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お酒の怖さ
酒屋の息子。
母親が小売りの酒店を経営していたので、子どもの頃から酒飲みの生態をよく見ていた。
酒屋には『かくち(角打ち)』といって、店内でコップ酒を飲む人がいた。
立ち飲みである。
子ども心に、母親や祖母がそのかくち客の相手をしているのを見るのが本当に嫌だった。
酒屋だけど、飲み屋じゃないのにと思っていたのだ。
でも店番をしていると、そういう客にコップ酒をついでやることになる。
彼らは本当の酒飲みたちだった。
彼らの目的は、酒を飲む、それだけなのだ。
もちろんちょっとした立ち話を楽しんではいるようだったが、ほとんどはコップ酒をグイッとあおって、また外に出ていく。
いまなら彼らがアル中であることが理解できる。
あきらかにアルコール依存症の人たちだった。
彼らがなぜ酒屋でコップ酒を飲むのか。
酒屋で飲むと、料金が安いというのが第一の理由だ。
そして、我慢ができないからだと思っていたが、あんがい違う理由があることもあとで知った。
彼らの多くは自分の家の中では、家族に酒を止められたり、制限されているので、家で満足に飲めないのである。
それで酒屋で、酒を飲んで帰るのである。
それが田舎町の酒飲みたちだった。
そういうたぐいの人が、パタッと店に来なくなる時がある。
たいていの場合は、身体を壊して入院していたりするのだった。
原因はほとんどが酒だった。
肝臓を壊して吐血したり、酒のせいによる脳障害が出たり。(運動障害が出て、歩幅が十センチのヨチヨチ歩きになったりする)
もっとも悲惨だったのは、かくちして店を出て家に帰る途中に川に落ちてしまい、翌日に、映画犬神家の一族のワンシーンのように、川面に両足を突き出して亡くなっているのが発見された人もいた。
子どもの僕には彼らが酒で人生を壊しているように見えた。
そんな酒を自分の家の者が売っているのだ。
多少の罪悪感もおぼえた。
しかし悪いのは酒ではない。飲み過ぎる彼らが悪いのだと、自分には言い聞かせた。
そしてまた知っている人が亡くなったというニュースを見た。
ニュース記事には病気で亡くなったと書いてある。
だが大元の原因は、酒だろうと思った。
酒の飲み過ぎで身体を壊し、それがもとになって亡くなってしまったのだ。
その人にとって酒は必要だったのだろうか。
酒に依存しない生き方はできなかったのか。
たらればは存在しないことはわかっている。
それは、その人の生き方なのだから。
だが悲しむ人たちがいるのは間違いない。
酒は怖いものだ。
酒の怖さをもっと多くの人たちに知ってもらいたいと思う。
ちなみに僕は酒に弱い体質なので、ほとんど飲めないので、ラッキーだと思ってます。
強い人は気をつけてください。
心から思います。
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