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酷い話の会話劇 その5

「馬と鹿と狼」
赤ずきん  木原実優
狼父   てつみち
 
赤ず  おばあさん どうしてそんなに耳が大きいの?
 
狼父  それはね お前の話をよく聞くためだよ
 
赤ず  おばあさん なんでそんなにお口が大きいの?
 
狼父  それはね それはね それはね それはね
 
赤ず  何? なんでそんなにお口が大きいの?
 
狼父  それはね お前を食べるためだよ
 
赤ず  狼さん その変装でなんで騙せると思ったの?
 
狼父  ん?
 
赤ず  その変装では さすがに騙せないでしょ
    どういう根拠で騙せると思ったの?
 
狼父  赤ずきん 怖くないの?
 
赤ず  その変装で騙せると思ったのは、とても怖い
 
狼父  そうじゃなくて、食べられるんだよ
 
赤ず  その変装をしてない普通の狼さんに食べるって言われたら
    とても怖いけど 
 
狼父  変装してても、狼は狼だよ
 
赤ず  そうなんだけど、その変装をしてる狼さんは
    ちょっとなんていうか
 
狼父  何? 言って
 
赤ず  馬鹿なんだろうなって思っちゃうから
    馬鹿の言葉って入って来なくて
 
狼父  馬鹿?
 
赤ず  馬鹿でしょ 馬と鹿で馬鹿だけど、さすがに馬鹿でしょ
 
狼父  食べられるんだよ
 
赤ず  わかってるんだけど、この変装で大丈夫だって
    思ったことを想像すると、シリアスになれない
 
狼父  なれないじゃなくて、食べられるから
 
赤ず  わかってる わかってるけど、ちょっと待って
 
狼父   つわけないよ 食べるよ
 
赤ず  食べるのを待ってって言ってない 頭を整理するのを待って
 
狼父  一緒じゃない?
 
赤ず  これを一緒だと思うなら、いいや 食べな
 
狼父  ん?
 
赤ず  半笑いのままになっちゃうけどさ 私の頭の良さを
    少しでも手にいれてくれたら嬉しい 
 
狼父  ずいぶん、冷静だね
 
赤ず  普段からこんな感じ まぁさ 馬鹿は、まず馬鹿だって
    気が付くところからだから 気が付いてね
 
狼父  うーん
 
赤ず  自分が馬鹿だってことに納得いってない?
 
狼父  まぁ
 
赤ず  そっかそっか じゃあ、いいや 忘れて
 
狼父  言い負かそうともしない?
 
赤ず  馬鹿に話しても、通じないから 
 
狼父  生意気なだね
 
赤ず  馬鹿は、理解できないと生意気で処理しちゃうんだよね
    まぁそれもそれでね
 
狼父  食べられていいの?
 
赤ず  いいわけないじゃん たださ、馬鹿だから交渉も出来ないし
    それにさ まぁ良いかなと思う
 
狼父  まぁ良いかな? どういう事?
 
赤ず  馬鹿に話しても仕方ないんだけど
 
狼父  一回、馬鹿辞めてくれない?
 
赤ず  あ~馬鹿だね 馬鹿って、すぐ単語に反応するんだよね
 
狼父  本当に辞めて
 
赤ず  わかった もう言わない
 
狼父  物分かりはいいんだね
 
赤ず  頭いいからね 
 
狼父  そう
 
赤ず  言い負かすことに何の意味もないって事を知ってるくらいには
    頭いい 
 
狼父  そっか
 
赤ず  質問してきたけど、覚えてる?
 
狼父  え? 
 
赤ず  質問してきて、答えようとしたら、話遮ってきたからさ
    何がしたいんだろうと思って
 
狼父  はぁ~ まぁまぁ うん なんで、まぁ良いかなと思うの?
 
赤ず  お祖母ちゃんとお母さんが仲悪くてさ 
 
狼父  あ~
 
赤ず  こんなに近くに住んでるのに、
お母さん一回もおばあちゃんの家に来ないの
 
狼父  あ~そうか
 
赤ず  それを私にバレてないと思ってるんだよね 
 
狼父  あ~
 
赤ず  どっちにも原因はあるんだろうから その間で立ち振る舞うのに
    疲れてたから
 
狼父  そういうの間に入るとね
 
赤ず  お母さんって、変に綺麗だから、慈愛ってより恋愛が抜けてないん
だよね お父さんと別れてからも、彼氏コロコロ変えるし
 
狼父  あ~まぁそうか
 
赤ず  お祖母ちゃんはお祖母ちゃんで、賢いから
    お母さんのそういう浅い部分を許せなくて
 
狼父  まぁそういうことあるね
 
赤ず  お祖母ちゃんは
金持ってるってこともあって、話し方が上からになるしね
    言いたいだけで、伝えたくはないんだよね
どっちもどっちでしょ
 
狼父  どっちにも似てるね
 
赤ず  綺麗で、賢い?
 
狼父  うん
 
赤ず  まぁでも、私より綺麗な人なんて腐るほどいるし
    私より綺麗な人も腐るほどいるし
    普通だよ
 
狼父  冷めてるね
 
赤ず  冷めてるのが、唯一の自分らしさかも
 
狼父  そっか 仲良くなれたらいいのにね
 
赤ず  無理なことを願うのは、まぁなんというか うん まぁね
 
狼父  今、馬鹿っていうのを我慢した?
 
赤ず  うん まぁ無理なことを無理だから
 
狼父  優しいのか? なんだろうね
 
赤ず  優しさも、醜さも 全部を冷めさせてる
    冷めてるのが私
 
狼父  いや~ はぁ~
 
赤ず  待って待って なんで泣いてるの?
 
狼父  え? 泣いてる?
 
赤ず  うん 泣かないでよ 私自体は納得してるし
    泣かれるような存在ではないよ
 
狼父  いやだって
 
赤ず  食べるってことに何かを思ったの?
    それもさ 私も食べてきてるからね
    一緒 どの生き物も他の命を貰ってるわけだから
    この場合は、植物も果実も含めた命ってことね
 
狼父  うん うん そうだけど
 
赤ず  逃げ切れるとは思わないから
    食べるなら、早くしてほしいんだけど
 
狼父  いや うん
 
赤ず  それとも、勝手に同情して食べられない?
 
狼父  いや その 
 
赤ず  なに? 思ってることあるなら言って
 
狼父  狼だって、バレたかった
 
赤ず  どういう事?
 
狼父  バレれば逃げてくれるんじゃないかというか
 
赤ず  どういう事? さすがに意味がわからない
 
狼父  その 猟師の脅されてて
 
赤ず  猟師?
 
狼父  おばあちゃんと赤ずきんを食べれば、息子を返すって
 
赤ず  ん? あ~ 猟師 お母さんの彼氏か
 
狼父  だと、思う
 
赤ず  ふーん そっか お祖母ちゃんの財産が欲しくて
    私が邪魔だったってことだ
 
狼父  いや 
 
赤ず  いいって別に そっか うーんでもそれ 
    食べたら行方不明になっちゃうけど 
いきなり2人が行方不明は、疑われそうだけどな
 
狼父  食べた後、腹から出すんだと思います
 
赤ず  え? 私たちの遺体を確認するのか
でも。、そんな事したら、狼さん死んじゃうじゃん
いいの?
 
狼父  息子が
 
赤ず  息子がってさ 
 
狼父  わかってます でも、馬鹿なんで無理な願いしていたいんです
    私が死ねば、息子は自由に生きれるって信じたいんです
 
赤ず  そっか 優しいね まぁまだ生きてるでしょ
    ただ、今回だけで終らない気がするけど
 
狼父  はい ただ、息子のためとはいえ 罪悪感に駆られて 
 
赤ず  あ~で、逃げてくれっ、あの変装をしたわけだ 
    うーん そっか
 
狼父  はい
 
赤ず  お祖母ちゃん 美味しかった?
 
狼父  え? いや 飲み込んだので味などは
 
赤ず  じゃあ、生きてるかな 
 
狼父  動かないんで、生きていても気は失ってるかと
 
赤ず  自分の命より、息子のほうが大事?
 
狼父  もちろんです 何か息子が自由になる方法ありますか?
 
赤ず  うん わかった時間との勝負だねすぐ私を飲み込んで
 
狼父  え?
 
赤ず  今回失敗した時の為に、息子は生かしているはずだから
    私が助ける 
 
狼父  ありがとうございます
 
赤ず  ありがとうございますってさ
 
狼父  え? 息子が助かるなら
 
赤ず  私たちが腹から出たら、すぐ自分で縫いな
    かなり痛いだろうけど、息子も狼さんと位したいはずだから
 
狼父  息子と暮らせるなら、なんでもします
    痛みも大丈夫です 馬鹿なんで痛み感じません
    ありがとうございます
 
赤ず  (独白)そうして、ベットの横に、糸と針を用意して
    私は狼さんの飲み込まれた 
    意識を失う瞬間に、目に光が入ってきた
    ぼやけた視線が定まると
    落胆した顔の猟師とお母さんの顔が見えた
    絶対許さない
                          おしまい
 
 
 

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