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読書感想文04_『仕事で「一皮むける」』金井壽宏

 成長し続けるビジネスパーソンは,どのような企業で,どのような環境下で,どのような仕事経験を通じて成長しているのでしょうか?
 日本におけるリーダーシップ研究の第一人者である金井壽宏先生(今年度,神戸大学から立命館大学へ移られた。)と関西経済連合会人材育成委員会は,メンバー企業で経営幹部を務める20名にインタビューを行い,どのような<一皮むけた経験>を通じて経営幹部ならではの思考法や行動様式を身に付けたのか,調査結果を報告書にまとめています。
 本書は,その内容を新書として仕立て直し,より読みやすく提供したものです。

 調査協力者からは44のエピソードが語られますが、これらを大きく11に分類しています。

1.入社初期段階の配属・異動 で一皮むける
2.初めての管理職 で一皮むける
3.新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ で一皮むける
4.海外勤務 で一皮むける
5.悲惨な部門・業務の改善と再構築 で一皮むける
6.ラインからスタッフ部門・業務への配属 で一皮むける
7.プロジェクトチームへの参画で一皮むける
8.降格・左遷を含む困難な環境に直面 して一皮むける
9.昇進・昇格による権限の拡大 で一皮むける
10.ほかのひとからの影響で一皮むける
11.その他の配属・異動、あるいは業務で一皮むける

 意外にも,昇進・昇格といったポジティブ経験だけでなく,悲惨な部門への異動や降格・左遷といったネガティブ経験も<一皮むけた経験>として語られています。
 紙幅の関係上,各エピソードは比較的簡素に要約されていますが,節目に遭遇したビジネスパーソンが何を感じ,どのように振る舞い,何を学んだのか,リアリティのある物語に触れることができます。

 本書では,これらの<一皮むけた経験>が生じた時期を入社後の勤務年数別にまとめていますが,グラフを見ると入社1年目から勤務年数35年以降までほぼ一様に分布していることが分かります。サンプル数が少ないという事情はありますが,人はいくつになっても一皮むけることができる,ということが言えそうです。

 最後に,<一皮むけた経験>とリーダーシップの関係についてです。金井先生は「リーダーシップ論(=どのようなリーダーシップ行動がどのような効果を生むのか)」から「リーダーシップ開発論(=効果を生むリーダーシップ行動をどのようにして身に付けたのか)」へのシフトが必要だと主張します。
 学者のリーダーシップ理論を学ばせてもリーダーは育たない。むしろ,現にリーダーシップを発揮している実務家の経験と教訓からなる持論を借りて,リーダーを育成する必要性を指摘します。

 本書を読めば,ビジネスパーソンの先輩がその節目で何を考え,どう行動し,どう一皮むけたのかを知ることができ,自分自身が一皮むけるためのきっかけ,材料をつかむことができるはずです!


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