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思わず引き込まれた話のまとめ

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ついつい語り口に引き込まれて最後まで読んで感服した話のまとめ。
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2021年10月の記事一覧

『炭酸水と犬』を書いてくれた貴女へ

 Twitterを通して緩く出会ってくださった貴女へこうしてお手紙を書ける幸せを感じています。私の手は薬の副作用でぶるぶると震え、うまく字を綴ることができないので、手書きのファンレターをお送りすることができず、とてももどかしく思っていました。今こうしてnoteという媒体を通してですが、貴女にお手紙を書いてインターネットというポストに入れることとしました。  貴女の名前は砂村かいり。貴女の職業は小説家。この職業がどんなにか苦難が多く甘くないものなのか、私には想像もつきません。

直さず活かす、内向性

皆さまは、内向型と外向型という言葉をご存知でしょうか?この言葉は、心理学者のカール・グスタフ・ユングが1921年に性格分類のひとつとして使った言葉です。当時は科学的根拠がないと言われていましたが、後の研究で、内向型と外向型では脳や遺伝子に違いがあることが分かってきたそうです。 とはいえ、人間は誰もがその両面性を持ち合わせており、その度合いは年齢・環境・経験など後天的な要素によって変化するものだともいわれています。そのため現在では、先天的な特性と後天的な要素の割合は半々程度と

だれかの過去が、わたしの記憶として香るとき

ときどき、春の匂い、とか、夏の香り、というよりも、もっと濃密な空気を感じることがある。 それは、たしかに嗅覚から感じるように思われるのだが、匂いや、香りよりも、もっと具体的で存在感があって、「気配」とでも呼んだほうがいいような、そんな空気感。でも、気配という言葉を日常的に使うことはないから、私は匂いや香りという言葉をしかたなく使っている。 けれども、運動会の朝の匂いや、キャンプに行く日の香りといったものは、私だけが感じるものではないようで、同じような記憶を共有する妹に、今

友達以上、恋人未満の彼女

学生時代からの友人である加藤は、現在連絡をとっている私の唯一の友人だ。もちろん数年に一度ぐらい、ライフステージに変化があった時に連絡をくれる過去の友人や同級生が今でも数人いなくはないが、胸を張って「この人は私の大切な友人だ」と言える人間は今は「加藤」という女1人だと思っている。だが、友人というにはあまりにも軽い気がする。なので私は加藤のことを勝手に「友達以上恋人未満」だと思っている。(そっちの方が軽く聞こえてしまうのが残念でならないが) 加藤とは、今から15年以上前、私たち