっては楽しめる。
 そりゃあ個々でできないことはあるだろう。みんな同じじゃないから。
 だから相手のことを考えるのだ。
 だからといって男がガンポリープに優しくはできない。
 ガンポリープの善悪の意思は問わず殺されるのは嫌である。
 だから男は胃カメラでガンポリープを発見したら除去するし。
 二度と白血球には仕事を頼まない。
 これは宇宙も同じだ。
 太陽も存在しようと思ってそこにあるわけではない。
 そこにあったのである。
 いて座Aがブラックホール化し相対性理論に基づき宇宙が閉じるかもしれない。
 男とガンポリープの関係性も同じだ。
 あなたとこの世界との関係も同じ。
 せいぜい自己の利益つまり快楽を最大限求め生きればよかろう。
 諸行無常なんてことは言わない。
 生々流転である。
 チベット死者の書でも読んでくれ。

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