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まっちゃんのお話 第8〜10話

▼まっちゃんのお話 ひとつ前のお話▼

●まっちゃんのお話 第8話

まっちゃんは60歳前後(正確には書かない)なのに、見た目や様子はもっと年を重ねているように見えます。
70歳半ばくらいと言っても違和感はありません。
日雇をしていて、そこから野宿になった人の中には、実年齢より見た目が老けて感じる人がたくさんいます。
過酷な環境がそうさせているのでしょうか。

日雇労働は過酷な肉体労働で身体に悪影響を及ぼすことが多々あります。
腰を壊す人がとても多く、そうなった瞬間失業者です。
また、アスベスト除去、原発内作業などの発がんリスクの高い仕事や、
土工では大量の粉塵を体内に摂取する危険性があります。
そう言ったことが影響してか、釜ヶ崎で日雇労働をしていた人たちは短命なことが多いです。
平均寿命は73歳と言われています

家主に握られていた通帳を無事に取り戻すことができました。

そこから、家賃支払いや生活費の分割管理などの支援をすることになり、
金銭面での課題はかなり改善されました。
結果的にまっちゃんが自分自身で使うことができるお金が増えました。大幅に。

しかし、まっちゃんが「家にある」と言っていたキャッシュカードを一度家主に取られてしまい、
ごっそり引き抜かれてしまうという事件が発生し、家主からそのお金を取り返しに行かなければならない事態にもなりました。
無事にキャッシュカードと共に取り返せましたが、
謎に8,000円だけは「食料を買ってあげた」と言って返してくれませんでした。

●まっちゃんのお話 第9話

まっちゃんは過去結婚していました。
こどももいるそうです。
離婚して、そこから一切の縁はないそうです。
この話はこれ以上聞くことはできませんでした。
最近はかなり減ってきましたが、
野宿状態の人の中で結婚歴があったり、こどもがいる人もいます。
こどもの里や山王こどもセンターの「こども夜まわり」で、こどもたちが野宿者に会いに行くと、
もうずっと会っていない自分のこどもを思い出して、喜んでくれる人もたくさんいます。

金銭面では安心できる状況になったのですが、まだまだ乗り越えないといけない課題があります。

その一つが「住民票」でした。

だいぶ前に設定した住民票をそのまま放置している状態でした。
幸いにまだ残っていたため、消除される前に今の住所に転入届を出す必要があります。

住民票を移していないと、いざという時に大変だったりします。

まっちゃんにその旨を伝えて、
書類を準備して一緒に役所に行こうと提案しました。
めんどくさがって断られるかなー・・・と思っていましたが、
意外にもすんなり受け入れてくれました。
関係性を構築できたからでしょうか。

歩くのが困難なので、車を出して一緒に西成区役所に行って無事に転入届を出せました。
今の家に住み始めてから1年が経っていました。

●まっちゃんのお話 第10話

通帳も取り返せて、住民票も設定できました。
しかし、まっちゃんが健康で文化的な生活を送るためにはまだまだ課題がありました。

健康面が心配なんです。
通院の結果、頭の腫瘍は良性だったのですが、
どう見ても健康には見えません。
また、歩行能力がどんどん低下しているように見えます。
歩くスピード、歩き方、歩ける距離、に変化を感じていました。
ヨタヨタとゆっくり歩き、少し歩いては休憩をして。
また少し距離を歩くと「足が痛い」と言います。
だから、極力歩きたがりませんでした。

このままだとどんどん状態が悪くなることが目に見えてました。
そこで改めてもう一度病院に行こうと提案しました。
やっぱり「大丈夫や」と言うものの、こちらも引き下がらずに説得をしました。
本来なら本人の意思を尊重すべきなのですが、今回は僕のわがままを通しました。
今の状態でまっちゃんが歩けなくなると、居宅内での孤独死がすぐに待っていると思ったからです。

実際に釜ヶ崎(以外でもそうだと思いますが)ではそういった状況で、
外に出なくなると急激に社会性や体力が衰え、そのまま孤独死してしまう人が多いのです。
最終的にまっちゃんは通院を了承してくれました。
CWに連絡し、まっちゃんの症状、状況からどこの病院が良いか一緒に検討して、すぐに医療券(通院する際に必要な書類)を発行してもらいました。

(続く)

▼次のお話▼


釜ヶ崎で稼ぎ、釜ヶ崎でほぼお金を使い切るライフスタイル。余ったお金は基本的に釜ヶ崎の支援団体に寄付してます。なので、応援していただくと、結果的に地域内の飲食店か支援団体にだいたい届くことになります( ^ω^ )