非常勤講師が研究費を手にする方法

非常勤は科研に応募できない

研究費は、その名の通り研究のためのお金である。文系理系を問わず、これがないと研究活動は大幅な制限を受けてしまうばかりか、場合によっては全く研究できないということにもなってしまう。研究費の確保は研究者にとって死活問題なのだ。

しかし、研究費を取り巻く状況は厳しくなる一方である。ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授が指摘するように、国が研究者に配分する研究費(科研費)も大学から支給される研究費も減少の一途をたどり、たとえ専任教員であっても研究に十分な資金を得られているわけではない。同じくノーベル賞を受賞したIPS細胞研究で有名な山中教授も、自身の研究費を稼ぐためにマラソンに出場してアピールした過去を持っている。文系理系に関係なく、研究の規模に関係なく、研究費の確保は本当に悩ましい問題なのである。

専任の教員でさえ大変な研究費の確保である。非常勤講師はなおさら大変な苦労を強いられていると言えよう。研究者が研究費を得るための手段として、科研費が最も一般的である。しかし、非常勤講師は「教育者」として雇用しているから「研究者」ではないとして、科研費の申請資格をもらえない場合がほとんどである。科研の応募には、研究者番号と所属先が必ず必要になるが、その両方が与えられないのだ。

他に考えられる手段として、学振に応募する方法がある。しかし学振もPDは通りにくい。非常勤講師であるということはPDで出すことになるはずだが、近年の傾向としてPDが通りにくくなっているのだ。

このように、非常勤講師が研究費を得ることは制度的に非常に高い壁がある。この壁を突き崩すのは、専任教員でも苦労している現状を鑑みると、相当難しいと言わざるを得ない。それゆえ、非常勤講師は実質研究費ゼロの条項にあるといえる。

研究費は何に使うか?

そもそも研究費とは何であろうか?研究費は、文字通り研究に使うためのお金である。理系では実験器具や試薬なども研究費で購入することになる。文系の場合は書籍代などが研究費に該当するだろう。他にも、研究に必要であればタブレット端末やデジタルカメラなども研究費で買うことができるし、使用が認められているものは人件費の支払いも可能である(科研費は謝金が可能)。

ただ、文系非常勤講師の場合、もっとも切実な問題は学会に参加するための旅費ではないだろうか。【5:学会編】で書いたように、若手にとって学会は非常に重要な場である。自身の将来を左右する学会である、参加できないのは相当の痛手になると思ってよいだろう。年に2回程度は全国学会に顔を出したいところだが、しかし宿泊費も含めるとその旅費は馬鹿にならない。研究費は旅費の支払いや学会費の支払いが認められているが、非常勤講師の場合これらを自腹で支払わなければならない。すると、遠い学会にはなかなか足を運べないということになる。

私自身、非常勤講師だった時には本当に苦労した。研究活動を充実させて、さらに顔を売るため多くの学会に所属したのだが、学会費の支払いと学会参加への旅費だけで給料のほとんどが飛んでいってしまったこともあった。仕方なく参加を断念した学会も多く、研究費があればといつも思っていた。自分が非常勤時代には研究費に関して助言をしてくれる人がいなかったので、自腹で払う以外に可能性がなかったのだ。あの時にこのような情報を知っておけば、少しは違ったかもしれないと思っている。

この記事を必要とする人へ

この記事は、非常勤講師が研究費を得るための方法を紹介している。もちろん学振に出せる、科研費に応募できるという方はそちらを頑張ってほしい。年齢や所属機関の関係でこれらに応募できず、給料から学会費や学会への旅費を捻出している方にこそ読んでほしい内容である。

本記事の情報量は約5,000字である。比較的少ない文字数だが、研究時間を削って行う「副業」などではなく、研究業績もあげながら研究費も稼げる方法を紹介している。基本的には研究費についての話であるが、【5:学会編】にもつながる話題も提供している、充実したものとなっている。

それでは早速進めていこう。

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