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「泣く」を詠んでみた。

「あんたらは泣かん」と叔母になじられて先頭を行く母の葬列

十年は泣いてないかな泣いたって観客なんて誰もいないし

2022年6月26日、NHK短歌の題は「泣」でした。入選作は本当に泣いたケースがドラマとして描かれたものが多かったようです。私の投稿作品を紹介します。

私は父の葬式(7歳の時)、母の葬式(大学4年生の時)でも泣かなかったし、母が末期がんと聞かされた時も泣いていません。悔し涙なら何度も流しているのですが。悲しみと涙はどうにも結びつかないのです。

死ぬるとて鯨は泣かぬレジ袋十八枚を腹に詰めても

戦争のことなら言うな泣いたって帰ってこない男ばかりで

時事問題から「泣く」を拾ってみました。レジ袋が海洋生物の中に入って、死んだ後で解剖すると胃の中で消化されないままに大量に出てくるそうです。その話を聞いた時の方が、親が死んだ時より悲しかったですね。

そして戦争と言えばウクライナです。「怒り」を詠う人も多い中、安全な日本にいて自分たちが「怒る」資格なんてあるのかな、と思いつつ。

泣き女は煙草を飯に突き刺してオウンオウンと天を仰げり

泣くほどのことかと思うどうせならダイヤのような嘘をつきなよ

最後に、ちょっと空想の世界に飛んでみました。「泣き女」を知ったのは映画「スワロウテイル・バタフライ」です。実際にアジアにはこれを「仕事」とする女性がいたようです。

そして昔の女性の常とう手段としては「ウソ泣き」があります。失敗をごまかすため、嘘をごまかすため、悪事を隠すため、実にいろいろな場面で昭和の女性は泣いていました。泣かないことが美徳になった現代では減ってきていると思いますが、その演技力、もう少し磨いたら?と思ったものです。(終わり)

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