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保護 29

藤林邦夫の3分メッセージ(『生きる楽しみ』1991年版、pp.39-40。)

1960年、アメリカのノーベル賞作家、スタインベックは、旅行した時の話として、モーテルに宿泊したことを書いています。

「自分の部屋には、浴室にセロファンで包んだコップが2つあり、『お客さまを保護するため、このコップは消毒してあります』と書いてあった。トイレットのフタも紙で封印してあり『お客さまを保護するため、紫外線消毒がしてあります』とあった。どれもこれも、私を保護してくれるというのだ。何と言うことだ!」

スタインベックは、

「自分は北アフリカで、1度として手を洗ったこともないような老人に、これまた1度も洗ったこともないコップで、茶を勧められたことがあるが、歯も落ちなかったし、でき物もできなかった」

というのです。

今日、消毒済みのコップは、どこのホテルでもありますから、不思議でも何でもありません。が、スタインベックは、文明が段々と人間を弱くしているように感じたのでしょう。

それだけ、この文豪は骨のしっかりした人物で、その作品と同じように、野性味の溢れた生き方をしていたのです。

旧約聖書のヤコブ、イスラエルと言われた人の最後は、実に荘厳なもので、自分の亡き後の始末を命じ、その子らの未来を預言しました。

旧約聖書には、

「ヤコブは子らに命じ終わって、足を床に収め、息絶えて、その民に加えられた」

(日本聖書協会口語訳聖書 創世記49.33)

とあります。大往生という感がします。

そこには人工的な何の補助も介助もなく、生死を司っておられる神に全てを委ねて、神の御許に帰って行った自然な姿があります。

文明の恵みに保護されすぎて、弱くならぬよう、自分を戒めて参りたく存じます。

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<著者紹介>
藤林邦夫 1935年(昭和10年)生まれ。日本純信聖書学院自主退学、京都福音教会で、35年牧師として従事。ホザナ園園長も務めた。1992年2月26日、56歳で召天。この一連のエッセイは、亡くなる直前に、4年間にわたり、3分間テレフォン・メッセージとして書き溜めたもの。


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