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2022/08/02【イギリス】英ジョンソン首相が辞任、失脚の理由と後任の人物【世界情勢】#83

今回は、アメリカの最も身近な同盟国で、最大の外交政策のパートナーであるイギリスに於いて、ボリス・ジョンソン首相の後任を決める選挙が行われていますが、ジョンソン首相がなぜ失脚することになったのかの本質的原因と、後任が誰になるか、そして選ばれるための要素が何か、その辺りのお話をしたいと思います。

ジョンソン首相の辞任

ジョンソン首相は、度重なる自身のスキャンダルや虚偽の説明で、政府高官が50人以上辞職する事態を招いた結果、7月7日、辞任を表明せざるを得ない状況となりました。
彼の人となりについて詳細は割愛しますが、その実行力と爆発的な人気で、少なくとも外交では素晴らしい活躍をしたと言って良いと思います。最大の功績は、保守党が中々実行できなかったブリグジットを実現させたことです。本当に離脱すべきだったかどうかは別として、前任のメイ政権の際に何度もEUとの離脱協定案が否決され、合意なき離脱もやむ無しか、という中で、EUとの交渉を見事に決着させ、正式離脱を実現させたのは、ジョンソン首相の人間力、交渉力でなければ出来ない仕事で、非常に大きな功績だったと思います。 
他では、コロナ対策で、非常に迅速なワクチン接種を進めて制限措置を先進国の中で最速で解除したことや、外交面に戻ると、AUKUSの実現や、日英同盟の復活とばかりにクイーンエリザベスを日本まで派遣して自衛隊との共同演習を行うなど、インド太平洋への関与を大きくアピールしたのも印象的でした。
そして、非常に評価が高いのはウクライナ支援です。日本では知られていませんが、昨年の12月からロシアは特殊部隊をウクライナに潜入させていましたので(主な目的は大統領暗殺と言われています)、イギリスも12月から特殊部隊を送り込んでゼレンスキー大統領をロンドンに亡命させようと画策したところから始まり、4月9日にG7の首相で初めてウクライナを訪問して装甲車120台と対戦車ミサイル800基、対艦ミサイルシステムなどの供給を約束するなどを行った結果、今ウクライナでは、ジョンソン氏に市民権を与えてウクライナの首相になって貰おうという署名活動が行われているほど高い人気を誇っています。

ジョンソン首相。失脚した本質的な理由とは

こういった多方面からの高い評価もありながら失脚することになる訳ですが、失脚の理由であるスキャンダルは飽くまでもきっかけであって、本質的な理由は、彼の国内政策の大きな失敗にあります。それは、インフレの加速に苦しむ国民を更に苦しませる増税政策です。
そもそも保守党は、アメリカで言うと共和党に近く、小さな政府で低い税率を目指すのが基本思想にある政党でありながら、ジョンソン首相はたびたび増税を行って来ました。まずブリグジット後、海外から投資を呼び込む政策が必須でありながら、法人税率を19%から26%に上げて有効なブリグジットのメリットを国民に示せていないあたりから始まって、直近のインフレに絡んで批判が大きいのが、気候変動対策の為の増税です。今は補助金や給付金で多少は軽減されていますが、電気代やエネルギー料金が数倍に跳ね上がる中で、今のイギリス国民の光熱費の25%は実は税金です。この環境税や、消費税の引き下げを拒否しながら、給与税を2.5%引き上げ、また、環境対策の更なる財源の為にエネルギー企業に超過利得税を課しました。

後任の保守党党首選挙


こういった増税政策に国民の反発が強い中で、後任の保守党党首選挙が行われます。
決選投票は数十万人の党員の郵便投票で9月5日に結果が発表されます。あと1か月ある訳ですが、後任候補は、スナク前財務相と、トラス外相との一騎打ちとなりますが、現状の世論調査では、トラス外相が有利な様です。スナク前財務相は、補助金や給付金などの対応でコロナ対策では評価高いものの、基本路線は増税派で、加えて外交が不透明なところがマイナスポイント、対中国も強硬路線と言い出し、英国内の孔子学院を全て閉鎖すると宣言したりなどアピールに勤めていますが、実際の手腕は不明です。一方でトラス外相は、国民の声を読んで徹底的に減税をアピールしています。実務の経験値は高く評価されていて、ジョンソン派からの支援も厚いですが、その大幅な減税政策に対する財源の議論など、まだまだこの1か月の流れ如何では、増税派か減税派か、どちらが勝つが予断を許さない状況です。
引き続き注目していきたいと思います。

今回の内容を動画で見たい方はこちら↓


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