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東横線Q SEATは誰が乗るのか─東急の狙いと実態─

こんにちは、だいふくです。
今、鉄道界隈で話題沸騰()の東横線Q SEATについて、東急の狙いと実態を調査しましたので、軽くまとめていきたいと思います。

Q SEATサービスとは

Q SEATとは、東急電鉄が夕方の大井町線と東横線で走っている急行列車に、大井町線は1両、東横線には2両連結し運行している座席指定サービスのことです。大井町線のQ SEATは田園都市線の混雑緩和という、近年の東急が戦い続けてきた問題と大きく絡んでいるのですが、その話はまた今度させて頂きます。
Q SEATの特徴は、既存の車両に連結することでダイヤを大きく崩すことなく、導入コストを最低限に抑えた上で運行できるようにしているところです。他社に少し遅れて導入したのも様子見していたからかもしれませんね。またデュアルシートですので、日中に無料でロング状態のQ SEAT車に乗ることもできます。

Q SEATの狙いとは

Q SEATの狙いは「お客様に選択肢をご提供」(堀江社長)し、沿線の価値を高めることのようです。つまり、列車を満席にして儲けてやる!ということではないようです。(1両45人までしか乗れないですからね) 500円と強気の料金にしたのもそういった理由があるのかもしれません。(大井町線は連日満席ですが)

東横線は短すぎる?

他社線の座席指定車の例を挙げてみても、京急ウイング号、京王ライナー、TJライナーなどどれも長距離路線ばかり。こうした郊外と都心の一方向の通勤路線は混雑が集中しやすく、また高速運転を行うことで着席需要と移動時間の短縮が成功のもとになっていると感じます。一方で、東横線は24.2kmと比較的短く、所要時間にして30分ほどの路線です。人口のボリュームである武蔵小杉〜菊名間は渋谷から通勤特急で14-23分ほどで、座席指定に乗るほどの時間ではないという指摘はSNSで大いに支持を集めました。

ターゲットは誰なのか

東急電鉄によると、「渋谷→横浜以遠の30分程度の長距離利用」をメインとしていて、「500円の値段設定でも、渋谷→日吉間や武蔵小杉→横浜以遠など、20分程度の中距離利用も1割程度ある」と見込んでいるようです。また乗車率について、「時間帯も19時以降というところで、おそらく70%程度になる」と見込んでいて、これは実に一列車あたり約63人程度が乗ることが期待されていたように思えます。そのうちの1割が約6人となり、これらの人が中距離利用をすると見込んでいました。如何にみなとみらい線の乗客に期待をかけていたかがわかります。さて、実態はどうなのでしょうか?

乗車率30%の衝撃

と、見込んでいたにも関わらず、実態は大きく異なりました。半額キャンペーン終了後の2/1に利用状況や、降車駅の調査を行いましたのでご覧下さい。

各列車の乗車率
193号 32%
201号 34%
203号 30%
211号 14%
213号 22%

なんだこれは…

降車客数ランキング(5列車の合計)
1位 横浜 65人
2位 菊名 18人
3位 綱島 12人
3位 日吉 12人
5位 小杉  6人

中距離利用者が多い…?

まず、乗車率は目標の70%を大きく割り、30%ほどにとどまってしまいました。やはり値段の高さが敬遠されたのでしょうか… また、降車駅で見ると遠い順番に利用者が多く、全て神奈川県の駅であることが分かります。(都内駅で降りた人は1-2人ほどしかおらず、乗車駅はほぼ全員渋谷と中目黒からでした)
実に、全体の42%は中距離利用者で、58%が横浜駅まで乗車していることが分かります。

中距離利用者は多いけれど、長距離利用者が少なすぎたんですねこれ。

中距離利用者は寧ろ期待以上の人数が乗っていたことがわかります。(乗車率70%の1割×5列車=30人、実績値は48人) 一方で長距離利用は合計で340人ほど乗ってもらうつもりが、65人程しか乗っておらず、みなとみらい線の市場規模を見誤った可能性があります。(残念ながら、横浜まで利用した乗客が他線に乗り換えたのか、みなとみらい線へ継続して乗車したのかは不明)

期待通りの結果を出すには…?

サービス開始時のインタビューとは裏腹に、横浜駅までの長距離利用は予想を下回り、このままの利用率であれば対策を講じる必要があります。現在、運用は3編成で回されていて、予備が1編成となっており、副都心線等の直通は運行間隔を減らすことで利便性が下がったり、専用列車のダイヤの調整が必要となるためコストが膨らんでしまいます。現在は終着駅を3分ほどで折り返すダイヤとなっており、効率は最大化されているように思えることから、地下鉄直通は除外させていただきます。

①増発をする
前のダイヤ改正に既に用意された渋谷1805,1835,1905発の3列車のQ SEATの営業を開始することで、最混雑時間帯に着席する魅力を提供することが出来ます。しかし、現在の状況を鑑みるに、この施策だけでは乗車率の向上を果たすことは出来ないと思われます。

②乗車への壁を下げる
現在は駅の窓口、またはネット予約のみとなっていますが、券売機で買えるようにしたり、S-TRAINの設備を活用することで、ホーム上で購入できるようにする、またはPASMOで指定券を発行できるようにするなど工夫が必要かもしれません。しかし、西武のSmoozとは互換性がなく、せっかくの設備も土休日にしか稼働していません…

③特定の客へのアピール
中距離客は想定より上振れした一方、長距離客へは魅力不足と受け取られたのか、はたまた人口の問題なのかは不明ですが、明らかに東横間を乗り通す乗客が少ないです。例えば、みなとみらい線の定期を持っている客に限定にした上で、格安でQ SEATを利用出来るようにすることや、リクライニングシートの採用、ミニテーブルの装備など快適性への工夫も必要かもしれません。また、競合各社を鑑みて値段設定を見直し、みなとみらい線以外への乗客を取り込むことも必要になるでしょう。

まとめ

大変長くなってしまいましたがいかがでしたでしょうか。利用開始から半年経ったものの、未だに乗客数は低迷しています。半額キャンペーンやドリンクキャンペーンでなんとか最初の1回を体験させようとしている工夫も見えますが、今後東横線Q SEATが成功して良かったと言える日が来るのでしょうか。5年後に期待したいと思います!
コメントやスキ!お待ちしておりま〜す!!!

参考文献

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