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ローカルガイドの限界突破

沖縄県では内閣府沖縄総合事務局が平成26年(2014年)にまちまーい(まち歩き)ガイドのガイドラインを作成して、
地域着地型のガイドコンテンツを全県に広めようという動きがあった。

那覇市や沖縄市など成功事例はあるようだが、僕自身があまり興味もないこともあり、現状がよく分からない状態だと思っている。

沖縄県で世界遺産に選ばれている史跡についてはガイドがいるものが多い。
しかし、有料であってもそのほとんどが有志によるものであり、ガイドとしての専門性と問われれば、国内に歴史・文化を取り扱う専門的なガイドがいるかといえば、
学芸員さんがやってくれるものくらいで【ガイド】というよりも【講座】に近いものになっているような話を聞く。

単純に街をおしゃべりしながら道案内するのに、観光客がいくらくらいのお金を使ってくれるのかはビジネスとしてガイドをする際には外せない観点で、
満足してもらえなければ、次回の口コミに繋がらなくなるし、評判が落ちれば下火になる。

ほとんどの場合、市町村や観光協会が行なっているので、下火になってガイド事業が売り上げを出さなくても潰れるようなものでもない。
さらによくないところは、個人的に日本では有料ガイドを雇って説明してもらうという文化は根付いていないように思うので、
ガイドを事前に予約して利用したいと思う観光客自体が少ないのではないかと思う。
当日無料なら話を聞いてみようという人がいても事前に予約してもらうとなるとなかなか計画的な観光客でなければ無理だし、
目的がまちまーい(まち歩き)となれば、有料かつ予約が必要となるとかなりハードルが高くなるように思う。

一定の需要が見込めたとしても、
それで生活が成り立つような稼ぎになるかと言えば、さらにぐぐっとハードルが高まる。
ガイドだけで食べていけるようにはかなり厳しいものがあるように思う。

そもそもガイド育成の発想が、
ガイドとしての専門職の育成ではなく、
地域住民の協力のもと、お小遣い稼ぎくらいにしか設定されていないように思う。
そうなるとブラッシュアップしようとする職人ガイドを育てることはかなり難しいと思う。
つまりは、専門性のあるガイドを育てることは不可能に近い。

僕が特殊な人間であることを前提に、
中村家住宅の良さを伝えたいという気持ちと、
主夫という立ち位置かつ、子どもがそこそこ自立している上に、
中村家住宅が自宅の側にあるし,
教員経験もあって…

という条件でも、
それなりの稼ぎにするのはとても難しい。
そもそも、中村家住宅というたくさんの観光客でひしめきあっている場所ではないということを考えると、
ビジネスとしてはまず勝機はないので、
普通にビジネスを考えたり稼ぎだけで考えれば、まず、中村家住宅のガイドは選ばれないと思う。

中村家住宅はまだ世界遺産中城城跡のそばで、国指定重要文化財でもあるから、
まだ、それなりに需要はないわけではないし、話す内容もさほど少なくない。

まちまーい(まち歩き)はどうだろう。
北中城村の場合は、村の文化財などを回ることになるが、村の文化財でどれほどの興味を持ってもらえるだろうか。
知っている人からすれば、なかなか興味深いものではあるけれど、知らない人からすれば何があるのか分からない。
そんなところにガイドが必要かどうかは検討する以前の問題だろう。

中村家住宅なガイドは概ね順調だと思っている。ガイドを始めて1年半ほどになるが、600組以上2,500人ほどガイドしている。
はじめの頃は利用してもらうのも一苦労だったが、徐々にリピーターや口コミで予約のお客様も増えてきた。
ただし、大人1人として十分な稼ぎかといえば、まったく十分ではない。
パート・アルバイトならこんなものかもしれないが、お客を待っている時間、文献にあたる時間、書籍を購入する費用など考えるとまともなビジネスにはなっていない。

今年は幸いなことに北中城村観光協会からガイド育成事業のお話をいただいたので、
そういった意味では、花が咲いて実になったので、総合的にみれば、それなりの成果になっているけれど、すべてのガイドさんにこういった話がくるわけでもないから、ガイドやガイドに関わる業務でそれなりの収益化できなければビジネスとは言えないので、
誰もガイド業界、特に歴史や文化を語るガイドに手をつけてこなかったことが分かるような気がする。

1年半の有料ガイドを手探りで始めたもののまだ収益化でいえば落第だと思っている。
正直、まだまだ未開の地ということも考えれば、ベンチャーのようなものなので、こんなものといえばこんなものなのだとも思う。

民間が手を出さない耕作放棄地のような場所を開拓しているのだから、情熱も時間も必要になってくる。
僕のように主夫であり、家庭の後ろ盾があってできていることでもある。

ローカルガイドを育てるのはとても難しい。

なぜなら、金にならないからだ。

ここまでやってみて分かるのは、ローカルガイドを軌道に乗せるには、
かなりの投資が必要になるだろうと思う。
ローカルなコースをつくるなら1年以上はその土地のことをリサーチする必要があるだろう。
コースはよくリサーチされてこそ輝く商品になる。
コースが決まったなら、実際にガイドをしながら腕を磨いていく必要が出てくる。
しかし、無名の新コースを観光客に届けるのはとても難しい。

いかに優秀なガイドを育てても、お客様がいなければ収益化にはならないし、
場数を踏まなければ腕は鈍るばかり…
ようやくお客様がついても腕の鈍ったガイドの話を聞いて、支払ったガイド料分の価値がなければ次はない。

今、ローカルガイドがうまくいっていない地域はこういったことが原因だろうと思う。
優秀なガイドがいても、しっかりと販売できなければ下火になるのは当然だろう。

ローカルガイドはほぼボランティア精神でしか成り立たない状態になっている。
これこそが大きな課題であり、市町村や観光協会も本腰ではなく、片手間で予算をかけずにやろうとすると、破綻しはじめる。

これは当たり前の話で、
パフォーマンスに必要なコストがかけられていないのだから仕方がない。
本腰でやるならお金と時間をかけるほかないと思っている。

これはローカルガイド特有の課題ではないかと思う。

ローカルガイドの限界点を越えるには、お金を出す組織が長期的な計画とともにしっかりしたビジョンを描けることが何よりも大切だ。

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