電子書籍のメリットデメリットと地球温暖化―読書月記16の2

さて、『ボリショイ秘史』(サイモン・モリソン/白水社)を読んでいる最中だが、難渋している。内容も多少読み難い部分があるのだが、分厚くて重いことが最大の要因だ。本文に加え索引や註などで約600ページ、ハードカバーである。紙質の違いもあってページ数はかなり違うが、『ブルース・チャトウィン』(ニコラス・シェイクスピ/角川書店)とほぼ同じ厚さだ。
ただし、『ブルース・チャトウィン』は電子書籍(Amazonのkindle)で読んだので、そういった面での読み難さはなかった。
私が今年になって読んだ本は、4か月で41冊。そのうち、電子書籍で読んだのは7冊。電子書籍で読む割合がそれほど多いわけではないが、便利さを感じることが多い。メリットをあげてみよう(読書月記16の1で書いていることもある)。

一つ目は、ここまで書いてきたように読むのが楽ということだ。特に寝て読む人、通勤時や旅行時に読む人にとって、あの薄さ・軽さはありがたい。そして、長期旅行などの場合でも複数冊を持って歩かなくても済む。
二つ目は、一つ目の延長上の話だが、省スペースだ。柳田國男や折口信夫の文庫版の全集をオークションで売ったが、これは両者ともKindleにあるからだ。ほかにも夏目漱石、森鷗外、宮沢賢治、旧約聖書なども単行本にしても文庫本にしても、家にあると場所を食う。
三つ目は、地方に住んでいても不便がないということだ。地方だと雑誌も書籍も書店の店頭に並ぶのは、都心に比べ数日遅い(書籍は並ばない場合さえ多い)が、公式の発売日の午前零時を数分すぎるとだいたいダウンロードが可能になる。出版社によっては、新刊書の場合、電子書籍の発売時期を数日から数か月ずらしているところもあるが、同時発売の場合には待たなくていい(ネット書店の登場で、書籍に関して時間差はほぼ解消されたと感じている)。
四つ目は、新刊書に関して、紙の書籍よりも安く買える場合があるということだ。平凡社は電子書籍の場合、紙の書籍の8割の価格で販売していることが多い。また、同額もしくは1割程度しか安くしていなくても、キャンペーンなどで一定期間はポイントを多めに付けたり、価格がかなり安めになっている場合もある(私は、一度、0円で買ったことがある)。
五つ目は、品切れや絶版書籍でも対応している場合があり、市場で一時期的な品切れが起きて古書価が極めて高い場合にも困らない。例えば、『江戸幕府と儒学者』(揖斐高/中公新書)は、kindle版は946円で、従来の紙の書籍の価格と同じ設定だが、古書価はAmazonでは2000円を超えている。日本の古本屋、ブックオフオンライン、ヤフオクでの出品はない。
六つ目としては、文字の大きさが変えられることだろう。私は近眼で老眼なので、裸眼にすると最も小さいフォントで読むのがちょうど良いが、この先、老眼がすすめば文字を大きくすることになるだろう。紙の書籍では文字の大きさは自由にならない。

では、デメリットはないのか。もちろんある。
まず、電子書籍リーダーが必要なこと。スマホでも大丈夫だが、幅が狭いと読みづらいかもしれない。専用のリーダーの場合、Kindleだと1万円弱必要になる。Kindleも含めた各電子書籍は、PC用のアプリを用意していて、パソコンさえあれば読めるので、デスクトップやノートブックは携帯には不便なものの、小型のタブレットなら携帯も苦にならないかもしれない。
二つ目は、一つ目と関わるが、元の判型が大きいものだと電子書籍リーダーやスマホでは無理もしくは向かないことがある。また、見開きで2ページを一気に見られない。これもパソコンやタブレットだと問題ないが、やはりデメリットだろう。また、子ども向けの絵本などで三次元化するような仕掛けには当然だが対応できない。
三つ目のデメリットは、電子書籍の場合、書籍そのものの所有権ではなくデータへのアクセス権を所有しているに他ならないことだ。データを提供しているところがサービスを停止した場合、読めなくなる可能性があるということだ。読めなくなってはいないが、NHKの100分de名著の「メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』」、現在はkindle版がない。私はこれを以前購入しているが、今でも読むことができる。アカウントサービスの「コンテンツと端末と管理」からダウンロードも可能だ。ただ、Amazonがこの本についてのサービスを停止すれば読めなくなる(その場合は、以前に起きた他の電子書籍サービスの事例に鑑み、購入金額が返金されるだろうと推測している)。また、版元が倒産するなどのリスクもゼロとは言い切れない。
四つ目のデメリットは、三つ目のデメリットを見れば分かるが、古書として売れないということだ。紙の書籍は古書として販売が可能だが、現時点では電子書籍は売れない。ただし、これはいずれアクセス権の転売という形で可能になることはあり得る。
五つ目は、紙の書籍だと、あのことは最初から3分の2辺りに書いてあったな、という探し方ができるが、電子書籍はそれが簡単ではない。「移動」という機能を使えば不可能ではないが、慣れないと難しい。ただし、Amazonのパソコン用アプリには検索機能があるので、正しい検索ワードを入力できればすごく簡単に探すことができるのは紙の書籍よりも優れている(少しでも違っているとヒットしないので難しい部分もある)。
六つ目は、絵本などで立体的に楽しめるようになっているものには対応できないことだ。

こういったメリットデメリット、どちらを優先するのかは個人の自由だ。しかし、「読書月記16の1」で書いたように、地球温暖化のことをこれからは考慮に入れなくてはならない。

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