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生活動作のプロ「作業療法士」

”その人らしい”生活を再び獲得するリハビリテーション。なかでも日常生活動作の再獲得をめざすのが作業療法(Operational therapy:OT)です。その作業療法とはいったいどういうものなのか、大同病院リハビリテーション科の作業療法士・工藤啓介さんに話を聞きました。(2023年12月20日配信)《作業療法について1》

生活動作の機能を回復し、QOLを上げる

イズミン 作業療法士というのはどんな役割をもっていますか?

クドウ 一言でいうと僕は「生活を見るプロ」だと思っています。
対象となる患者さんは、脳血管障害(脳こうそくや脳出血)の患者さんや、整形外科の患者さん、がんの患者さんなど幅広い疾患を対象としています。入院加療すると、疾患要因などで活動量が低下したり、病気やケガによる後遺症や廃用などで日常生活の動作が低下しやすくなりますので、入院患者さんのほぼすべてが対象となり得ます。

イズミン 具体的にはどんなことをするのですか。

クドウ 理学療法は主に基本動作といって、寝た状態から起きたり座ったり立ったり、歩くといったところが主な領域ですが、我々はその先の応用動作を専門としています。食事、着替え、入浴、トイレといった日常生活動作の練習をしていくのが主となります。

イズミン よくリハビリテーション室に、畳のお部屋が用意してあって、そこでいろいろやっていますよね。

クドウ はい。高齢の方ですと和室で暮らしている場合も多いですので、その方の実際の生活環境に沿ったリハビリを提供するようにしています。和室で布団を敷いて寝ている方であれば、そこから立ち上がったり横になったりする練習に取り組みます。

イズミン 作業療法は何となく、折り紙など細かい作業を行うイメージがあります。

クドウ 作業療法の方法にはいろいろあり、それぞれの療法士が患者さんに合わせた治療を提案していきます。折り紙なら指先の細かい動き(巧緻性)を養うために行ったり、モノを作る工程を理解できて遂行できているかなど、高次機能面へのアプローチも含めてリハビリに取り入れたりすることが多いです。

シノハラ 結構、応用範囲が広いですね。

クドウ そうですね。患者さんの障害も一人ひとり異なりますし、日常の暮らし方も違います。日常生活に復帰するためにそれぞれの機能をどう引き出していくかというのも、作業療法士が個別に考えて実践していきます。
 我々の最終的な目標は、その人がお家に帰られたときに生活に困らないようにサポートすること。細かいことができないから細かいことを練習するというよりは、その細かい作業ができないことで、生活上、何に困るかを予測して、それを解決する方法を考えて取り組む感じです。

イズミン 道具を使うということが特色の一つだそうですね。

クドウ はい。作業療法の発祥の起源は精神科領域であり、その際、道具を使って、その治療に当たったら患者さんが良くなったというところにありますので、理学療法との大きな違いとして、我々は治療の手段の一つとして多種多様な道具を使うということが挙げられます。

イズミン 人間の発祥の起源みたいですよね。二足歩行するようになって、火を起こして道具を使い始めたら人間が進化した、みたいな、笑。

イズミン 作業療法の面白さややりがいは、どこですか。

クドウ やはり困っている患者さんが、我々と一緒になって目標に向かってリハビリをして、目標が達成できたときに、喜んでくださるお顔ですね。19年この仕事をしていても、今でもそう言われると、一緒にやって頑張って良かったなと思います。

シノハラ 患者さんが前向きになって頑張ってくれて、それに寄り添って、何かを達成すること、失われた機能が再獲得されるプロセスをお手伝いできるっていうのは確かに素晴らしいことだよね。

イズミン はい、わかりました。工藤さん、ありがとうございました。次回はいよいよ、手のリハビリ、ハンドセラピーについて伺います。


ゲスト紹介

工藤啓介(くどう・けいすけ)
学生時代よりハンドセラピストを志し、19年のキャリアを歩んできた。2018年、篠原医師らが大同病院に赴任したのを契機に、手外科のエキスパートの元でさらなる研鑽を積みたいと入職。毎日「手」のリハビリを極めることへ、絶賛邁進中。
趣味は野球で、草野球チームに所属してショートを守る。


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