【ブルアカ】メインvol.3 エデン条約編のシナリオ構造について

前書き

この記事にはブルーアーカイブ メインストーリーに関するネタバレが含まれています。
エデン条約編の第4章27話まで読んでない人は1ヶ月もかからず読み切れるので、読んでからこの記事を読んで下さい。1ヶ月もかけないと読めないのか…という見方もあるので、勧めにくいですが
それぞれのvol.で異なる生徒たちとの物語が展開されますが、特にエデン条約編は面白いと評判なので手間をかけても読む価値はあります。





エデン条約編の構造に対する違和感

第3章「私たちの物語」について

エデン条約編の第3章は、ありとあらゆる点でこのエデン条約編のピークとなるように定義されていたように思える。

  • エデン条約の調印式自体がこの章で実施される予定だった

  • 事件の発生、両学園含めた混沌とした状況

  • アズサの葛藤、決意、抵抗

  • 濃厚なヒフアズ
    ヒフミの未来を信じて進もうとする意思

  • 事件の裏に潜む大人の存在に、大人の先生が禁じ手を使う

どこを切り取ってもシナリオとして際立ち、補習授業部の最高の物語、として第3章は終わる。
というか、エデン条約自体がご破算となり、タイトル自体にもケリがついてしまった。

第4章「忘れられた神々のためのキリエ」の違和感について

第4章では、補習授業部は一切出てこない
(実際にはメンバーは出てくるが、「補習授業部」という文脈での登場ではない)
2話「不揃いなティーパーティー」の中で事後処理から遠ざけている話があるので当然でもあるが、1~3章までは常に補習授業部が主体だった。
エデン条約の話も終わっているので当然出てこない。
そうなると、なぜこの章が「エデン条約編」に含まれているのか?
単に3章エピローグでアリウスの話の種を撒いているが、エデン条約編とは別にアリウス編のようなものを立てても全然良かったはずだし、上の疑問は解決しない。
これをもとに、第4章の内容を踏まえてシナリオ構造を解釈し直す。

二重のシナリオ構造と、物語の主役

結論から言うと、エデン条約編には2つの物語があり、2つの主役たちがいる。
1つは補習授業部の物語、1章から3章まで。
3章時点で何もかも解決した物語として完結しているように見えるのは、それまですべて主役が補習授業部だったからだ。
もう1つは、ミカとサオリの物語、0章から4章まで。
4章でサオリから明かされた事実として、ミカとサオリの物語は1章より更に前、0章ともいうべき時系列が存在していた。
アリウスとの和解を本心から望んでいたミカと、それに同調しようとして「大人」に改心させられたサオリ、サオリの命令に従うふりをしてセイア暗殺(未遂)を実行したアズサ。
その後、セイア暗殺を受けて補習授業部が結成され、ミカ・サオリはアズサをスパイとして送り込む。
ミカとサオリの物語は補習授業部の物語へ影響する形で、1章以降も密接に関係し、メインストーリーから断片的に確認できる。
この2つの物語は実は「生徒の未来に無限の可能性があるし、なくてはいけない」という同じ主題を書いているが、出生や環境で結末は大きく異なるものになった。

物語の二重構造の秘匿

上記の物語のうち、ミカとサオリの物語は3章まで徹底的に秘匿されている。
2章「不可能な証明」は、作中の扱いとしては人の心をどう証明するか?という問題に集約されている。
2章、3章時点で様々な状況証拠・発言からミカの行動の理由は推定されているが、この時点ではやはり不可能な証明、あるいは信じるしかない、という扱いで、意図的にミカの物語はプレイヤーから見えないようになっている。さらに意図的なミスリードも用いている。
ミカ自身、3章3話でナギサ相手に本気でアリウス自治区への行き方を知らない、と言っているが、時系列0章時点でサオリやベアトリーチェと会っている通り、知らない訳ではない。
4章18話のサオリの言を借りるなら、ミカ自身無意識に自分自身の記憶に蓋をしていた、ということになる。
これらの手法で、「あくまで3章までの主役は補習授業部」という風にプレイヤーに認識させているものと思われる。
なお、サオリの物語はアズサとの会話の中からしか推測できないので、ミカよりも情報量が更に少ない。
サオリたちの情報が一気に出てくるのが3章エピローグなのは、ある種必然だったということになる。

余談だが、サオリの物語が4章で展開されることで、3章14話のアズサの苦しみは更に補強されている。
「友人」と「家族」の間で、友人からの初めてのプレゼントを失ってまで人殺しにならなければならなかったアズサの苦しみは想像を絶する…
いや、16話ですぐ動けるメンタル強すぎる

ミカとサオリの物語の結末

4章の様々な演出、戦闘、BGMなど、どれも非常に良いがここでは扱わない。
23話のスチル表示からの一連の演出は秒数単位で表示が固定されていてBGMとグラフィックの合わせ方が上手すぎだと思う。

26話、27話では、物語の結末が描かれている。
すべてが円満に終了したと言っていい補習授業部に対し、ミカとサオリ(アリウススクワッド、以下アリスク)の結末はかなり厳しい。
事実上中退となったアリスクメンバーはキヴォトスの学生社会を学生証なしで生きていく必要があるし、ミカの聴聞会は無事開催されたがおそらくトリニティの生徒会は再編されることになる。
ただ、課題があっても頼る先(先生)はあるし、言ってしまえばアビドスなんかも課題は何も解決してないので、彼らももう先生的には大丈夫なのかもしれない。
また、どこかのイベントでトリニティ生徒会やアリスクのその後の話があると思われるが、それはエデン条約編ではないと思われる。
というのも、エデン条約編の登場人物の物語はすべて解決してしまったからだ。
今後の展開は、百鬼夜行の悪そうな顔したケモロリに期待しましょう。

余談:先生の立場と生徒の依存度について

4章22話の通り、先生は生徒たちについて傍観者の立場を基本的に崩さない。悪い大人がいれば別だが
生徒の問題は、あくまで生徒の自主性によって解決されるべきだ」ということで、アツコの救出すら先生は指揮以上の手助けを行わない。
これと関係して考えたいのが、「先生が手助けしたことで、生徒が先生に過剰に依存しないようにする」という観点だ。
アリスクについては、25話でアツコの救出後、アリスクメンバーへいくつか助言をしてその場を立ち去っている。
アリスクはいきなり学校の所属を失ってしまったわけだが、ずっと大人に搾取されてきた彼女らがどうするかは自分で選択させたい、という先生心だ。
しかし、ミカに関しては直接大人パワーでメチャクチャ助けているし、トリニティの体制がどうなろうがミカはメチャクチャ先生に依存してしまいそうな気がする…大丈夫か?
先生の取り合いでワカモとバトるのが2周年イベントの可能性?