見出し画像

フランス南西部の街(15)Villefranche-de-Conflent(ビルフランシュ・ド・コンフラン)

ビルフランシュ・ド・コンフランです。
この街は一度訪れただけですが、大変印象深いですね。すごく鮮烈に記憶に残っています。

ビルフランシュ・ド・コンフランはどんな街かといいますと、いわゆる中世の城砦村です。
ペルピニャンから南西に約40kmほど、アンドラ公国方面にずーっといった渓谷沿いの山の中にあります。前にご紹介したエスピラ・ド・コンフランと同じ通り沿いです。

このあたりには数多く点在する、中世の趣を今に遺す村の一つですね。
規模はすぐに一週できるくらいささやかなものです。
ただし、ここは単なる中世っぽい集落というよりは、かなりきちんとした城砦村としての体裁を保っており、城門や城壁が堅固に備えられております。
近くの山の上には砦もあります。

城砦の様子です
山の上に砦があるのが見えます
街の入り口の門です

詳細はぼくはよくわからないのですが、「ヴォーバンの城砦群」として世界遺産にも登録されているようです。ヴォーバンさんという方がつくった城砦のひとつ、ということなんでしょうか。
「フランスのもっとも美しい村」のひとつにも認定されています。

この街は、古いというだけではなく、やっぱり街並みが美しい。
ほんとうに、初めてここに来たときは衝撃を受けました。
ぼくは、いわゆるフランスの中世の街並みを遺す村というのは、ここで初めて見たんですよね。
それまでも、パリの建築物でさえ、その辺のアパルトマンから、母親が暮らす家から、みんな100年くらい軽く経っているんだと言うことに、またそれを今でも普通に使っていると言うことにかなりなカルチャーショックを受けていたのです。
それがここは一気に中世です。年代も違うし、何より趣も全く違う。
「ほんもののおとぎ話の世界だ・・・」
ちょっと恥ずかしい表現ですが、本当にそう思いました。石でできた城門、石組みの家、木の扉、全てが小さい頃に本で読んだあの世界だと思いました。

そして何より心を動かされたのは、ここで人々が今もなお生活を営んでいるということでした。
つまり、博物館的に、または日本の古い神社や寺やお城のように、観光地として人に見せるためだけに存在しているのではなく、ちゃんと人が血を通わせてここに暮らしているということです。
具体的に言えば、もちろんおみやげ屋もあるのですが、それにまじってちゃんとパン屋、郵便局といったものが存在しているんですね。
いわゆる、そういった生活機能を残しつつ、この街が今なおかつての面影を全く残しながら存在している、そういったフランスの古い街ならではのありかたに、ここで初めて出会ったんです。

パン屋さんです
PPTは、郵便局です

何かをここで買ったとか、スペクタクルな光景を見たとかということとは関係なく、ここを訪れたことで、自分の中に、新しい価値観とも言うべき、かけがえのないなにかを手に入れたような、そんな気分でした。
また、ここに来たことで、ぼくは一気に南フランスにぐっと引き込まれましたね。
なんて、自分の想像を超えた懐の深さがあるんだろうと思いました。
本当に、ここの城門をくぐった瞬間に自分の何かが変わったと思わせる、そんな一瞬でした。

--

まあ、とはいいつつ、やはり今はほとんど観光で成り立っております。
先に書きましたように、小さな街のほとんどはおみやげ屋かレストランです。
いろいろ見ていますと、街の中にホテルもあるようですね。
こんなところに滞在したら楽しそうです・・・。

--

この近辺の街はどこもアクセスが悪いのが常ですが、ここは奇跡的に電車が通っています。
かの有名な「プチ・トラン・ジョーヌ」です。ペルピニャンから渓谷沿いに走っている黄色いかわいいトロッコ列車です。
というか、ぼくはここには車で来てしまったので実は駅がちゃんと歩いていけるところにあるのかよくわかりません。
最寄りと思われる駅の名前はビルフランシュ・ド・ヴェルネ・レ・バンになっており、同名の街は数キロ南にあるのですが、地図上の線路はどう見てもビルフランシュ・ド・コンフランに沿っているので、たぶんビルフランシュ・ド・コンフランから歩いていけるところに駅があるんじゃないかと勝手に思っています。
なんにせよ、ヴェルネ・レ・バン駅まではペルピニャンから1時間弱くらいのようです。朝とお昼と夕方に1時間に一本ずつくらいはあるようなので(今サイトで冬ダイヤを見てそれくらいでしたから、夏はもっと多いかもしれません)観光には充分ですね。

プチ・トラン・ジョーヌからの渓谷沿いの景色も素晴らしいですし、その後に巡り会えるビルフランシュ・ド・コンフランの街のたたずまいは訪れる人の心に何かを刻んでくれると思います。
ペルピニャンに滞在することがあれば、ぜひ足を延ばして訪れていただきたいです。

--

小さなかつての城砦都市が持つエスプリと信念。ビルフランシュ・ド・コンフランは、これが確固たる形をもってしっかりと主張をしている街です。
ここは死んでしまった遺跡ではありません。今もしっかりと血が巡っています。
人々の数百年の積み重ねが、今を生きる人間たちの中に現実として生きている。
そして、訪ねてきた人々ににしっかりとそれを伝える力を持っている。
本当の歴史というのはこういうものかと思います。

※この文章は2009年に書かれたものをリライトしたもので、現在では状況が違っている場合があります。ご了承ください。でも多分たいして変わっていないと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?