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モノローグについて

個人的には、モノローグは嫌いではない。
小説を書くときには、僕はよく一人称のスタイルを使う。
読者に直接語りかけることができるから、この一人称スタイルが好きなのだ。

しかし舞台の脚本となると、話は違ってくる。


○モノローグを使うこときに気をつけるべきこと

セリフには、2種類ある。
モノローグとダイアローグ。 
独白と会話である。

先日、モノローグを多用した脚本の舞台を見た。
どれくらいモノローグが多かったかというと、開始三分のうち二分ほどはモノローグを使っていた感じだった。
それ以降も頻繁に主役キャラがモノローグを使って、ストーリーを続けて行くというスタイルだった。

舞台に登場した主人公が、とうとうと自分の状況や気持ちを観客に向かって語るのである。

相手役との会話の最中にも、わりと頻繁にこのモノローグが差し込まれて、人物の心境などを観客に教えてくれる。

一人称で書かれた小説のイメージだ。
すべてはこのモノローグを使うキャラクターの視点で進行していく。

主役が誰なのかを観客にわからせるには、いい方法ではあるが、モノローグがはじまるたびに、僕は自分が冷めてしまう感覚になった。
心は物語に没入したいのだが、モノローグがそれをさまたげてしまうのである。

それで僕はこの作家が自分の脚本にこのスタイルを使おうと思った理由を考えてしまった。

モノローグにはどんな効果があるのだろうか。

○モノローグの効果(プラスと思える面)

○モノローグを使うことで、この物語の主人公が誰であるのかをいち早く観客にわからせることができる。(モノローグを使わなくても、これを伝える方法はいくつもあるけど)

○モノローグを使うことで、主人公の気持ちをダイレクトに伝えることができる。(観客に向かって独白をするときに、その人物は嘘をついていないだろうと思わせることができる)

○モノローグとダイアローグとのずれで、笑いを起こすことも可能となる。

この三つ以上に他に何かあるだろうか?

今度は逆に、マイナスの面を考えてみた。

○モノローグを使うことで、その瞬間、観客は今目の前で行われているものが、架空の物語の中の出来事だと思い知らされることになる。(観客は客観的になる)

○モノローグの多用によって、シーンが説明的になる。

○俳優がモノローグを使っているとき、シーンの時間は止まってしまうので、物語がその間、ぶつ切りになる印象を観客に与えてしまう。


モノローグをどう使おうと、それは脚本家の自由だ。
だが使う時には、そのマイナスの面もわかったうえで使うべきだ。

僕自身が舞台用の脚本ではあまりモノローグを使いたくないことの最大の理由は、モノローグがはじまった瞬間に観客が物語から離れてしまうという危険があるからだ。

脚本家の仕事は、観客を物語の世界に没入させることだ。
そのために登場人物をつくるし、その人物を使ってストーリーを語るのである。

できるならば観客には、物語の世界に没入したままでいて欲しいと思う。
モノローグの危険性は、それを使った瞬間に、観客が客観的になるときがあるということにある。

便利なモノローグであるが、脚本家はその危険性をしっかりとわかった上で使わなければならない。


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