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フランス南西部の街(5)Agde(アグド)・Cap-d'Agde(キャプダグド)

アグド


アグドは、この近辺ではそれなりに名の知れた歴史と由緒のある街です。でも日本ではあまり知られていないかもしれませんね。

どのくらいの歴史かというと、手許に資料がないので詳しくはわからないのですが、確か11世紀とか16,17世紀とか、そのくらいの数字がここを訪問中に何度か出てきたような記憶があります。今フランス語のサイトをちょっと調べましたところ、まあそれらしい数字が書いてありましたので、おそらくそんなもんだと思います。
旧さと新しさが自然に同居している、とてもすてきな街です。

ここは建物が黒っぽい色の火山岩を使って建てられていることで有名です。
シンボルとも言うべき大きなカテドラルが街の中心にありますが、これも黒っぽい色をしていて、荘厳なたたずまいです。全体的に白っぽい色のアルルやレ・ボー・ド・プロヴァンスなどとは対照的です。

小さい街ですがちゃんと城壁もありますし、中世からの町並みや住まいがちゃんと保存されていて、これが今でも普通に生活感あふれる中で使われています。もちろんこれらの建物もみんな黒っぽい落ち着いた雰囲気です。

カテドラルです
これは役場の建物です。やっぱり同じ火山岩でできています。
城壁もあります
街の外側からカテドラルを見ています

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火山岩といってもどこの火山なんでしょう?その辺詳しいことは不明です。

※なお、この街に行くとき、同行したフランス人のアンドレが「ヴォルカン、ヴォルカン(火山)」というので、ぼくは家族に半信半疑で「街の中に火山がある街らしい」などと意味不明な説明をしていましたが、もちろんそんなことがあろうはずもなく、到着してすぐに力なく訂正することとなりました。

今では、いかにもフランスの地方のちょっとした街という雰囲気も残しつつ、たまにおみやげ屋やらギャラリーがあるというような、半観光都市といったような雰囲気です。
かわいい街並みですよね。

よく見ると、街中でも古い建物はカテドラルなどと同じ火山岩でできています。

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カテドラルのある横の公園の前の家には窓のフェイクアートがありました。
有名なのか、グーグルアースで見るとここの写真がいっぱい出てきます。

フェイクアートというか、この手の窓の絵はフランス各所でよく見かけますが、これは窓というより空まで含めた風景全体フェイクしちゃってますね。

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この町は大きな川に沿ってつくられています。
エロー川です。
どんな名前だという気もしますが、ほんとうです。
綴りで書くとHeraultですね。フランス語ではHは発音しなかったりする関係もあり、これでエロー川になります。
なにしろ、このあたりはエロー県でもありますから。
エロー川はそのまま地中海に注ぎます。ミディ運河とも関係が深く、多くの船が停泊したりクルーズしたりしています。
川岸はとってもきれいな風景が広がっていて、心なごむ落ち着いた雰囲気のとてもいいところです。

川沿いの道と船と家
水上レストランです

キャプ・ダグド

さて、アグドというと、実は海に近い方のキャプ・ダグドの方が有名かもしれません。

よく、フランスの地中海寄りの街では、海から数キロ離れたところに街の本体があり、海岸の街ではその本体の街と同じ名前に「プラージュ(海岸)」「シュルメール(海の上)」といった呼称をつけて区別している場合があります。たとえば、ちょっと離れていますが、ペルピニャンの近くのアルジュレスは、アルジュレスという街があり、何キロか離れた近くの海岸にアルジュレス・プラージュという別の街があります。

キャプ・ダグドもこれと同じです。キャプは岬、綴りではCap d'Agdeですから、キャプ・ド・アグド、すなわち「アグドの岬」です。ドとアグドは性質上続けて読んでしまうのでキャプダグドになるということです。
キャプ・ダグドはやはりアグドの街からほど近く、車で数分といったあたりの岬を中心とした海岸沿いに開けている街です。

ただし、他のこの手の街と違って、キャプ・ダグドは本体であるアグドそのものよりもはるかに開けていて規模も大きいです。
ひとことで言ってしまうと、キャプ・ダグドはもう一大リゾートタウンなんですね。

しかも、あんまり東の方のように高級でハイソサエティな感じではなく、もうちょっと俗受けのする感じのする一帯です。
すなわち、キャプ・ダグドと呼ばれている一帯の中に、

海水浴場あり
ヨットハーバーあり
ルナパークというアトラクションたくさんの遊園地あり
ディノランドという恐竜のテーマパークあり
アクアランドという名前の豊島園プールみたいなウォータースライダーとかのあるプールあり
ヨットハーバーの周りはおみやげ屋がびっしり
カフェではいつも生演奏
安めのリゾートホテルたくさん
貸別荘もたくさん
夜は安っぽい移動式カルーセルも登場(中国のニセディズニーみたいなキャラクターが登場してました)

・・・というような、ファミリーもOK、若いカップルもOK、お年寄りもOK、そんなリッチでなくてもOKといった、誰でも楽しめる楽しい楽しいプレジャーランドになっています。

まあ、フランスまできて豊島園プール、という日本からのお客さんもあんまりいないかと思いますので、そんなにガイドブック等には載っていませんが、ことヴァカンスの時期となりますと、このキャプダグドはそれはもうあり得ないほどの人の数であふれかえります。それこそヨーロッパ中の様々な国の方々がここ聖地キャプダグド目指し、遠路高速乗り継いで自家用車やキャンピング・カーではるばるやってくるわけです。まさに夢と魔法の王国、現代に蘇る十字軍伝説です。

わたくしも数年前、一度ここのアクアランドに行ったことがあります。子供たちに混じり、普通にウォータースライダーや波のプールなどを満喫してあっという間に一日たちました。まったく、すっかりここがフランスだというのを忘れてしまったくらいです。いいんだかなんだかわかりませんが・・・。

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なお、このキャプダグドはそれとは別に非常に有名なことがあります。

キャプダグドには世界的に有名なナチュリスト・クラブがあるのです。
ナチュリストとはなにかというと、バードウォッチングとかが好きな人というわけではなく、自然のままの姿が好きな人ということです。

つまりまあ、要するにヌーディストのことですね。
キャプダグドの一角は世界でも有数の規模のナチュリストのためのサンクチュアリになっておりまして、もちろんナチュリスト専用ビーチもございます。
ただし、そこに入るにはちゃんと会員証なりなんなりを提示してゲートを通過しなければならず、一般人は入ることができません(なので、ぼくももちろん行ったことはありません)。

この辺の人がキャプダグドを説明しようとすると、「バカンス時期はとても人が多くて・・えーと、ナチュリストクラブがあるところ」という感じで、二言目にはナチュリストの話が出てきます。それくらい、人々には「ナチュリストのキャプダグド」で親しまれております。

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人で賑わう夕暮れのヨットハーバーです。この近辺はおみやげ屋さんやらレストランやら、所狭しと軒を連ねています。
昼間のヨットハーバー。遊覧船みたいなものも出ているみたい。
カオスなプレジャーランドの様子を表すアトラクションたち。ニセドナルドっぽいのがいるライド、なにもかもチープなアヒルつりゲーム、馬車に宇宙船に消防車にキリンとモチーフの統一性がめちゃくちゃなカルーセル。
グーグルマップで見てもいっぱい船が停まっているのがわかります。

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キャプダグドではマルシェも週イチで開かれていて、とても大きな規模です。駐車場を全部つぶしてマルシェにしています。
おみやげというよりは食料品や生活雑貨が中心ですね。このあたりにヴァカンスで滞在している方々も利用しているようです。

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※この文章は2009年に書かれたものをリライトしたもので、現在では状況が違っている場合があります。ご了承ください。でも多分たいして変わっていないと思います。

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